目次「オンボーディング」の意味オンボーディングは英語の「on-board(船や飛行機に乗っている)」という言葉が由来です。企業人事の分野においては、企業を一つの乗り物に例え、新入社員の入社前後を長期的にサポートする取り組みのことを「オンボーディング施策」と呼びます。新人研修・OJTとの違いセミナーや現場での実務訓練を通じて「会社理解・即戦力化」を主な目的とする新人研修・OJTに対し、オンボーディング施策は「新入社員が組織に定着すること」を主な目的として行われます。定期的な1on1ミーティングなどのコミュニケーションの機会を多く作り、組織全体で取り組むことがオンボーディングの大きな特徴です。新人研修・OJTとオンボーディング施策は対立するものではなく、オンボーディング施策が新人研修・OJTも包括している関係です。座学・セミナーが中心となる「新人研修」、実際の業務を通して新入社員に仕事を教える教育・研修手法である「OJT」、どちらも先輩社員がサポートし、新入社員が組織に定着するために必要な工程です。そのため、オンボーディング施策の一部と言えるでしょう。新人研修・OJTの中には一般的には含まれない、相談係の設置や、コミュニケーション機会の設置といった取り組みも合わせて、「オンボーディング施策」と呼びます。オンボーディング施策の目的とは?ここからはオンボーディング施策の代表的な目的を2つご説明します。新入社員の早期戦力化オンボーディングの大きな目的の1つは、早期戦力化です。実務を通じた現場研修やセミナーを利用して会社理解を深め、新入社員が戦力として組織にうまく馴染めるようサポートします。中途採用の場合は特に即戦力を求めて採用することも多いですが、人手不足を理由に「これ読んでおいて」とマニュアルだけを渡され、不明点を誰に聞いたらいいかも分からないまま現場投入…というインプットが不十分な状況では、優秀な人材であってもパフォーマンスを発揮できるまで時間がかかるでしょう。オンボーディング施策を通じて、新入社員が早期に活躍できるよう後押しします。新人に手をかけている余裕なんて無い、という企業も中にはあるかもしれません。しかし、1日中ベッタリ付きっきりでいる必要は無く、少しの継続サポートで戦力としての独り立ちが早くなります。かかった採用コストの回収スピードも早くなるでしょう。新入社員の早期離職防止目的の2つ目は早期離職の防止です。大卒新入社員の3年以内離職率は近年32%前後(*1)を推移しており、依然として高止まり状態にあります。中途入社者においても、中小企業を対象とした調査では3年以内離職率は30.6%(*2)となっています。中途入社者については、3年の中でも特に1年以内での離職の割合が多くなっています(*3)。新入社員にすぐに辞められてしまっては採用にかかったコストが無駄になってしまいますし、空いた穴を埋めるため、新たな採用コストもかかってしまいます。このような背景から、入社後1年以内の継続的なケアが重要視され、オンボーディングが注目されているのです。オンボーディングとして入社前後で継続的にコミュニケーション機会を作り、新入社員の不安や疑問を解消していくことで早期離職の防止に繋がります。(*1)参考:新規学卒就職者の学歴別就職後3年以内離職率の推移|厚生労働省(*2)参考:中小企業のアンケート調査|経済産業省 中小企業庁(*3)参考:「中途入社者の定着」実態調査―『人事のミカタ』アンケート―|エン・ジャパンオンボーディング施策のメリット/デメリット次に、オンボーディング施策のメリットとデメリットを新入社員と企業それぞれの視点から解説していきます。新入社員側のメリット組織のさまざまな人と効果的にコミュニケーションを取れる通常の新人研修のみでは、同期同士での親睦を深めることはできますが、なかなか他部署の先輩とは接する機会を得られません。部署を跨いだ懇親会などの社内イベントをオンボーディング施策として取り組むことで、自分が所属する部署以外のさまざまな方との会話を通じて、会社を多角的に把握することができるでしょう。自分の所属部署と他部署との関わりを知ることで、組織の中の自分の役割が見えてきます。役割はやがて「働きがい」に繋がり、前向きに仕事に打ち込めるようになるでしょう。部署を横断したプロジェクトにもスムーズに入っていけます。働く上での不安や、組織内での疎外感を解消できる機会が多くある通常のOJTは、マンツーマンで上司や先輩社員から実務の指導を受けます。新入社員は仕事上で困ったことがあれば、OJT担当の社員に質問をして、疑問を解消していきます。しかし、人間同士、どうしても相性というものがあります。「先輩社員が優秀すぎて、小さな不安を相談できない」「通常業務が忙しそうで話しかけにくい」「背中を見て学べ、と言わんばかりに言葉で何も教えてくれない」とOJT担当者に対する困り事が出てくる場合も考えられます。その場合、誰に相談したら良いか分からず、小さなモヤモヤを抱えることになり、いずれ退職に繋がってしまうかもしれません。オンボーディング施策として、例えばメンター制度を取り入れる場合、OJT担当者や上司以外の、できれば他部署の社員を相談担当として配置します。半年〜1年間、毎月メンターとの面談の機会を設け、小さな不安・不満をなんでも忌憚なく話してもらうことで、上層部は意見を吸い上げ、不安や疎外感を減らす対策を行います。新入社員側は安心してなんでも相談できる場を得ることができ、相談したことが対処されるので不安を解消することができます。また、オンボーディングでは、フラットな場でのコミュニケーションも大切にするので、ランチ会や歓迎会などを催すこともしばしばあります。部署の垣根を超えて社内の方たちと接することで、自分が抱える悩みや不安を打ち明けられる機会は多いでしょう。定期的なフィードバックを受けながら、自分の現在地を把握できるOJT担当者やメンターから業務習得度の進捗や、取り組みについてのフィードバックを受けることで、自分がすべきことを把握できます。できるようになったことと今後取り組むべき課題を整理し、自分の現在の行動に落とし込める環境は、成長のために非常に有効です。入社時に、職務に対する期待、目的、マイルストーンを明確に新入社員に共有しておくこともオンボーディング施策の1つです。新入社員は自分が今どこまでできるようになっているかを細かく確認できることで、成長を実感でき、OJT担当者やメンターからのフィードバックもより具体的なイメージを持って受け止めることができます。企業側のメリットチーム力の向上オンボーディングは、組織全体で新入社員をサポートすることが特徴です。オンボーディング施策の中でコミュニケーションの機会が生まれるため、既存社員と新入社員はお互いのことを知ることができます。そして、既存社員同士は新入社員をサポートする時間を確保するために、日々の業務を互いに調整しながら協力してオンボーディング施策に取り組みます。これらの過程で、新入社員と既存社員の間に、そして既存社員同士の間に信頼関係が構築され、コミュニケーションの活性化やチームワークの向上が期待できます。また、既存社員はオンボーディングに協力する度に、改めて企業文化やビジョン、業務の目標を再確認することができます。そのため、企業に対する帰属意識やエンゲージメントが高まり、組織の結束をより強めることができます。【お役立ち資料】社員が辞めない職場はどう作る?エンゲージメント向上の実践ガイド採用・教育プログラムを定期的にブラッシュアップできる新入社員が入った際、全員に同じプログラムを受けてもらうのは最初のオリエンテーションまでで、後は各部署の新人教育に任せる、という企業も多いのではないでしょうか。その場合、早期離職者が出た場合もどう改善していけば良いか対策を考案しにくいでしょう。一方で、プログラムとしてオンボーディング施策を策定し、部署を問わず画一的に実施した場合、プログラム終了時、新入社員から「もっとこういうプログラムが欲しかった」「この施策は組織への馴染みやすさに繋がった」といった感想を集めることができます。オンボーディング施策に協力してくれた既存社員からも、「こんなサポートがあるといいのではないか」と採用や教育に関する意見を集めることができます。定期的にオンボーディング施策のプログラム内容を見直す機会を設けることで、次の新入社員にはより良いオンボーディングを提供できます。多角的な意見をまとめながら採用・教育プログラムの内容をブラッシュアップできるでしょう。採用コストの削減に繋がる人材の採用には、新卒・中途問わず、採用担当者の人件費、求人サイトに掲載するための広告費、会社説明会などのイベント出展費用、人材仲介会社への紹介手数料など、多くのコストがかかっています。それにもかかわらず、ようやく戦力となってきた頃に早期離職されてしまうと、かけた採用コストは回収できず、さらに新しい人材を採用するための採用コストがかかってしまいます。一方で、オンボーディングに成功した場合、新入社員がいち早く戦力となり、長く定着してくれることで、かけたコストが早く回収でき、さらに利益を生み出してくれます。オンボーディングが有効に機能し人材の流出を防ぐことで、結果的に採用コストの削減に繋がります。【早期離職が起こるといくらの損失になるか分かるお役立ち資料】「採用ミスマッチ1人あたり数百万の損失!?」企業側のデメリットプログラム確立までには体力が必要自社の採用課題に組織として向き合うことは、思ったよりも体力が必要です。プログラムの中心となる方には大きな負担がかかるでしょう。プログラム作成と社員への働きかけを、自身の業務と並行して進めなくてはなりません。過程の中で実際に早期離職が起こり、担当者がダメージを受けることもあるかもしれません。組織全体で取り組むため、既存社員の理解を得ることが必要組織にはさまざまな方がいます。それぞれが自身の業務を抱える中で、全員に前向きにオンボーディング施策に協力してもらうことは難しいかもしれません。組織を巻き込む求心力はもちろんですが、社員の負担になりにくい内容や体制を考えることも必要です。オンボーディング施策の作り方ここからは、オンボーディング施策を設計するステップをご紹介します。オンボーディング施策を実施したい、あるいは一から作り直す必要があると考えた時、何から手をつけたら良いか困ってしまった方は参考にしてみてください。離職が多い原因および早期活躍ができない原因を探るオンボーディング施策の目的は、新入社員に早く組織に馴染んでもらい、早期活躍・長期定着を促すことにあります。現状ですでに早期離職者は滅多におらず、新入社員がすぐに活躍してくれているのであれば、オンボーディング施策に取り組む優先度は低いでしょう。早期離職者の多さや、即戦力だと思って採用した中途入社者の独り立ちの遅さに課題を抱えている場合、まずは原因の分析から始めましょう。直近で退職する社員に退職理由を忌憚なく教えてもらったり、既存社員に不満がないかアンケートをとったり、定性情報を集めましょう。併せて、過去の離職者データから、特定の部署やプロジェクトに退職者が多くないか、など定量的な情報を集めます。それらを照らし合わせた時、上層部が気づかなかった問題社員が浮き彫りになったり、現場の労働環境が悪かったり、オンボーディング施策を行っても解決しない問題が原因だと分かる場合もあります。早期にパフォーマンスを発揮できないのは入社前後のサポートが足りないことが原因であれば、本当にオンボーディング施策に力を入れるべきだと判断できます。現状の教育プログラムの棚卸し本当にオンボーディング施策に力を入れるべきだと決定したら、取り組むオンボーディング施策を決定する前に、現状の把握が必要です。新卒採用・中途採用に分け、「誰が」「何を」「いつ」「なんのために」の4軸で、現在やっている教育プログラムを整理していきましょう。整理していく中で、「なんのために」が分からないことがもしあれば、新入社員も「なんのための時間だろう」と取り組む意義を感じないでしょう。思い切って廃止し、別の新しい施策に取り組む時間に充てましょう。新人教育を各部署の現場に任せている場合、部署や担当者によって教えている内容にばらつきがあり、成長に格差が生まれ、早期にパフォーマンスを発揮できない新入社員が出てきてしまう可能性があります。OJT担当は通常の業務をしながら教えているので、細かい暗黙知からビジネスマナーまで全て抜け漏れなく教えるのは難しい場合もあります。共通化して研修として教えられる部分はないか、検討の余地があるでしょう。過去にOJT担当をしたことがある社員や、OJTを受けた社員にインタビューし、どんなことを教えた・教わったか、後から知って困ったことはないか、など現場の実情もヒアリングしましょう。取り入れるオンボーディング施策を検討する現状の把握ができたら、どのような施策を実施するか検討します。ここまでのステップで収集・整理した情報を基に、早期離職や、独り立ちが遅い原因を推測し、その仮定から改善施策を考えましょう。経営陣の考えが分からない・やり方に不満がある人が多い場合、例えば最初のオリエンテーションの「誰が」を変え、人事部ではなく社長や役員が実施すると良いかもしれません。実際に目の前で想いを語り、質疑応答も受け付けます。OJT担当が個別に丁寧にビジネスマナーを教える余裕がなく、早期活躍の足を引っ張っているのであれば、新入社員全員に一括でビジネスマナー研修を導入します。やりがいを感じられず辞めてしまう人が多いのであれば、このポジションで組織の中のどんな人が助かっているのか、事業全体としてどんな顧客が喜んでくれているのか、また、将来のキャリアパスはどうなっているのかといったモチベーションに繋がる説明を行う時間を設けます。人間関係で悩んで活躍できなかったり辞めてしまう人が出ているのであれば、相談先を設定したり、コミュニケーションを生む社内イベントを設定します。こちらの記事ではさまざまな企業で実施している具体例をご紹介しています。ご一読ください。関連記事:オンボーディングとは?実施するメリットや導入時のポイントを解説暗黙知の明文化中途採用の新入社員の場合、前職でのやり方や前職での文化を持って入社することになります。新しいノウハウを自社にもたらしてくれることは嬉しいことですが、前職の文化は一旦忘れ、馴染んでほしい自社の文化があるでしょう。タバコ休憩に頻繁に行く文化なのか、規定の休憩時間以外は控える文化なのか、また、オフィスに出入りする時にはどんな声掛けをする文化なのか、といった、細かい文化の違いが最初は分からないものです。例えば、自社の文化として風通しをよくするために、社長も新入社員も契約社員も「〇〇さん」と呼び合う社風だとします。既存社員はこれを当たり前と思っていても、知らない中途社員は前職の文化のまま「〇〇部長」と呼び、お互い戸惑ってしまうかもしれません。中途採用の既存社員に、「以前の会社と違うなと思ったことは何かある?」と確認し、自社ならではの文化を明文化して、新入社員に伝えられるようにしておきましょう。資料の準備オンボーディング施策にあたって、少なくとも2種類の資料を作成する必要があります。1つ目は既存社員向けの資料です。既存社員の協力なくしてオンボーディング施策は実施できません。全体を通してオンボーディングはどんなことをするのか、誰にどの部分のサポートをして欲しいのか、その目的は何かを時系列で一覧表化し、既存社員に協力を依頼しましょう。離職が減り、新入社員が早期に独り立ちをするとどんなメリットがあるかも伝えることで、了承してくれやすくなるでしょう。2つ目は新入社員向けの資料です。新卒であれ中途であれ、組織に慣れるまでは受け入れられるか緊張するものです。入社直後は与えられたパソコンの初期設定や、自社で使っているシステムへのアカウント作成やログインなど、作業を指示する資料を最初に渡すことになるかと思います。その際、資料の作り方として、1ページ目はまず「ようこそ!」「一緒に働けることを楽しみにしていました」「これからよろしくお願いします!」など、歓迎感を出したフレンドリーな資料にすることが望ましいでしょう。図やイラスト・写真も多用したり、語りかける口調だったりすると、安心感があり「読もう」という気持ちにさせることができます。既存社員向け同様に、時系列で、いつどんなことをやるのかオンボーディング全体の流れも見える化しておくことで、新入社員本人が先のことを見通せるだけでなく、既存社員も「ここまでは知っているな」という共通認識を持った上で関わることが可能です。また、入社してしばらくは、新人研修やオリエンテーションで新しいことをどんどんインプットする日々が続きます。全て一度で覚えきることは到底難しいでしょう。そのため、これさえ見れば振り返ることができるような、オンボーディングに関わる全ての資料を網羅した資料も作成しましょう。すでに関連資料があるならオンボーディング資料用にリライトする必要はなく、「ここを見れば何が分かる」ということが集まったリンク集になっていれば問題ありません。オンボーディングで関わる社員も多く、顔と名前を一度に覚えることが苦手な人もいます。関係する社員の部署・名前・顔が分かるような資料も作っておくと、よりコミュニケーションが円滑になるでしょう。実施実際にオンボーディング施策が始まったら、各施策の担当を任せた社員に丸投げせず、常に人事部門でハンドリングを行いましょう。心理面での相談係との面談日が近づいたら新入社員と担当社員にリマインドを送ったり、新入社員・担当社員双方に困り事はないか細かく確認したり、施策が円滑に進むよう動きます。次の新入社員のための振り返りオンボーディング施策が終わったら、プログラムを受けた新入社員に感想や意見、改善案などをヒアリングしましょう。ブラッシュアップに繋がるだけでなく、「組織のための改善案を出せた」という貢献感が新入社員の帰属意識を高めます。施策に協力してくれた既存社員からも意見を募り、次に入ってくる新入社員のためにプログラムを改善していきましょう。オンボーディング施策成功のための10のポイントオンボーディング施策の成功のためには、新入社員が入ってから頑張ればいいわけではありません。採用の段階からすでに成否に関わっているのです。ここからは入社前後に分けて、採用企業が大切にするべき10のポイントを説明していきます。以下の資料でも入社前後、また入社後数ヶ月後のフェーズごとのオンボーディング施策の実践例をご紹介しています。併せてご確認ください。【お役立ち資料】中途入社者の早期活躍を促進し定着率を向上させるオンボーディング実践例入社前に大切な5つのポイント1.採用ターゲットとなる人物像を、組織内で明確にするオンボーディング施策はあくまで手段であり、重要視すべき目的は組織に早く馴染んでもらい、早期に活躍してもらうことと早期離職を防ぐことです。そのため、大切なことは、採用ターゲットを明確にすることです。必要な人材のキャラクターや、持っていてほしいスキルをリスト化しましょう。どんな人柄であれば組織に馴染みやすく、活躍しやすいでしょうか。どんな価値観の人材であれば自社の文化に合致し、離職しにくいでしょうか。すでに自社で活躍している社員たちを分析し、採用基準を言語化しましょう。この工程が不十分だと、採用後のミスマッチが発生する可能性は高くなります。プログラムの中心になる方には、この段階で現場の従業員と密にコミュニケーションを取ることが求められます。関連記事:採用基準とは?最適な人材を見極めるための設計ポイントや注意点を紹介2.育成プログラムを作成したら、早めに社内で共有する現場の管理職とも相談しつつ、入社後、新入社員に習得してほしい業務やスキルを、「いつまでに」「誰が担当するのか」まで決めて新人研修やOJTのプログラムを作成します。また、定期的なサポート面談やランチ会、相談窓口など、コミュニケーションの場やメンタル的な支援を行うプログラムも決めていきます。新入社員が、上司やOJT担当への不安や困り事も相談できるよう、業務を教える担当と、メンタル支援を行う担当は分けておきます。担当者が対応できなくなった場合の代理を務める方も決めておきましょう。プログラムの決定や社内共有、担当者への依頼は早ければ早いほど良いです。既存社員は通常業務も行いながら、追加でオンボーディング施策に協力してくれるため、急な打診では業務の調整が間に合わなかったり、残業をすることになったりと、快く協力してくれにくくなります。既存社員には早めに内容をシートにまとめて、共有しましょう。3.自社について候補者に明確に伝える自社の経営理念やビジョンをはっきり発信しましょう。そして、候補者が入社後に実際に取り組む業務内容や、どのような役割を期待しているのかも具体的に伝えます。転職という選択肢が身近になった今、入社直後に新入社員が「こんな話は聞いていない」と感じてしまうと、早期離職に繋がる可能性が高まります。企業としても真摯に候補者に向き合い、ポジティブな面もネガティブな面も必要な情報は提供する責任を果たすべきです。実際に、厚生労働省の調査によると、令和5年1年間の転職入職者が前職を辞めた理由トップ3は以下のようになっています。(定年・契約期間満了やその他の理由を除く)男性女性1位職場の人間関係が好ましくなかった職場の人間関係が好ましくなかった2位給料等収入が少なかった労働時間、休日等の労働条件が悪かった3位労働時間、休日等の労働条件が悪かった給料等収入が少なかった参考:令和5年雇用動向調査結果の概況|厚生労働省2位、3位に関しては採用活動の過程で事実を正しく伝えて候補者の納得を得られていれば離職理由とはなりにくかったでしょう。採用がゴールではなく、定着し活躍してもらわなければいけません。現場の実情や実際の労働条件を取り繕わず伝えましょう。4.リファレンスチェックで候補者の本質を把握しておく入社前のオンボーディング施策は、面接や内定後のやり取りを通して企業に対する信頼を醸成したり、入社後の活躍意欲を高めるフェーズとなります。そのために、上記の3で挙げたポイントが大切になってきますが、候補者がどのような労働条件に重きを置いているのかや、気になることをはっきり聞ける人柄であるのかなどは、面接の短時間では見極めが難しく、候補者にとって適切な情報が何か判断しかねるでしょう。そこで、中途採用であれば採用フローの中にリファレンスチェックを組み込むことがポイントになります。リファレンスチェックとは、候補者と一緒に働いたことのある第三者から、候補者の働きぶりや性格を取得することです。例えば最終面接前にリファレンスチェックを挟んでおけば、最終面接時に自社の雰囲気や条件といった、候補者が大事にしている部分の情報を追加して伝えられ、フォローを入れやすくなります。内定通知後も、事前にどんなことで悩みやすい候補者かが分かっていれば、採用担当者が適切にコンタクトを取り、信頼関係が築けるでしょう。また、リファレンスチェックで候補者の性格や本質、働きぶりを把握しておくと、入社前の人員配置の検討にも役立ちます。上記でご紹介した離職理由1位の「職場の人間関係が好ましくなかった」に関しても、リファレンスチェックで得た情報から、相性の良い上司やチームと組ませることで回避可能となるでしょう。関連記事:リファレンスチェックとは?基本的な流れや質問内容について解説5.内定者とコミュニケーションの機会を作る先に触れた「入社後ギャップ」を防ぐためにも、入社前に候補者とコミュニケーションの機会を多く作りましょう。例として、内定者インターンシップや、懇親会・座談会の実施が挙げられます。面接担当者に限らず、部門長、直属上司、同部署の社員、他部署でも年齢の近い社員などと話す機会を設けると良いでしょう。会社訪問の機会を作ることも有効です。総じて、候補者が「どのような場所で」「どのような人と」「どのような業務を」することになるのかをイメージできるようにすることが重要です。万が一、この期間で内定者が期待値とのギャップを感じ、受け入れ難いと感じた場合、内定辞退が発生する可能性もあります。残念なことですが、入社後の早期離職に比べ、内定者・企業双方にとって傷は浅く済みます。しかし内定辞退は起こらないに越したことはないので、ポイント1,3でご紹介した方法で、自社にマッチした候補者に内定を出し、リファレンスチェックで得た情報を活用して採用担当者からフォローを入れていきましょう。入社後に大切な5つのポイント1.教育方針を新入社員と共有する作成しておいた教育プログラムを基に、新入社員に期待する役割や取得して欲しい業務を伝えましょう。「なんのためにこの学習や作業をやらされているのか分からない」という状況は、モチベーション低下を招きます。最初に目標や目的を伝えておくことでそのような疑念を払拭し、モチベーションの低下を防ぐことができます。新入社員にとって入社直後は不安と同時に、働く意欲も高まっているタイミングなので、成長した先のキャリアビジョンを伝えることも有効です。2.短・中・長期的な目標を明確にする長期目標に対するマイルストーンを設定し、共有しておけば、新入社員は1歩ずつ成長している実感を得ることができ、次の小目標に向かって正しい方向の努力を積み重ねられます。例えば実績や経験が豊富な中途新入社員でも、新しい環境ですぐに順応することは簡単ではありません。頑張ればクリアできるような目標を段階的に設定することで、新入社員のモチベーションをうまく保てるように心がけましょう。また、「この条件を達成したら主任に昇進」「この資格を取得したら給与アップ」といった等級制度や評価制度、給与制度等がある場合は、それらがモチベーションの向上に繋がる場合があります。「いつまでにこの等級になろう」という具体的な目標があれば、上司や先輩社員も目標の達成条件が明確に共有できているため、新入社員の目標達成をサポートしやすくなります。中途入社者で採用活動時にリファレンスチェックを行っていた場合は、レポートからどんな仕事で成果を出しやすい人物なのか把握することが可能です。採用担当者はレポートの内容を事前に現場の上司に共有しておきましょう。上司は、現場に配置された直後の短期的なマイルストーンとして、「本人が成果を出しやすい仕事での達成」を設定しておきます。初期に任せる仕事を見極め、自社での成功体験を得やすくすると良いでしょう。成果が出ることで周囲から認められ、早くチームに馴染むことができます。3.フィードバックを怠らない新入社員が取り組む業務へのフィードバックを定期的に行うことも大切です。直属の上司と一緒に現状を振り返り、できていることと今後取り組むべき課題を明確にします。頻度は週に1度を目安に、30分程度の時間で行うのが良いでしょう。フィードバックを丁寧に行うことで、業務面における新入社員のリアルタイムの悩みや課題に寄り添うことが可能です。もし、フィードバックを行う側の社員が、マネジメントやフィードバックの仕方に不安を感じている場合、企業がサポートする必要があります。例えば1on1研修、フィードバック研修といった管理職向けの研修を導入し、正しくフィードバックができるようになることで、新入社員は安心して上司についていけるでしょう。また、リファレンスチェックを実施していた場合、上司は中途入社者のレポートから将来的なキャリアビジョンを把握できているでしょう。上司はそれを踏まえ、本人の望むキャリアビジョンに繋がるフィードバックをすることで、モチベーションを高めることが可能になります。4.フラットなコミュニケーションの機会を多く作る業務に関してだけではなく、何気ない会話を楽しめるような場所を作りましょう。社員の中に共通の趣味を持つ方や他部署の年齢が近い方との交流を深めやすい場所や機会は、新しい環境で働く新入社員が抱える不安を和らげてくれるでしょう。歓迎会やランチ会をうまく使うと効果的です。オフィスの一部に談話スペースやリフレッシュスペースを設けることで、休憩時間のコミュニケーションが生まれやすくなります。リモートでの勤務が中心となっている組織や社員は、オフラインイベントの参加や実施が難しい場合もあります。Web会議ツールを用いたリモートランチ会やリモート飲み会を実施したり、ビジネスチャットツールに雑談やちょっとした相談ができるチャンネルを用意したり、離れていても組織の一員として受け入れられていると感じられる取り組みを行いましょう。5.メンター制度など、メンタル面での支援策を導入するメンターとは、社内の人間関係についての悩みに寄り添い、心理的な面でのサポートを担当する方のことを言います。必ずしも同部署の上司である必要はなく、むしろ他部署の人の方が気兼ねなく話せるということもあります。新入社員と立場の近い入社3〜5年目の方が適任でしょう。メンターにも相性の良し悪しがありますので、先にご紹介したリファレンスチェックを実施している場合は、レポートの結果を基に相性の良い先輩社員をメンターにつけると、悩みを聞き出しやすくなります。併せて採用担当者はメンターに事前にレポートの内容を共有しておきましょう。メンターはレポートの結果から、どんなことに悩みやすい性格なのか、また、それを他の人に打ち明けられる性格なのか、などの新入社員の人物像を把握できます。ケアが必要な面が分かることで、早期離職を防ぎやすくなります。また、1人のメンターを固定する場合、メンターへの不満や困り事を抱えてしまう可能性がある上に、メンターに選ばれた特定の社員だけに負担が集中してしまうことがあります。交代でメンターとなる仕組みを作っておくと安心でしょう。以上の10のポイントを意識してオンボーディング施策を実行することで、先に挙げたメリットを最大化できます。組織全体を巻き込むのは容易ではないですが、プログラムが確立して企業文化として根付けば、人材不足や早期離職の問題も解消されていくでしょう。企業の採用活動について悩んでいる方にとって、この記事が何らかのご参考になれば幸いです。リファレンスチェックならback checkオンボーディング施策の目的や実施方法、実施にあたってのポイントをご紹介しました。新入社員の早期活躍と定着化という目的を忘れず、自社にとって適切な手段を選んで実行するようにしましょう。また、オンボーディングの精度を高める上では、中途採用であればリファレンスチェックの活用がポイントになってきます。採用時に一度候補者のリファレンスチェックレポートを取得しておけば、入社前から定着までのオンボーディング期間に繰り返し活用することが可能です。レポートを基に個々の新入社員に寄り添ったオンボーディング施策を行うことで、早期活躍と定着化がより叶いやすくなります。株式会社ROXXが提供するオンライン完結型のリファレンスチェックサービス「back check(バックチェック)」であれば、候補者の情報を登録するだけでレポートを取得することができるため、採用活動やオンボーディング施策で忙しい人事部門でも低コストで効率的にリファレンスチェックを実施可能です。オンボーディング施策の精度をあげ、採用した中途入社者の早期活躍の実現のため、ぜひback checkの導入をご検討ください。