採用における素行調査とは?素行調査で分かることと調査方法、違法性について解説

更新日:2026/6/18

執筆者:back check magazine 編集部

バックグラウンドチェック

この記事のまとめ(要約)

素行調査とは、候補者の行動や経歴を調べ、問題点がないかをチェックすることです。過去の経歴、交友関係、反社会的勢力との関わりなどが分かります。調査内容、調査方法、違法になるケースを解説します。

企業が新たな人材を採用する際、その候補者の素行に問題がないかを確認することは非常に重要です。

素行調査を通じて、候補者の信頼性を確認し、職場の安全性を確保しながらコンプライアンス体制を維持することができます。

本記事では、素行調査の重要性と、素行調査で得られる情報の例、具体的な調査方法や違法性について詳しく解説します。

監修者

中澤 泉

弁護士/合同会社ことりうみ代表

目次

素行調査とは?

素行調査とは、調査対象者の行動や経歴を調査し、問題点がないかをチェックすることです。
採用の場面では、採用候補者の経歴や申告内容など、業務上の適性・能力の判断に必要な範囲の事項を確認するプロセスを指します。

候補者の素行調査は、候補者が職場に適した人物であるか・入社後にトラブルにつながるおそれはないかなどを評価し、採用のリスクを減らすための重要なステップです。
この調査を通じて、候補者が提供する情報の正確性を確認し、職場の安全性や企業の信頼性を確保することができます。

ただし、素行調査を行う際には、法的・倫理的な配慮が必要で、調査内容や取得する情報によっては、事前に候補者の同意を得ることが求められます。
また、どのような調査結果が出たとしても候補者を不当に差別することなく、透明性を保ちながら適切に評価をすることが重要です。

素行調査でどこまで候補者のことが分かる?

では、素行調査で候補者のことがどこまで分かるのでしょうか。

素行調査で得られる情報の例を紹介します。

過去の経歴

素行調査を通じて、学歴や職歴、資格の有無など候補者の過去の経歴を確認することができます。
候補者が申告した情報の正確性を検証し、履歴書や面接での発言が事実と一致しているかを確認します。

また、過去にどのような役職に就いていたか、どのような業務を担当していたかなども詳細に調査することが可能です。
素行調査によって、経歴詐称をするような人材の入社を防ぐことができます。

交友関係

素行調査では、業務に関連する範囲で、過去の職務上の関わりなどを確認することがあります。ただし、私生活上の交友関係そのものを網羅的に調べることは、適性・能力と関係しない「身元調査」として就職差別につながるおそれがあり、避けるべきです。

日頃の行動

候補者の日常的な行動や公開された発信内容のうち、業務上の適性・能力や、入社後のコンプライアンスに関わる事実については、公開情報の範囲で確認することがあります。  

例えばSNS上で、前職の機密情報や顧客情報を漏らすような投稿、ハラスメント・差別的な言動、取引先や同僚を誹謗中傷する発信などがないかは、職場での適応性やリスクを判断するうえで参考になります。

一方で、宗教・支持政党・思想信条・趣味・愛読書・尊敬する人物といった事項は、適性・能力とは関係せず、本人の同意の有無にかかわらず収集しないよう注意が必要です(厚労省「公正な採用選考」)。

また、公開情報であっても、本人が認識しない態様での継続的な監視や「裏アカウント」の探索はプライバシー侵害につながり得るため、調査の可能性をあらかじめ明示し、本人の同意を得ておくことが望ましいといえます。 

反社会的勢力との関わり

素行調査の重要な項目のひとつが、反社会的勢力との関わりを調べることです。

反社会的勢力との関わりがある人物を入社させてしまうと、さまざまなリスクを伴います。
具体的には、取引先や銀行との取引が中止になる、上場廃止となる、上場ができなくなるといった可能性があります。

また、反社会的勢力との関わりを断つことは、政府指針で定められており、各都道府県の暴力団排除条例でも一定の対応が義務付けられています。そのため、反社会的勢力に関与している候補者の採用は、社会的責任の観点からも必ず避けるべきといえるでしょう。

参考:企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について|犯罪対策閣僚会議幹事会申合せ

素行調査の違法性は?

採用プロセスにおいて企業が素行調査を行うことは、適切かつ公正な範囲であれば違法性はありません。
しかし、調査方法や調査範囲を誤ると、個人情報保護法等に抵触し、違法となるため注意が必要です。具体的にどのようなケースで違法になってしまうのか確認していきましょう。

本人の同意なしにプライベート情報の収集

求職者の個人情報は、原則として本人から、本人以外から収集する場合は本人の同意の下で、適法かつ公正な手段により取得しなければなりません(職業安定法5条の5・同指針)。

本人の知らない態様で家族・前職などから情報を聞き出すことは、この職業安定法上のルールに反し、態様によってはプライバシー侵害として不法行為にもなり得ます(要配慮個人情報を無断取得した場合は、個人情報保護法20条2項違反となります)。

第三者である家族や知人、前職などから無断で候補者の情報を取得することは、適正な手段での取得とは言い難く、この条文に違反する可能性があります。

そのため、候補者に無断で家族や前職に連絡し、個人的な情報を聞き出すことはしてはいけない調査方法です。

募集ポジションの職務や、採用判断に無関係な私生活の調査

職業安定法では、求人企業は「業務の目的の達成に必要な範囲内で求職者等の個人情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。ただし、本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない。」としています。

参考:職業安定法 | e-Gov 法令検索

必要な人材を採用するという採用業務の目的において、例えば候補者の家族の情報や、候補者本人の趣味、政治的思想などは不必要な情報です。無断で、目的の達成に必要でない情報を収集すると、行き過ぎた調査として違法とみなされる可能性があるのです。

それらを理由に不採用とすること自体は違法とは定められていないものの、就職差別とみなされる可能性が高いでしょう。もし「就職差別をする企業である」と広く知られた場合、信用低下など不利益を被ることもあります。

さらに、素行調査を内定後に実施した場合にはより注意が必要です。採用内定は判例上「始期付解約権留保付労働契約」とされ、内定取消は留保された解約権の行使として、解雇に準じて厳格に制限されます 。

具体的には、内定当時知り得なかった事実であり、かつ取消が解約権留保の趣旨・目的に照らして客観的に合理的・社会通念上相当と認められる場合に限られるため、職務に関係のない情報を理由とする内定取消は無効と判断され、訴訟リスクも高くなります。

犯罪歴など要配慮個人情報の無断調査

要配慮個人情報には以下のような情報が含まれます。

  • 人種

  • 信条

  • 社会的身分

  • 病歴

  • 犯罪の経歴

  • 犯罪により被害を被った事実

  • 身体障害・知的障害・精神障害などの障害があること

  • 医師等により行われた健康診断その他の検査の結果

  • 保健指導

  • 診療・調剤情報

  • 本人を被疑者又は被告人として逮捕等の刑事事件に関する手続が行われたこと

  • 非行・保護処分等の少年の保護事件に関する手続が行われたこと

法令に基づく場合などの特別なケースを除き、「あらかじめ本人の同意を得ないで、要配慮個人情報を取得してはならない。」と個人情報保護法で定められているため、無断で調査した場合は違法となります。

参考:個人情報の保護に関する法律 | e-Gov 法令検索

もっとも、日本では公的な犯罪歴(前科)を私企業が照会・取得する手段は原則として存在せず(前科調書・犯罪人名簿は第三者照会に応じません)、実務上は本人への自己申告の確認が中心となります。

例外として、こども性暴力防止法(2026年12月25日施行予定)に基づき、学校設置者等や国の認定を受けた事業者が特定の性犯罪前科を確認できる制度が設けられています。また、運送業で交通事故歴を確認する場合のように、業務との関連性が明確なケースもあります。 

いずれにせよ、確認できるのは業務に必要な範囲に限り、かつ自己申告など適法な手段によることが前提となります。

参考:学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律(こども性暴力防止法)|こども家庭庁

💡 弁護士:中澤 泉からのワンポイント解説

素行調査は採用リスクを減らす有効な手段ですが、調べてよい範囲には法律上の明確な枠があります。思想信条や家族など適性・能力に関係しない事項は本人同意があっても収集できず、犯罪歴も私企業が公的記録を取得する手段は原則ありません。「業務との関連性」と「本人の同意」を軸に、必要な範囲に絞って運用することが重要です。

採用における素行調査の方法

採用における素行調査の具体的な方法を解説します。

これらの方法を組み合わせて使用することで、候補者の素行をより正確に把握し、信頼性の高い採用判断を行うことができます。

素行調査は、企業の安全性や信頼性を保つために重要なプロセスですが、法的および倫理的な基準を遵守しながら実施することが求められます。

インターネットで候補者の情報を検索する

インターネット検索は、最も手軽で迅速な素行調査の方法です。

候補者の名前を検索エンジンに入力し、過去のニュース記事やブログ投稿、公開された情報を確認します。

この方法では、候補者に関する公的な記録や社会的な活動についての情報が得られる可能性があります。

ただし、インターネット上の情報は信頼性が不確かであるため、慎重に評価する必要がある・得られる情報に限りがあるといったデメリットもあります。

SNSチェックを行う

SNSを利用して候補者の行動や性格を調査する方法です。
Facebook、X(旧Twitter)、LinkedInなどのSNS上で公開されている発信内容のうち、業務上の適性・能力やコンプライアンスリスクに関わる情報を確認します。

SNSからは候補者の日常の活動や価値観、コミュニケーションスタイルなどがうかがえます。
また、組織に悪影響を及ぼすリスクがないかといった観点で、以下のような投稿がないかをチェックすることもあります。

  • 攻撃的、差別的な発言

  • SNS上でのマナーを考慮せず、他者のプライバシーを侵害してしまうような投稿

SNS確認を行う場合でも、宗教・支持政党・思想信条は収集禁止事項にあたるため確認対象とせず、業務上の適性・能力に関わる事実に限ることが必要です。なお、公開情報であっても継続的な追跡や「裏アカウント」の探索はプライバシー侵害・不正取得のリスクがあり、あらかじめ調査の可能性を明示し本人の同意を得るのが望ましいとされています。

探偵事務所などの調査機関に依頼する

自社で素行調査を行う場合、個人情報保護法をはじめとした各種法律に抵触していないか、採用担当者自身が細心の注意を払わなくてはなりません。

また、専門的な調査ノウハウがないと、得られる情報にも限りがあるでしょう。

そうした場合に、専門の探偵事務所や調査会社に素行調査を依頼するという手があります。

ただし、外注すれば適法になるわけではありません。探偵業者も探偵業法上、人の権利利益を侵害する調査や差別目的の調査は禁じられており(同法6条・7条)、依頼する企業側も、調査事項や手段が不適切であればプライバシー侵害等の責任を負い得ます。委託先が適正な手段によっているか、調査事項が業務との関連性の範囲内にとどまっているかを確認することが重要です。費用がかかる一方で専門的な調査が期待できますが、「外注だから安全」という前提では運用しないよう注意が必要です。

コンプライアンスチェックサービスを利用する

コンプライアンスチェックサービスは、候補者の経歴に虚偽や問題がないか、報道等の公開情報・公的公開情報(官報の破産情報等)・SNS上の問題行動などから候補者のコンプライアンス面でのリスクを総合的に調査するサービスです。

コンプライアンスチェックサービスを利用することで、手間を省きながらも高い信頼性を確保することが可能です。

採用における素行調査にはback check(バックチェック)

採用における素行調査には、コンプライアンスチェックサービスの利用がおすすめです。

back check株式会社ではオンライン完結型のコンプライアンスチェック・リファレンスチェックサービス「back check(バックチェック)」を提供しています。

back check(バックチェック)は、公的公開情報・WEB情報・個別調査によって、候補者申告に虚偽の情報がないか、コンプライアンスリスクがないか等を確認するコンプライアンスチェックと候補者と一緒に働いたことがある上司・同僚から第三者評価を得ることで、自社で活躍できるか等を確認するリファレンスチェックを行うサービスです。

候補者の素行調査を行う手段として、back checkが有効です。
採用のリスクを減らしたいと考えている企業のご担当者様は、ぜひback checkの導入をご検討ください。

なお、採用における素行調査は、候補者の経歴や申告内容、コンプライアンスリスクなどを確認する「バックグラウンドチェック」と重なる領域があります。バックグラウンドチェックの全体像や費用、導入手順について網羅的に知りたい方は、総合ガイドである『バックグラウンドチェックとは?調査内容ややり方を解説』もあわせてご覧ください。

監修者

中澤 泉

弁護士/合同会社ことりうみ代表

2015年に中央大学法科大学院を修了し、2016年に弁護士資格を取得。弁護士事務所で債務整理・交通事故・離婚・相続など幅広い案件を担当後、大手メーカーのインハウスローヤーを経て、現在は弁護士として主に企業法務に携わる。傍らでライターとしても活動し、2025年に合同会社ことりうみを設立。法律記事の執筆・監修を手がけている。専門性と読みやすさを両立したコンテンツ制作が強み。

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