目次リファレンスチェックとはリファレンスチェックとは、「候補者の働く姿」について、候補者と一緒に働いたことのある第三者(本記事では「推薦者」と呼びます)から、書類選考や面接だけではわからない情報を取得することを言います。候補者の実績や在籍期間、人物像などの情報を第三者から得ることで、採用における判断材料を増やすことが主な目的です。主な推薦者は、候補者の前職や現職の上司・同僚・部下です。候補者から了承を得た上で、企業もしくは外部の委託業者が、電話やメール、専用ツールなどを用いてヒアリングを行います。実施のタイミングは企業ごとに異なりますが、内定の前後に採用判断の最終確認として行われることが多いです。一般的には、より多くの情報を取得するために、候補者の働きぶりや人物像をよく知る元上司・元同僚・元部下の2人以上に回答を依頼します。リファレンスチェックのやり方(基本的な流れ)今回は企業が推薦者に直接コンタクトを取り、電話でインタビューを行う際の流れをご紹介します。1. リファレンスチェック実施の説明をする採用担当者が候補者にリファレンスチェックの説明をし、承諾をとります。【承諾してもらう内容】リファレンスチェックを実施すること候補者から推薦者(一緒に働いたことのある第三者)にリファレンスチェックの説明を行い、回答の同意を得ること推薦者にインタビューを行い、候補者に関する情報を取得すること2. 推薦者の連絡先を教えてもらう候補者に推薦者を探してもらい、候補者からリファレンスチェックについて説明をしてもらいます。協力への同意が得られたら、推薦者の連絡先を共有してもらいます。3. 推薦者と日程調整を行う推薦者とインタビューの日程を決めましょう。4. 質問内容を決めるインタビューまでに、質問内容を決めます。5. インタビューを実施する事前に決めた日程になったら推薦者へ連絡し、インタビューを実施します。6. レポートにまとめるインタビューで得られた回答をレポートにまとめます。記載する内容は、誰に実施したのか・質問内容・回答結果・総評などです。レポートは採用に関係する人のみに共有し、採用判断に役立てます。【お役立ち資料】「リファレンスチェック入門」をダウンロードする リファレンスチェックでの質問内容リファレンスチェックの質問内容は、例えば以下のようなものが挙げられます。勤務状況在籍期間の確認や実績などの、本人が申告している内容に虚偽がないかを確認します。在籍期間は◯年◯月から◯年◯月までと伺っておりますが、間違いはありませんか?役職・仕事内容・実績は合ってますか?人物像コミュニケーション能力やどのような性格かを関係性のある第三者に確認することで、面接の限られた時間ではわからない人物像を知ることができます。カルチャーマッチを見極めるための判断材料となります。候補者とはどのような関係性でしたか?遅刻や欠勤は多くありませんでしたか?周囲とのコミニュケーションはどうでしたか?仕事を進めるうえで、個人とチームどちらが合っていますか?候補者はどのような人物ですか?また一緒に働きたいと思いますか?スキル一緒に働いた第三者にしかわからない長所・短所やマネジメント能力などを確認します。「求めていたスキルが不足していた」といったミスマッチの軽減につながります。長所・短所はなんですか?問題解決能力・意思決定能力はありましたか?リーダーシップはありましたか?部下がいた場合、部下の教育はできていましたか?上記の他に、該当ポジションに関する具体的な質問も有効です。リファレンスチェックのメリットリファレンスチェックは企業にとって、大きく4つのメリットが存在します。採用ミスマッチの軽減書類選考や面接で知ることができる情報には限界があります。また、候補者が自分の長所や短所、職務遂行能力を的確に説明できるとは限りません。一緒に働いたことのある第三者から実際の働きぶりや人物像などを聞くことで、自社のカルチャーとフィットするか、求めているスキル・人物像と合致しているかをより高精度で判断できるため、ミスマッチの軽減につながります。【ミスマッチ軽減のためにリファレンスチェックを活用している事例】株式会社SmartHR | 「採用して終わり」ではない。SmartHR人事が考える、ミスマッチを防ぐ方法とは。コーポレートガバナンスの強化企業は、不正や不祥事などによる企業価値や信頼の失墜を未然に防ぐため、コーポレートガバナンスに取り組まなくてはいけません。採用においては、候補者が過去に不正や不祥事を起こしたことがないか、企業の信頼を失墜する可能性はないかを確認しておきましょう。残念ながら、経歴・職歴などを誇張したり、虚偽申告をする候補者もいます。一緒に働いた第三者に「申告情報に虚偽がないか」を確認することで、未然にコンプライアンスリスクを回避することができます。【お役立ち資料】知らないと危険!身近にあふれる「コンプライアンスリスク」選考の効率化できるだけ早期に候補者を見極め、合否を判断することで選考フローを削減することも可能です。リファレンスチェックを選考フローの序盤に実施することでスクリーニングになり、選考を効率化することもできるでしょう。入社後の早期活躍支援リファレンスチェックは採用の見極めだけでなく、入社後にも活用できます。例えば、候補者の性格や価値観を知ることができるので、マネジメントの参考にできます。また、強みとなるスキルや不足しているスキルをあらかじめ把握できるため、入社後に活躍しやすい環境を用意しやすくなる点もメリットです。【お役立ち資料】中途入社者の早期活躍を促進し定着率を向上させるオンボーディング実践例【入社後の活躍サポートにリファレンスチェックを活用している事例】STORES株式会社 | 採用は「入社後活躍」まで見ないと意味がない。個人が活躍するためのオンボーディング最適化への挑戦リファレンスチェックのコストメリットはどれぐらい?リファレンスチェックを実施することで、自社に合う人材を採用し、ミスマッチによる採用の失敗を未然に防ぐことが可能です。候補者が入社後に活躍しやすい環境を用意することで、長く働き続けてもらうことができ、離職率の改善が期待できます。では、早期離職が発生した場合、どのくらいの損失が出るのでしょうか。年収400万で採用した人が、入社後6ヶ月で離職してしまったケースを考えてみましょう。概算ではありますが、採用費に120万円(※)、本人の人件費に200万円、教育コストに20万円、PCや備品などの設備費に20万円かかると考えられます。目に見える費用だけでも360万円の損失となります。離職は金銭的な損失だけでなく、働く社員のモチベーション低下や、企業のイメージ悪化につながりかねません。リファレンスチェックによる離職率の改善は、不必要な金銭コストや企業へのマイナス効果を抑える役割も果たします。(※)転職エージェント経由で採用した場合を想定。エージェントへの紹介手数料を年収の30%とした場合の計算【お役立ち資料】採用ミスマッチが起きるといくらの損失になる?まとめてみましたリファレンスチェックは違法ではない?現在の日本の法律では、リファレンスチェックの実施自体を禁止するような法律はありませんが、実施にあたり気をつけるべきことがいくつかあります。個人情報の取得についてリファレンスチェックで得られる候補者、推薦者の情報は、個人を識別する情報(個人情報保護法 2条2項)に該当する可能性があるため、情報の取り扱い及び個人情報保護法の適用有無に注意が必要です。(定義)第二条 この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。一 当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等(文書、図画若しくは電磁的記録(電磁的方式(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式をいう。次項第二号において同じ。)で作られる記録をいう。以下同じ。)に記載され、若しくは記録され、又は音声、動作その他の方法を用いて表された一切の事項(個人識別符号を除く。)をいう。以下同じ。)により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)参考|個人情報の保護に関する法律個人情報を取り扱う場合は、原則として、あらかじめ利用目的を公表する、もしくは取得後速やかに本人に公表しなければいけません(個人情報保護法 21条)。候補者の前職や現職に知り合いがいたとしても、候補者の同意を得ずにリファレンスチェックを実施してしまうと、違法となる可能性があります。(取得に際しての利用目的の通知等)第二十一条 個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。参考|個人情報の保護に関する法律個人情報の提供について個人情報を本人の同意なく第三者へ提供することも、原則禁止されています(個人情報保護法 27条)。候補者の同意を得ずに候補者の情報を企業に渡した場合など、企業だけでなく推薦者も違法となる可能性があります。(第三者提供の制限)第二十七条 個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。参考|個人情報の保護に関する法律推薦者が公務員の場合情報の提供自体を規制する法律もあり、推薦者が所属する組織によっては、リファレンスチェックの実施ができない場合が存在します。推薦者が一般職の国家公務員である場合、他の職員・元職員の情報提供が禁止されています(国家公務員法106条の2)。(他の役職員についての依頼等の規制)第百六条の二 職員は、営利企業等(営利企業及び営利企業以外の法人(国、国際機関、地方公共団体、行政執行法人及び地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第二項に規定する特定地方独立行政法人を除く。)をいう。以下同じ。)に対し、他の職員若しくは行政執行法人の役員(以下「役職員」という。)をその離職後に、若しくは役職員であつた者を、当該営利企業等若しくはその子法人(当該営利企業等に財務及び営業又は事業の方針を決定する機関(株主総会その他これに準ずる機関をいう。)を支配されている法人として政令で定めるものをいう。以下同じ。)の地位に就かせることを目的として、当該役職員若しくは役職員であつた者に関する情報を提供し、若しくは当該地位に関する情報の提供を依頼し、又は当該役職員をその離職後に、若しくは役職員であつた者を、当該営利企業等若しくはその子法人の地位に就かせることを要求し、若しくは依頼してはならない。参考|国家公務員法の再就職等規制の概要リファレンスチェックを実施し個人情報を取得・保管する場合は、個人情報保護法に違反しないよう、注意をして実施する必要があります。関連記事:リファレンスチェックは違法?法に抵触する行為や注意点などを解説リファレンスチェックの回答は拒否されない?候補者にはリファレンスチェックを拒否する権利がありますが、実際に拒否される割合は高くありません。特に外資系企業ではリファレンスチェックが浸透しているため、拒否されることは珍しいでしょう。日系企業では、リファレンスチェックの存在自体があまり知られていないこともあり、ごく稀に協力が得られない場合もあるようです。ただ、申告情報に虚偽や詐称があるからリファレンスチェックを拒否しているという可能性も否めません。また、本人は同意しても、「候補者への協力を快く感じない」「情報を開示できない」といった理由で、企業や推薦者が回答を拒否するケースもあります。【お役立ち資料】リファレンスチェックにおける推薦者と候補者の本音リファレンスチェックを拒否・辞退された時の対処法リファレンスチェックを拒否・辞退された場合、まずは採用候補者に拒否する理由を聞いてみましょう。以下のような対処法で、取得が可能になる場合があります。取得のタイミングを変更する別の推薦者を探すリファレンスチェック用のツールを使う取得のタイミングを変更する候補者の事情によっては、推薦者を探すことが難しい場合もあります。現職の従業員数が極端に少ない場合や、企業から激しい引き止めにあっている場合などです。その場合、内定承諾後や退職確定の後に実施するなど、タイミングを変更することで取得ができる可能性があります。別の推薦者を探す推薦者から拒否をされた場合や、現職の上司・同僚からのリファレンス取得が難しい場合、別の推薦者を立てられるか確認しましょう。前職で一緒に働いていた、あるいは現職で既に退職済みの元上司や同僚、異動前に所属していた部署の上司や同僚、深い付き合いがあった取引先など、推薦者の条件を広げることで対応してもらえる可能性があります。あらかじめ候補者から推薦者の候補を複数名もらっておくと、スムーズに進めることができます。リファレンスチェック用のツールを使う電話でリファレンスチェックを行う場合、推薦者に電話をする時間を確保してもらう必要があります。推薦者の負担を懸念して、リファレンスチェックを拒否する候補者もいるでしょう。最近では電話やメールではなく、webシステムを使ったオンライン完結のリファレンスチェックも増えています。オンライン上でのやりとりで完結するので、都合の良い時間に回答ができ、推薦者の負担を減らすことが可能です。内定後のリファレンスチェック実施で、内定取り消しは可能?企業が一度内定を出した後、リファレンスチェックの結果を理由に内定を取り消すことは、基本的にはできません。内定を出したタイミングで、企業と候補者の間では始期付解約権留保付(※1)の労働契約が成立します。内定の取り消しは「解雇」にあたるため、「リファレンスチェックの結果が良くなかったから」という理由だけでは、内定を取り消すことができません。第3章 労働契約の継続及び終了第16条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。参考|労働契約法(平成19年12月05日法律第128号) - 厚生労働省※1 始期付解約権留保付:就業開始日までの間に雇用者は被雇用予定者との解約ができることを労働条件に付与すること。ただし、「重大な経歴詐称が発覚した」などの合理的な理由であり、「社会通念上相当である」と認められた場合は、内定を取り消すことも可能です。リファレンスチェック後に内定を取り消したい場合は、専門家に相談した上で、不当解雇とならないよう対応を検討しましょう。リファレンスチェックをするならback checkリファレンスチェックは、ミスマッチを防いで最適な人材を採用することに役立ちます。候補者の性格やスキルを入社前から把握できるため、入社後に早期活躍していただくための環境づくりなどにも効果的です。一方で、「採用担当者の工数が圧迫されてしまう」といったデメリットもあります。リファレンスチェックを効率よく実施し、導入効果を最大限に発揮するためには、専門のサービスを利用するのもおすすめです。例えば、オンライン完結型のリファレンスチェックサービスであるback check(バックチェック)には、以下のような特徴・メリットがあります。リファレンスチェックの依頼や回答、レポートの回収まで全てオンラインで完結。採用担当者は、システム上で候補者の情報を登録するだけでOKすでに回答済みのリファレンスレポートを他社にも共有できるため、候補者・推薦者の負担を最小限に抑えられる個人情報保護法などの各法律に準拠しており、はじめてリファレンスチェックを実施する企業も安心して運用できる低コストで効率的にリファレンスチェックを実施できるback checkを、ぜひこの機会にご検討ください。