リファラル採用とは?メリット・デメリット、報酬制度の作り方を5ステップで解説
人材の流動性の高まりを受け、採用コストの高騰や社員の早期離職に悩む企業は増加傾向にあります。求人広告や人材紹介会社への依存度が高まる一方で、採用コストの費用対効果の改善が求められている人事担当者も少なくないでしょう。
そこで注目されているのが「リファラル採用」です。社員が友人や知人を推薦するこの手法は、低コストで質の高い人材を採用できる可能性があります。
本記事では、リファラル採用の基本から、メリット・デメリット、職業安定法に準拠した報酬制度の設計方法、具体的な導入ステップまで詳しく解説します。採用精度を高めながらコスト削減を実現したい人事担当者の方は、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
- リファラル採用とは?基本をわかりやすく解説
- リファラル採用の定義
- 縁故採用との違い
- リファラル採用が注目される3つの背景
- リファラル採用のメリット5選
- ①採用コストを大幅に削減できる
- ②ミスマッチを防ぎ定着率が向上する
- ③転職潜在層の人材にアプローチできる
- ④選考期間を短縮できる
- ⑤社員エンゲージメントが高まる
- リファラル採用のデメリット・リスク3選
- ①候補者プールが限定され多様性が損なわれる
- ②不採用時に人間関係が悪化するおそれがある
- ③急ぎの採用には不向き
- リファラル採用の報酬制度|相場と支払いタイミング
- 報酬の支払い方【賃金の一部に含める】
- 報酬額の相場【30万円以内が目安】
- 支払いタイミングの比較
- 就業規則・賃金規程の記載について
- リファラル採用が違法となるケースは?4つのパターンを紹介
- ①紹介報酬が高額すぎる
- ②継続的・反復的に紹介行為を行っている
- ③現職社員以外(第三者)に報酬を支払う
- ④採用の成否にかかわらず報酬が支払われる
- 【5ステップ】リファラル採用の導入手順
- ステップ①制度設計を行う
- ステップ②社内告知と環境整備を行う
- ステップ③運用とフォローを徹底する
- ステップ④効果測定と改善を行う
- ステップ⑤紹介文化を醸成する
- リファラル採用を成功させる4つのポイント
- 紹介しやすい環境を整える
- 社内周知を継続的に行う
- 不採用時のフォローを丁寧に行う
- 他の採用チャネルと併用する
- リファラル採用の成功事例4選
- 事例①富士通株式会社
- 事例②LE.O.VE株式会社
- 事例③株式会社串カツ田中ホールディングス
- 事例④freee株式会社
- リファラル採用のミスマッチを防ぐならback check
リファラル採用とは?基本をわかりやすく解説

リファラル採用は近年多くの企業で導入が進む採用手法です。まずはリファラル採用の基本的な概念と、注目される背景について理解を深めていきましょう。正しい知識を持つことが、効果的な制度設計の第一歩となります。
リファラル採用の定義
リファラル採用とは、自社の社員が知人や友人を採用候補者として企業に紹介する採用手法のことです。英語の「Referral(紹介・推薦)」が語源となっており、「社員紹介採用」とも呼ばれます。
具体的には、社員が自身のネットワークの中から自社の求める人材像に合致すると思われる方を推薦し、企業がその方を選考プロセスに進める仕組みです。紹介された候補者は通常の選考フローを経て評価され、採用可否が決定されます。
多くの企業では、リファラル採用を促進するために、紹介者に対してインセンティブ(報奨金や特別休暇など)を支給する制度を設けています。ただし、報酬設計には法的な制約があるため、適切なルールに基づいた運用が必要です。
関連記事:リファラル採用とはどんな採用方法?リファラル採用の特徴を解説
縁故採用との違い
リファラル採用と混同されやすいのが「縁故採用」ですが、両者には明確な違いがあります。正しく理解することで、適切な制度運用が可能になるでしょう。
縁故採用は、経営者や役員などの親族や知人を特別な選考プロセスで採用する手法です。多くの場合、通常の選考基準を適用せず、コネクションを重視して採用を決定します。
一方、リファラル採用では、紹介者が誰であっても候補者は公平な選考プロセスを経る点が特徴です。企業の求める能力や適性を満たしているかが採用の判断基準となり、紹介者との関係性は採用可否に影響しません。
■リファラル採用と縁故採用の比較
比較項目 | リファラル採用 | 縁故採用 |
|---|---|---|
紹介者 | 一般社員(全社員が対象) | 経営層や役員の親族・知人 |
選考プロセス | 通常の選考基準を適用 | 特別な選考または選考の簡略化 |
採用基準 | 能力・適性を重視 | 人間関係を重視 |
公平性 | 高い(他の応募者と同等) | 低い(優遇される) |
透明性 | 制度として明文化 | 非公式な場合が多い |
リファラル採用は縁故採用とは異なり、公平性と透明性を保ちながら社員のネットワークを活用する採用手法です。適切な制度設計と運用により、企業にとっても候補者にとってもメリットのある採用活動を実現できます。
リファラル採用が注目される3つの背景
近年、リファラル採用を導入する企業が増えている背景には、採用市場を取り巻く環境の変化が挙げられます。
少子高齢化による労働人口の減少が進み、多くの業界で深刻な人材不足が続いているのが現状です。企業間の人材獲得競争は年々激化し、従来の求人広告や人材紹介だけでは優秀な人材を確保しにくくなっています。
また、求人広告の掲載費や人材紹介会社への成功報酬など、採用コストの上昇も課題です。中途採用では1人あたり数十万円から100万円を超えることもあり、特に中小企業にとっては大きな負担となっているでしょう。
さらに、雇用の流動化によって生じる従業員の早期離職も企業を悩ませています。リファラル採用は社員が企業の実態を候補者に伝えた上で紹介するため、入社前後のギャップを減らし定着率の向上が期待できます。
リファラル採用のメリット5選
リファラル採用には、企業にとってさまざまなメリットがあります。ここでは、多くの企業が実感している主要な5つのメリットについて詳しく解説します。
①採用コストを大幅に削減できる
リファラル採用の最大のメリットは、採用コストを大幅に削減できる点です。
従来の採用手法では、求人広告の掲載に数十万円、人材紹介会社への成功報酬に年収の30〜35%程度の費用がかかります。
一方、リファラル採用では求人広告費や紹介手数料が不要です。紹介者への報奨金を支払う場合でも、相場は5万円から10万円程度であり、他の採用手法と比較して大幅にコストを抑えることができます。
採用予算が限られる中小企業やスタートアップ企業にとって、リファラル採用は費用対効果の高い採用手法といえるでしょう。
②ミスマッチを防ぎ定着率が向上する
リファラル採用には、採用後のミスマッチを防ぎ、定着率の向上につながる効果が期待されます。
紹介者である社員は、自社の企業文化や業務内容、職場の雰囲気をよく理解しているため、候補者の性格やスキル、価値観が自社に適しているかどうかを事前に見極めたうえで紹介できます。
また、紹介者は入社後も候補者を支える立場にあり、職場での悩みや疑問を気軽に相談できる存在です。その安心感が新入社員の早期定着につながり、結果として離職防止にも寄与するでしょう。
関連記事:採用ミスマッチが起こる5つの原因と、防ぐための5つの対策
③転職潜在層の人材にアプローチできる
リファラル採用の大きな強みは、転職潜在層の優秀な人材にアプローチできる点です。
求人市場に出ている候補者は、すでに転職活動を開始している転職顕在層となります。一方、現在の職場に大きな不満はないものの、良い機会があれば転職を考えるという転職潜在層は、求人広告や転職サイトをチェックしていないケースが多いです。
リファラル採用では、社員のネットワークを通じて、こうした転職潜在層にダイレクトにアプローチすることができます。特に、専門性の高い職種や希少なスキルを持つ人材は、転職市場に出回る前に次の職場が決まることも珍しくありません。
従来の採用手法ではアプローチできなかった優秀な人材層に出会えることは、リファラル採用の大きなメリットといえるでしょう。
④選考期間を短縮できる
リファラル採用では、選考期間を短縮できるメリットもあります。
通常の採用プロセスでは、求人広告の掲載から応募受付、書類選考、複数回の面接、内定出しまで、数週間から数ヶ月を要することが一般的です。しかし、リファラル採用では紹介者が候補者の能力や人柄をある程度保証しているため、選考ステップを簡略化できる場合があります。
たとえば、書類選考を省略して直接面接に進んだり、面接回数を通常より少なくしたりすることが可能です。また、紹介者を通じて候補者の志望度や入社意欲を事前に確認できるため、選考辞退のリスクも低減できます。
⑤社員エンゲージメントが高まる
リファラル採用の導入は、社員エンゲージメントの向上にもつながります。
知人に自分の会社を紹介できるということは、社員自身が自社の魅力を認識している証拠です。この採用活動の過程で、社員は改めて自社の良さを再確認し、愛社精神が高まる効果があります。
さらに、リファラル採用を通じて社員同士のコミュニケーションが活性化する効果も期待できます。「こんな人材を探している」という情報が社内で共有されることで、部署を超えた交流が生まれ、組織の一体感が醸成されるのです。
リファラル採用は単なる採用手法ではなく、組織文化を強化し、社員の帰属意識を高める施策としても機能すると言えるでしょう。
関連記事:エンゲージメントとは?ビジネスにおける意味と、高めることで得られる3つのメリット、測定方法を解説
リファラル採用のデメリット・リスク3選
リファラル採用には多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットやリスクも存在します。導入前にこれらの課題を理解し、適切な対策を講じることが重要です。
①候補者プールが限定され多様性が損なわれる
リファラル採用の大きなデメリットは、組織の多様性が損なわれるおそれがある点です。
社員が紹介する候補者は、同じ大学の出身者や前職が同一企業の人、あるいは同業界で働いていた人など、紹介者に近い経歴を持つ人材が集まりやすい傾向があります。その結果、組織内に同質的な人材が増え、多様な視点や価値観が失われるリスクがあります。
イノベーションは異なる背景や考え方を持つ人材の協働から生まれやすいものです。リファラル採用に依存しすぎると、新しい発想や革新的なアイデアが生まれにくい体質になるリスクも否めません。
この問題を防ぐためには、リファラル採用だけに頼らず、他の採用チャネルと併用することが重要です。求人広告やダイレクトリクルーティング、人材紹介など、さまざまな手法を組み合わせることで、多様な人材の確保を目指しましょう。
②不採用時に人間関係が悪化するおそれがある
リファラル採用には、紹介した候補者が不採用となった際に紹介者との人間関係が悪化するリスクもあります。
紹介者は知人を推薦する時点で、その人物の能力や人柄をある程度保証する立場にあると言えます。そのため、選考の結果が不採用だった場合には、「自分の見る目がなかった」「会社に恥をかかされた」と感じてしまうことも少なくありません。
さらに深刻なケースでは、紹介者と候補者の関係がぎくしゃくすることもあります。候補者が不採用の原因を紹介者に求めたり、紹介者が候補者の実力を過大に評価していたことで気まずくなるなど、人間関係に影響を及ぼす可能性もあるでしょう。
このリスクを軽減するためにも、不採用となった場合はその理由を紹介者に丁寧に説明し、候補者の良かった点も併せて伝えるようにしましょう。
③急ぎの採用には不向き
リファラル採用は、急な欠員補充や短期間での大量採用には不向きな手法です。
また、リファラル採用は社員のネットワークに依存するため、紹介される候補者の数や質をコントロールすることが難しいという特徴があります。
「今月中に3名採用したい」といった具体的な採用目標がある場合、リファラル採用だけでその目標を達成するのは困難でしょう。
また、リファラル採用の候補者は転職意欲にばらつきがあることも特徴です。候補者の転職意欲によっては、紹介から実際の選考開始まで数週間から数ヶ月かかることもあります。
リファラル採用は、中長期的な視点で継続的に人材を確保していく採用戦略として位置づけることをおすすめします。
リファラル採用の報酬制度|相場と支払いタイミング

リファラル採用を成功させるためには、適切な報酬制度の設計が重要です。
ここでは、報酬額の相場や支払いタイミング、就業規則への記載方法について詳しく解説します。法律の範囲内で、社員が紹介しやすい制度を構築しましょう。
報酬の支払い方【賃金の一部に含める】
前述の通り、リファラル採用の報酬は職業安定法第40条(※1)および労働基準法第11条(※2)により、賃金の一部として支払う必要があります。単なる謝礼金や報奨金としてではなく、給与や賞与などの賃金に含める形で支給しなければなりません。
具体的な支払い方法としては、主に以下の3つの選択肢があります。
■報酬の支払い方法
・給与への上乗せ
通常の月給に「リファラル採用手当」として加算する方法です。最も一般的で、給与明細にも明記されるため透明性が高く、社員にとっても分かりやすい方法といえます。
・賞与として支給
賞与の一部として支給する方法です。報酬額が高額な場合や、複数の紹介が重なった場合に、賞与時期にまとめて支給することで管理がしやすくなります。
・別途振込
給与とは別のタイミングで振り込む方法です。ただし、この場合でも賃金として扱うため、給与明細に記載するか、別途支給明細を発行する必要があります。
いずれの方法を選択する場合でも、就業規則や賃金規程に支払い方法を明記し、賃金として適切に処理することが法律上必須となります。
※1 参考:職業安定法|e-Gov 法令検索(取得日 2025年12月17日)
※2 参考:労働基準法|e-Gov 法令検索(取得日 2025年12月17日)
報酬額の相場【30万円以内が目安】
リファラル採用における報酬額は法律上の明確な定義はありません。一般的には、10万円から30万円程度が相場とされています。
ただし、報酬額は採用する人材の職種やレベルによって変動することもあります。以下に、職種別の報酬相場の目安をまとめました。
■職種別のリファラル採用報酬相場
職種・雇用形態 | 報酬額の目安 |
|---|---|
正社員(一般職) | 10万円〜30万円 |
正社員(専門職・管理職) | 30万円〜50万円 |
契約社員 | 3万円〜10万円 |
アルバイト・パート | 1万円〜3万円 |
報酬額を設定する際は、自社の採用コストと比較することが重要です。たとえば、転職サイト1ヶ月の掲載料が30万円、人材紹介会社で1人採用した場合の費用が100万円以上かかるのであれば、リファラル採用で30万円の報酬を支払っても十分にコスト削減効果があります。
また、金銭以外のインセンティブを設けることも効果的です。特別休暇の付与、社内表彰制度、ギフト券やポイントの贈呈など、さまざまな形での報奨が考えられます。
支払いタイミングの比較
報酬の支払いタイミングは、リファラル採用制度の設計において重要なポイントです。タイミングによって、それぞれメリットとデメリットがあります。
以下の表で、主な支払いタイミングとその特徴を比較しました。
■報酬支払いタイミングの比較
支払いタイミング | メリット | デメリット |
|---|---|---|
採用決定時 | 紹介者のモチベーションが高まりやすい | 入社前に辞退された場合、報酬返還の問題が生じる |
入社時 | 候補者が実際に入社したことを確認できる | 試用期間中に退職された場合のリスクがある |
試用期間終了時 | 候補者の定着を確認してから支払える | 報酬支払いまでの期間が長く、紹介者の満足度が下がる可能性がある |
段階的支払い | リスク分散とモチベーション維持を両立できる | 支払い管理が煩雑になる |
多くの企業では、「試用期間終了時」または「入社後3ヶ月〜6ヶ月経過時」に報酬を支払う形式を採用しています。これにより、早期離職のリスクを軽減しつつ、定着した人材に対してのみ報酬を支払うことができます。
就業規則・賃金規程の記載について
リファラル採用の報酬を適法に支払うためには、前述の通り、職業安定法第40条に則り給与や賃金の一部として支払う必要があります。そのため、リファラル採用に関する就業規則または賃金規程に制度を明記することが必須です。
また、制度を明文化することで、社員に対して公平で透明性のある運用が可能になります。以下に、就業規則・賃金規程への記載例を示します。
【就業規則・賃金規程への記載例】
第○条(リファラル採用報奨金)
会社は、社員が適格な人材を紹介し、その者が正社員として採用された場合、紹介した社員に対して報奨金を支給する。
報奨金の額は、以下の通りとする。
(1) 正社員の紹介:金20万円
(2) 契約社員の紹介:金5万円報奨金の支給時期は、紹介された者が入社し、試用期間を満了した時点とする。
以下の場合は、報奨金の支給対象外とする。
(1) 紹介された者が入社後3ヶ月以内に退職した場合
(2) 紹介された者が選考過程で不採用となった場合
(3) その他、会社が不適当と認める場合
記載内容は、自社の制度設計に合わせて調整してください。重要なのは、誰が、どのような条件で、いくら、いつ受け取れるのかを明確にすることです。
また、常時10人以上の労働者を使用する事業場では、労働基準監督署への届出も必要となります。
リファラル採用が違法となるケースは?4つのパターンを紹介
リファラル採用で報酬を支払う際、運用方法によっては「無許可の有料職業紹介」とみなされて違法となるリスクがあります。
ここでは、リファラル採用が違法となる典型的な4つのケースについて詳しく解説します。適切な制度設計を行うためにも、これらの違法パターンをしっかりと理解しておきましょう。
①紹介報酬が高額すぎる
紹介報酬の額が過度に高額な場合、その行為が「営利目的の職業紹介事業」と判断され、職業安定法に違反するリスクが高まります。
100万円を超えるなど市場相場を大幅に上回る報酬設定は、単なる社員への謝礼ではなく「紹介ビジネス」と誤認されやすくなります。人材紹介会社の成功報酬に近い水準の報酬を設定すると、実質的に職業紹介事業を行っていると判断される可能性があるのです。
前述の通り、リファラル採用の報酬額に法律上の明確な上限はありません。報酬額は、あくまで社員の協力に対する謝礼や感謝の表現として位置づけ、適切な水準に抑制するようにしましょう。
高額な報酬を設定したい場合は、社会保険労務士などの専門家に相談し、違法性がないか確認することをおすすめします。
②継続的・反復的に紹介行為を行っている
報酬の対象が現職社員であっても、特定の社員が頻繁かつ継続的に人材紹介行為を行うと、その行為が「職業紹介事業に近い行為(業として)」とみなされ、職業安定法違反となるおそれがあります。
たとえば、ある社員が年間に10人以上の候補者を継続的に紹介し、その都度報酬を受け取っているような場合、その社員の紹介活動は「業として」の職業紹介と判断される可能性があります。職業安定法における「業として」とは、営利目的の有無にかかわらず、反復継続して行う意思をもって行われる行為を指します。
特定の社員が多くの候補者を紹介することは稀なケースですが、人事部門として反復的な紹介が起きないよう管理することも必要です。
③現職社員以外(第三者)に報酬を支払う
現職の社員ではない外部の第三者に対して人材紹介の報酬を支払う行為は違法行為とみなされます。
対象となる人物としては、退職した元社員(OB・OG)、パートタイマーや業務委託契約者、フリーランスなどの外部人材、取引先企業の担当者や顧客などが該当します。これらの方々は自社の労働者ではないため、報酬を渡すことは厚生労働省の許可を受けずに職業紹介を行ったと見なされます。
リファラル採用の報酬対象は、必ず現職社員のみに限定することが重要です。社外の関係者経由で採用があった場合は、報酬のやりとりを行わないようにしましょう。
④採用の成否にかかわらず報酬が支払われる
報酬が採用確定にかかわらず、単に紹介行為や応募というプロセスに対して支払われる場合、職業紹介事業の性格が強まり、違法リスクが高まります。
該当する状況としては、採用に至らなかった場合でも「参加賞」や「紹介料」として報酬が発生する設計や、紹介行為のみに対して報酬を支払う制度設計が挙げられます。このような制度は、職業紹介事業における「あっせん行為」そのものに対価を支払っていると判断されやすく、避けるべきです。
また、「面接に進んだら3万円、採用されたらさらに7万円」といった段階的な報酬設計も、面接に進んだ際の報酬が紹介行為への対価と見なされるリスクがあります。
リファラル採用における報酬の原則は、あくまで採用確定を条件とすることが重要です。なお、「候補者が入社した時点」「試用期間を満了した時点」「入社後3ヶ月が経過した時点」など、採用が確定した後の段階的な報酬支払いは問題ないとされています。
【5ステップ】リファラル採用の導入手順
リファラル採用を効果的に導入するためには、計画的なステップを踏むことが重要です。ここでは、制度設計から運用、改善までの5つのステップを詳しく解説します。
ステップ①制度設計を行う
リファラル採用導入の第一歩は、自社に適した制度設計を行うことです。
採用コストの削減、定着率の向上、特定職種の人材確保など、何を最優先とするかによって制度設計は変わってきます。経営層や人事部門で目的を共有し、達成すべき目標を設定します。
制度設計において決めるべき主な内容は以下の通りです。
■制度設計で決めるべき内容
リファラル採用の目的
報酬額と支払いタイミング
金銭以外のインセンティブの有無(特別休暇、表彰など)
紹介対象となる職種や雇用形態
選考プロセス
報酬支給の条件
報酬支給の対象外となるケース(早期退職、不採用など)
制度設計が完了したら、就業規則または賃金規程への記載を行い、必要に応じて労働基準監督署への届出を行いましょう。
ステップ②社内告知と環境整備を行う
制度設計が完了したら、社内への告知と紹介しやすい環境整備を行います。リファラル採用は社員の力を借りなければ成功しない採用手法のため、積極的かつ継続的な社内告知をおすすめします。
経営層や管理職が率先してリファラル採用を推進する姿勢を示すことも、制度の浸透には欠かせません。トップダウンで重要性を伝えることで、社員の協力を得やすくなります。
社内告知の方法としては、以下のような施策が効果的です。
■社内告知の方法
全社員向けの制度説明会の開催
掲示板での募集職種・求める人材像の掲載
経営層や管理職による推進メッセージの発信
社内メールマガジンでの定期的なリマインド
社内告知の際には「不採用でも紹介者に責任はない」「公平な選考を行う」といった点を強調することで、社員が安心して紹介できる環境を作ります。
また、紹介の手続きを簡単にすることも重要です。専用の申請フォームを用意したり、人事担当者への気軽な相談窓口を設けたりすることで、紹介のハードルを下げることができます。
ステップ③運用とフォローを徹底する
制度をスタートさせたら、継続的な運用とフォローを徹底しましょう。
紹介があった際は、迅速に対応することが重要です。紹介者からの連絡を受けたら、できるだけ早く候補者と連絡を取り、選考プロセスを開始しましょう。
選考中は、紹介者に対して進捗状況を共有することも大切です。「書類選考を通過しました」「面接日程が決まりました」といった情報を伝えることで、紹介者は安心できますし、候補者へのフォローもしやすくなります。
また、不採用になった場合のフォローは特に重要です。紹介者に対して、不採用の理由を丁寧に説明し、候補者の良かった点も併せて伝えるようにしましょう。採用が決定した場合は、報酬を与えることはもちろん社内報での紹介や感謝状の贈呈など、紹介者を称える取り組みも効果的です。
ステップ④効果測定と改善を行う
リファラル採用を導入したら、定期的に効果測定を行い、制度の改善につなげましょう。
データを分析することで、制度の効果や課題が見えてきます。たとえば、紹介件数が少ない場合は社内周知が不足している可能性があります。採用率が低い場合は、紹介される候補者の質に問題があるかもしれません。
まず、以下のような指標を設定し、データを収集します。
■リファラル採用の効果測定指標
紹介件数
紹介からの採用決定数と採用率
リファラル採用者の定着率
リファラル採用にかかったコスト
通常採用とのコスト比較
紹介者の属性分析(部署、役職、勤続年数など)
課題が明確になったら、改善策を検討して実行します。報酬額の見直し、対象職種の拡大、紹介プロセスの簡素化など、データに基づいた改善を行うことで、制度の効果を最大化できます。
ステップ⑤紹介文化を醸成する
リファラル採用を持続的に成功させるためには、社内に「紹介することが当たり前」という文化を醸成することが最終目標となります。
紹介文化を醸成するには、経営層や管理職が率先して動くことが欠かせません。経営者自らがリファラル採用の重要性を語り、自ら知人を紹介する姿勢を示すことで、社員の意識が変わっていきます。
また、リファラル採用で入社した社員の活躍事例を社内で共有することも効果的です。「◯◯さんの紹介で入社した△△さんが、大きな成果を上げています」といったストーリーを発信することで、紹介することの価値が実感できます。
さらに、人事評価制度にリファラル採用への貢献を組み込むことも検討できます。「優秀な人材を紹介した」ことを評価項目の一つとすることで、紹介活動へのモチベーションを高めることができるでしょう。
リファラル採用を成功させる4つのポイント
リファラル採用を導入しても、適切な運用ができなければ期待した効果は得られません。
ここでは、制度を成功に導くための4つの重要なポイントを解説します。これらを実践することで、リファラル採用の成果を最大化できるでしょう。
紹介しやすい環境を整える
社員が気軽に知人を紹介できる環境を整えることが、リファラル採用成功の第一歩です。
まず、紹介の手続きを可能な限りシンプルにしましょう。複雑な申請フォームや煩雑な手続きは、紹介意欲を削いでしまいます。メールやチャットで気軽に人事担当者に連絡できる仕組みや、専用のWebフォームで簡単に情報を入力できる仕組みを用意することが効果的です。
また、紹介者が候補者に企業の魅力を伝えやすいよう、採用ピッチ資料や会社紹介動画などのツールを用意することも有効です。特に転職潜在層へのアプローチでは、「こんな会社で働いてみない?」と誘いやすい資料があると、紹介のハードルが下がります。
さらに、オフィス見学やカジュアル面談の機会を積極的に設けることもおすすめです。「まずは会社を見てみませんか」と気軽に誘えることで、紹介される候補者も応じやすくなります。
社内周知を継続的に行う
リファラル採用制度は、一度告知しただけでは社員に浸透しません。継続的な社内周知が成功の鍵となります。
社内周知には様々な施策がありますが、定期的にリマインドを行うことが最も重要です。社内メールや朝会で「現在募集中の職種」を共有したり、新年度ごとに制度説明会を開催したりすることで、社員の意識を維持できます。
社内報やイントラネットに専用のコーナーを設けることも効果的です。リファラル採用に関する情報を一元化し、いつでも確認できる状態にしておくことで、紹介の機会を逃しません。
また、部署別や職種別にリファラル採用の目標を設定し、達成状況を可視化することも一つの案です。「今月はエンジニア職の紹介を特に募集しています」といった形で、具体的なアクションを促すことができます。
不採用時のフォローを丁寧に行う
リファラル採用では、紹介された候補者が不採用になるケースも当然発生します。このときのフォローが不十分だと、紹介者との関係が悪化し、今後の協力が得られなくなるおそれがあります。
不採用の結果を伝える際は、まず紹介してくれたことへの感謝を伝えましょう。「ご紹介いただきありがとうございました」という言葉から始めることで、紹介者の気持ちに配慮していることが伝わります。
次に、不採用の理由を可能な範囲で丁寧に説明します。「今回は経験年数の要件を満たさなかった」「別の候補者とのマッチング度合いで判断した」といった形で説明しましょう。
丁寧なフォローを行うことで、紹介者は「不採用になっても丁寧に対応してくれる会社だ」と感じ、今後も安心して知人を紹介できるようになります。
他の採用チャネルと併用する
リファラル採用は優れた採用手法ですが、これだけに頼ることは避けるべきです。他の採用チャネルと併用することで、より効果的な採用活動が実現できます。
リファラル採用には、候補者プールが限定されるというデメリットがあります。社員のネットワークだけでは、特定の属性やバックグラウンドを持つ人材に偏りがちです。多様性のある組織を作るためには、求人広告、人材紹介、ダイレクトリクルーティング、転職イベントなど、さまざまな採用チャネルを活用する必要があります。
また、リファラル採用は急な欠員補充や大量採用には不向きです。紹介から選考、入社までに時間がかかるため、即戦力が必要な場合には他の手法を併用しましょう。
関連記事:中途採用手法13選を一覧で比較|最新トレンド、選定のポイントを徹底解説
リファラル採用の成功事例4選
実際にリファラル採用を導入し、成果を上げている企業の事例を紹介します。各社がどのような工夫を凝らし、どんな効果を得ているのかを見ていきましょう。自社での導入の参考にしていただければ幸いです。
事例①富士通株式会社
大手IT企業の富士通株式会社は、2016年からリファラル採用制度「Work Life Shift採用」を本格導入し、大きな成果を上げています。
■富士通株式会社のリファラル採用施策
項目 | 内容 |
|---|---|
制度名 | Work Life Shift採用 |
導入時期 | 2016年 |
対象職種 | 全職種(特にエンジニア、DX人材を重点募集) |
報酬制度 | 紹介者に対して報奨金を支給(金額は非公開) |
特徴的な取り組み | ・社員向けの採用説明会を定期開催 |
富士通では、社員が紹介しやすい環境を整えるため、専用のWebサイトを立ち上げました。このサイトでは、募集中の職種情報、求める人材像、紹介の流れなどが分かりやすく掲載されており、社員はいつでも最新情報を確認できます。
また、カジュアル面談の機会を積極的に設けている点も特徴です。紹介された候補者は、まず気軽に社員や人事担当者と会話できる場が用意され、企業文化や業務内容への理解を深めてから正式な選考に進むことができます。
導入後、中途採用全体の約20〜30%がリファラル経由となり、リファラル採用者の定着率は他の採用手法と比較して約15%高い結果となっています。
参考:富士通株式会社の会社情報 | Wantedly(取得日:2025年12月17日)
事例②LE.O.VE株式会社
訪問看護・リハビリサービスを提供するLE.O.VE株式会社は、業界特有の人材難に対し、リファラル採用で大きな成果を上げています。
【LE.O.VE株式会社のリファラル採用施策】
項目 | 内容 |
|---|---|
制度導入時期 | 2016年頃 |
対象職種 | 看護師、理学療法士、作業療法士などの有資格者 |
報酬制度 | 紹介者と入職者の双方に報酬を支給 |
特徴的な取り組み | ・「全員人事」をスローガンに全社員が採用に関わる |
LE.O.VEは創業当初、知名度が低く、人材紹介会社への依存度が高い採用活動を行っていました。その結果、紹介手数料によって採用コストが膨らみ、「本来は看護師の給与や教育に充てるべき資金が紹介会社に流出している」という課題を抱えていたのです。
こうした状況を打開するため、同社は「全員人事」をスローガンに掲げ、社員全員が採用に関わる体制づくりを進めました。紹介した社員と入職した友人の双方に報酬を支給するインセンティブ制度を導入し、特に貢献度の高い社員を四半期ごとに表彰。評価や給与にも紹介実績を反映させるなど、努力が正当に報われる仕組みを整備しています。
これらの取り組みにより、年間で約3,000万円もの採用コスト削減を達成しました。現在では、採用経路に占めるリファラル採用の割合が全体の3割にまで拡大し、主要な採用チャネルの一つとして定着しています。
参考:採用難業界でも通用するリファラル採用〜人事と現場メンバーの強力なタッグによるリファラル採用の全社推進〜 | Refcome(リフカム)(取得日:2025年12月17日)
事例③株式会社串カツ田中ホールディングス
居酒屋チェーン「串カツ田中」を展開する株式会社串カツ田中ホールディングスは、飲食業界の慢性的な人手不足に対し、リファラル採用で対応しています。
■串カツ田中ホールディングスのリファラル採用施策
項目 | 内容 |
|---|---|
制度導入時期 | 2017年頃 |
対象職種 | 店舗スタッフ、正社員、アルバイト |
報酬制度 | 紹介者に3万円〜5万円の報奨金(雇用形態により異なる) |
特徴的な取り組み | ・アルバイトスタッフも紹介可能 |
串カツ田中の特徴は、正社員だけでなくアルバイトスタッフも紹介制度を利用できる点です。飲食業界では学生アルバイトの確保が重要な課題であり、現役スタッフからの紹介は非常に効果的です。
また、LINEを活用した紹介プロセスの簡素化も特徴的です。専用のLINEアカウントを開設し、スタッフが気軽に「友達を紹介したい」と連絡できるようにしています。
この制度を導入した結果、アルバイト採用の約50%がリファラル経由となり、リファラル採用スタッフの定着率が一般採用の1.5倍との好循環を生み出しています。
参考:Refcomeで人事も社員もリファラル採用がカンタンに。リファラル経由の採用の大幅増加と同時に離職率低下・採用コスト削減も実現 | Refcome(リフカム)(取得日:2025年12月17日)
事例④freee株式会社
クラウド会計ソフトを提供するfreee株式会社は、急成長するスタートアップ企業として、リファラル採用を戦略的に活用しています。
■freee株式会社のリファラル採用施策
項目 | 内容 |
|---|---|
制度導入時期 | 創業初期から実施 |
対象職種 | エンジニア、セールス、コーポレート全職種 |
報酬制度 | 職種により5万円〜10万円の報奨金 |
特徴的な取り組み | ・全社員が「リクルーター」という意識 |
freeeでは、「全社員がリクルーター」という文化が根付いています。経営陣や管理職が率先して知人を紹介し、リファラル採用の重要性を体現しているのが特徴です。
また、月次の全社会議では紹介状況や採用実績を共有し、成功事例を全社員で祝う文化があります。「今月は◯◯さんの紹介で素晴らしいエンジニアが入社しました」と発表することで、紹介した社員を称えるとともに、他の社員の紹介意欲も高めています。
中途採用の約40〜50%がリファラル経由となり、急成長期の採用ニーズに対応できました。また、リファラル採用者の活躍度が高く、早期に重要ポジションを担うケースが多いという成果も出ています。
参考:フリー株式会社の会社情報 | Wantedly(取得日:2025年12月17日)
リファラル採用のミスマッチを防ぐならback check
リファラル採用は、採用コストの削減や定着率の向上など多くのメリットがある一方で、紹介者との関係性から客観的な評価が難しくなるケースもあります。また、候補者の過去の実績や働きぶりについて、紹介者だけの情報では不十分な場合もあるでしょう。
リファラル採用で入社した方が期待通りの活躍をしなかったり、早期離職してしまったりすると、紹介者との関係悪化や社内の雰囲気悪化につながるおそれがあります。こうしたリスクを防ぐためには、客観的な第三者からの評価を得られるリファレンスチェックの活用がおすすめです。
back check株式会社では、オンライン完結型のリファレンスチェックサービス「back check(バックチェック)」を提供しています。
back checkでは、候補者と過去一緒に働いたことがある元上司や同僚から評価を得ることで、入社後に顕在化する働きぶりやカルチャーマッチといった言語化しにくい情報を確認するリファレンスチェックを実施できます。
リファラル採用においてback checkを活用することで、紹介者の主観的な評価だけでなく、候補者の前職での実績や働きぶりを客観的に把握することが可能になります。これにより、採用判断の精度が高まり、入社後のミスマッチを防ぐことができるでしょう。
リファラル採用の効果を最大化し、紹介者との良好な関係を維持しながら優秀な人材を確保したいご担当者様は、ぜひback checkの導入をご検討ください。


back check magazine 編集部
リファレンスチェック/コンプライアンスチェックサービス「back check」が手がけるコラム「back check magazine」の編集部です。採用担当のみなさまに向けて、役に立つ情報を発信していきます。










