【採用担当者向け】雇用保険から経歴詐称は見抜ける?未然に防ぐ3つの方法
この記事のまとめ(要約)
雇用保険被保険者証や基礎年金番号通知書(旧:年金手帳)、源泉徴収票など、それぞれの書類から経歴詐称を見抜く方法と、コンプライアンスチェックや面接で経歴詐称を見抜く3つの方法も紹介します。
採用された候補者が入社手続きの際に会社へ提出する書類から、申告内容との食い違いが見つかり、経歴詐称が発覚するケースがあります。
雇用保険被保険者証や基礎年金番号通知書(旧:年金手帳)、源泉徴収票などです。ただし、これらは雇用保険・税・社会保険の手続きのために提出してもらう書類であり、経歴調査そのものを目的に取得・利用することには法的な留意点があります。各書類から何が分かるのかを整理しておきましょう。
監修者

中澤 泉
弁護士/合同会社ことりうみ代表
目次
採用選考において経歴詐称を見抜く方法はないかと調べている企業や採用担当者の方も、少なくないのではないでしょうか。
提出書類を確認すれば、候補者の申告内容との矛盾が見つかる場合があります。チェックするポイントをみていきましょう。
経歴詐称は書類から見抜ける

採用された候補者が入社する際に会社へ提出する書類から、経歴詐称が見抜けるケースがあります。
雇用保険被保険者証
基礎年金番号通知書(旧:年金手帳)
源泉徴収票
それぞれの書類から経歴詐称が見抜ける理由について、簡単に紹介します。
雇用保険被保険者証
雇用保険被保険者証とは、雇用保険に加入しているという証明書です。雇用保険への加入は候補者本人ではなく会社が行うため、雇用保険被保険者証はハローワークから会社に発行され、会社から従業員へと渡されます。
この時渡される書類は、「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)」と、「雇用保険被保険者証」が切り取り線で連結している状態のものです。この「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書」には、資格取得年月日や事業所名(前職名)の記載があるため、これらが履歴書の申告内容と食い違っていれば、確認のきっかけになることがあります。
基礎年金番号通知書
かつての年金手帳は、令和4年(2022年)3月末で廃止されました。令和4年4月以降に初めて年金制度に加入する人には、年金手帳に代わって「基礎年金番号通知書」が交付されます(すでに年金手帳を持っている人には通知書は発行されず、引き続き手帳が使えます)。
これらの書類から分かるのは、以下の情報です。
基礎年金番号
交付年月日(通知書が交付された日であり、年金の加入日ではありません)
本人の氏名・性別・生年月日
年金の加入日や加入記録は、これらの券面ではなく、ねんきん定期便やねんきんネット、年金事務所での照会で確認するものです。前職名や在籍期間は記載されないため、これ単体で経歴詐称を見抜くことは基本的にできません。
源泉徴収票
前職を退職した年と同じ年に入社し、入社先で年末調整を受ける場合は、年末調整のため転職先に源泉徴収票を提出します。源泉徴収票には支払者(直近の勤務先)の名称が記載されているため、申告内容との食い違いに気づくきっかけになることがあります。ただし、源泉徴収票で分かるのは勤務先名と支払金額などで、在籍期間や役職までは分かりません。また、退職した年の翌年に入社した場合は、原則として提出は不要です(本人が確定申告で精算します)。逆に、12月退職でも最終月の給与が翌年に支払われた場合などは、翌年分として提出が必要になることがあります。
雇用保険被保険者証から経歴詐称を見抜く方法

経歴詐称は、雇用保険被保険者証の内容から見抜ける可能性があります。
雇用保険被保険者証で分かることは?
雇用保険被保険者証で分かることは、以下の通りです。
被保険者の本名や生年月日
雇用保険被保険者番号
雇用保険被保険者番号は、原則として一人に一つ割り当てられ、転職を繰り返しても変わりません。なお、以前は離職後7年以上雇用保険に加入しない期間があると新しい番号が付与される取扱いがありましたが、令和7年1月以降は過去の番号を確認できるようになり、新たな番号を付与する取扱いは原則廃止されました。そのため、過去に長期のブランクがある候補者には複数の番号が記録上残っている可能性もあり、番号が一致しないこと自体が直ちに詐称を意味するわけではありません。
雇用保険番号から職歴が分かりそうですが、個人情報保護の観点で雇用保険被保険者番号からの職歴開示はできません。では、どのような項目から経歴詐称が見抜ける可能性があるのでしょうか。
資格取得年月日の記載
雇用保険被保険者証として候補者が前職から受け取った書類は、「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)」と「雇用保険被保険者証」が連結しています。
雇用保険被保険者証を提出させる本来の目的は手続き上「雇用保険被保険者番号」を知るためなので、「雇用保険被保険者証」の部分のみの提出で何ら問題はありません。
しかし、一般に、2つの書類が連結された状態で保管されている場合は、「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)」の部分も一緒にしたまま提出されるケースが多いでしょう。
その場合には、「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)」の部分に、「前職の会社名」や「資格取得年月日」の記載があります。
通知書部分には「資格取得年月日」が記載され、多くの場合は入社日と一致します。そのため、「在籍5年と聞いていたが、資格取得年月日が1年前の日付になっている」といった場合には、確認のきっかけになります。ただし、入社後しばらくして加入要件(週の所定労働時間など)を満たした場合や、加入手続きの遅れ・訂正があった場合には、資格取得年月日が入社日とずれることもあります。食い違いがあっても直ちに詐称と決めつけず、本人に事情を確認することが大切です。
よって、雇用保険被保険者証で経歴詐称が見抜ける理由は「前職の会社名と前職での資格取得年月日の記載」といえます。
雇用保険被保険者証で前々職の情報は見抜ける?

候補者の方は、「雇用保険被保険者証で前々職の情報がバレるのではないか」と考えるかもしれません。
しかし、実際は雇用保険被保険者証で分かるのは前職の会社名などであり、前々職の情報は分かりません。
またハローワークへ問い合わせても、雇用保険被保険者番号からの職歴開示はできません。
したがって、雇用保険被保険者証からは前々職についての経歴詐称は見抜くことができないといえます。
被保険者証部分だけが提出されることもある
雇用保険被保険者証は左右に分けられるように、切り取り線が設けられています。左側半分には「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)」部分として氏名と雇用保険被保険者番号、前職の会社名や資格取得年月日などが書かれています。「雇用保険被保険者証」部分の右側半分には氏名と雇用保険被保険者番号以外の記載はありません。
前職名を知られたくない候補者が、通知書部分を切り取って「雇用保険被保険者証」の部分だけを提出することは、取扱いとして認められています。また、被保険者証を前職の会社が保管していたり、紛失して再交付を受けたりした場合には、本人の意思とは関係なく前職の通知書部分が手元にないこともあります。したがって、通知書部分がないこと自体を経歴詐称の徴候と捉えるのは適切ではありません。前職情報の照合ができないというだけのことであり、必要があれば後述の書類提出やヒアリングで確認します。
💡 弁護士:中澤 泉からのワンポイント解説
入社時の提出書類は経歴確認の手がかりになりますが、それだけで詐称を断定はできません。また 、思想信条や家族など適性・能力に関係のない事項の調査は公正な採用選考の観点から避けるべきとされています。 なお、重要な経歴詐称が判明した場合は内定取消しや懲戒の対象になり得ますが、そうした処分の有効性は詐称の重要性などで判断されるため、安易な処分は避け、事実確認を丁寧に行うことが望まれます。
経歴詐称を未然に防ぐ3つの方法

雇用保険被保険者証だけで全ての経歴詐称を見抜くことは極めて難しいといえます。経歴詐称を見抜くには、採用する側からの積極的なアプローチが必要です。
コンプライアンスチェックを実施する
候補者の同意を得たうえで実施するコンプライアンスチェックも、有力な確認手段の一つです。
コンプライアンスチェックとは、公的公開情報・Web情報・個別調査によって、候補者申告に虚偽の情報がないか、コンプライアンスリスクがないか等を確認する手法です。ただし、調べてよい範囲には法的な制約があります。犯罪の経歴は個人情報保護法上の「要配慮個人情報」にあたり、取得には原則として本人の同意が必要です。また、思想・信条、支持政党、家族の状況など、適性・能力に関係のない事項を調べることは、職業安定法や厚生労働省の「公正な採用選考」の考え方に照らして避けるべきとされています。本人の同意を得て、業務上必要な範囲にとどめて行うことが前提です。
情報が確認できる書類を提出してもらう
選考時に提出してもらう書類は「履歴書」と「職務経歴書」が基本だと思います。この2つの書類は本人が思うように書けるため、完全に信用できるものではありません。以下のような書類も併せて提出してもらうことで、経歴詐称を未然に防げるでしょう。
卒業証明書
退職証明書
資格証明書
雇用保険被保険者証や年金手帳では、前職の情報を確認できないこともあります。経歴を証明する書類も提出書類に含めましょう。
面接で詳しく質問する
面接では、履歴書や職務経歴書の記載内容について具体的に質問し、回答に矛盾や不自然な点がないか確認しましょう。
申告内容に不明点がある場合は、担当業務や役割、実績、在籍期間などについて具体的に質問します。履歴書・職務経歴書の記載と回答に食い違いがある場合は、追加の確認が必要です。ただし、回答が不明瞭であることだけを理由に経歴詐称と判断せず、客観的な資料や本人への再確認を通じて事実関係を確認しましょう。
まとめ

雇用保険被保険者証だけで経歴詐称を見抜くことは簡単ではありません。
経歴詐称を見抜くには、上記に挙げた対策のほかに、候補者の同意を得たうえで、候補者と一緒に働いたことのある第三者から、候補者の情報を得るリファレンスチェックも有効です。
オンライン完結型コンプライアンスチェック/リファレンスチェックツールのback check(バックチェック)なら、コンプライアンスチェックもリファレンスチェックも同時に行うことができます。
経歴詐称をするような人を採用しないためにも、ぜひback check(バックチェック)の導入をご検討ください。
また、経歴詐称の他にもリスクは多く存在します。採用時におけるリスクの全体像や、企業が取り組むべきリスクマネジメントの基本については、総合解説ページ「採用リスクとは?人材採用のリスクを減らすポイント」もあわせてご確認ください。

監修者
中澤 泉
弁護士/合同会社ことりうみ代表
2015年に中央大学法科大学院を修了し、2016年に弁護士資格を取得。弁護士事務所で債務整理・交通事故・離婚・相続など幅広い案件を担当後、大手メーカーのインハウスローヤーを経て、現在は弁護士として主に企業法務に携わる。傍らでライターとしても活動し、2025年に合同会社ことりうみを設立。法律記事の執筆・監修を手がけている。専門性と読みやすさを両立したコンテンツ制作が強み。
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