コンピテンシー面接とは?従来の面接との違いや取り組み方、質問例まで徹底解説
この記事でわかること
・コンピテンシー面接と従来の面接の違い
・コンピテンシー面接のメリット・デメリット
・コンピテンシー面接の実施方法・質問例
以前より転職が一般的になってきた昨今では、企業とマッチする人材をいかに採用できるかが重要なテーマとなっています。企業にとって最適な人材を採用できるかどうかは、面接のやり方にかかっています。
今までの面接には、面接官の主観的な判断によるものが多かったのですが、その面接手法に限界を感じている企業も増えています。企業にとって最適な人材を効率よく採用するために、多くの企業が注目しているのが「コンピテンシー面接」です。
本記事では、ミスマッチを減らすために効果的な、コンピテンシー面接の特徴や具体的な実施方法について分かりやすく解説します。面接の方法についてお悩みの場合は、ぜひ参考にしてみてください。
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本資料は、back checkの概要説明から、特徴、実績まで網羅された内容です。従来の採用手法以外の方法で面接の精度を上げたい、採用ミスマッチを防ぎたいという採用担当者さまにおすすめです。

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目次
- コンピテンシー面接とは?
- コンピテンシー面接と従来の面接の違い
- コンピテンシー面接を実施する目的とその背景
- 採用精度を向上させ、成果を出せる人材を確保する
- 採用ミスマッチによる早期離職の防止
- 公平性の確保
- コンピテンシー面接のメリット
- 候補者の考えや本質を見極めやすい
- 企業との相性を確認できる
- 学歴や経歴などに惑わされずに、候補者の適性を見抜くことができる
- 採用判断のばらつきがなくなる
- コンピテンシー面接のデメリット
- モデルにする社員のアウトプット次第で指標が変わる
- コンピテンシーモデル作成までに時間が必要
- コンピテンシーモデルが社員の中に存在しないと、企業が求める人物像の設定が難しい
- コンピテンシー面接の実施方法・質問例
- 1.コンピテンシーモデルを作成する
- 2.コンピテンシーレベルを理解する
- 3.スコアリングの準備
- 4.コンピテンシー面接で効果的な質問を作成する
- 5.評価シートを作成する
- 6.コツを意識して面接を実施する
- まとめ
コンピテンシー面接とは?
「コンピテンシー面接」とは、社内で高い成果を出す人に共通する行動特性を分析し、自社が求める適性があるかどうかを確認する面接手法です。「コンピテンシー(competency)」には行動特性や思考性という意味があり、コンピテンシー面接は従来の面接では分からない候補者の思考や行動の傾向を明らかにしてくれます。
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コンピテンシー面接は、何らかの「結果」に至るまでの行動や思考などの「原因」について時系列的に質問することにより、行動の意図や効果を具体的に確認するためのものです。候補者が合理的に行動できるか、自律的に業務を遂行できるかなど、候補者の資質をさまざまな観点から確認できます。コンピテンシー面接で分析できる代表的な要素は下記のとおりです。
パーソナリティー
マネジメント資質
ストレス耐性
上下関係への適性
コンピテンシー面接では、業務遂行に必要な論理性や冷静さ、ビジネスマナーやチームワークに加えて、十分なストレス耐性を備えているかどうかも判断できます。自社に相応しい人材かどうかを総合的に判断できる、優れた面接手法だと言えるでしょう。本記事では、コンピテンシー面接についてさらに深く掘り下げていきます。
コンピテンシー面接と従来の面接の違い
コンピテンシー面接は、従来の面接とはさまざまな点で異なります。それぞれの面接手法の判断材料やスタイルを比較してみましょう。
従来の面接 | コンピテンシー面接 | |
質問の内容 | 「強み」「将来のビジョン」など応募者の主観的な自己評価を回答させる内容。 | 応募者の過去の具体的なエピソードや行動に基づく行動ベースの具体的な質問。 |
評価の基準 | 外見や話し方、質問への切り返し方などから、面接官の主観で判断する。 | 質疑応答により明らかになる候補者の行動特性と、事前に設定された明確な基準を照らし合わせて判断する。 |
面接の流れ | 面接官のスタイルにより異なり、柔軟性がある。即興的な質問やフリートークの場合もある。 | 構造化されており、一貫性のある質問が行われる。 |
公平性 | 面接官の経験やスキル、好みや相性に左右され、バイアスが発生しやすい。 | 標準化された質問により、全応募者を平等に評価できる。 |
再現性 | 「なんとなく人柄が良さそう」「ハキハキして仕事ができそう」など合否の基準が曖昧なため、一度採用に成功しても再現性が低い。 | 全面接官が一貫した評価基準を持っているため、再現性が高い。 |
採用後の適応 | 面接官の見極め次第でミスマッチが発生する可能性がある。 | 職務適性の高い人材を採用できるため、定着率が向上する。 |
従来の面接では、第一印象や質問に対する応答内容、学歴や経歴などの表面的な情報から候補者を確認します。面接の進め方としては、面接官が選考書類の内容を元に質問をして、候補者が答えるという形式が一般的です。この方法は、面接官との相性により判断のバイアス(偏り)やミスマッチが起きやすく、早期退職につながりやすいことが問題です。
候補者の自己PRで判断することになるため、実力が伴っていなかったり、職務適性が低い場合でも、話し上手な人材が採用される可能性があります。
また、面接官からの質問は即興的な質問になることも多く、例え一度優秀な候補者を採用できることがあっても、再現性がないため次回以降の採用成功に繋がらない懸念があります。
一方でコンピテンシー面接では、思考性や行動特性、スキルや能力など本質的な情報から候補者の適性を確認します。つまり、業務遂行に必要な力を備えているかが採用の判断基準です。面接は面接官と候補者が会話をするように進めます。候補者の適性を正しく確認できるため、ミスマッチが起こりにくく、入社後の離職率の低下につなげることができます。
候補者は質問にあわせ特定の条件下での自身の行動を振り返り、その行動理由も含めて事実を答えるため、アピール力が低い候補者でも職務遂行能力が高い人材を見つけやすくなります。
ただし、インタビューのように行動内容を掘り下げていくことになるため、面接官はインタビュアーとしての力が必要になります。
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コンピテンシー面接を実施する目的とその背景
海外で導入が始まったコンピテンシー面接は、コンピテンシー面接の関連書籍も出版され日本でも徐々に注目されていき、実施する企業が増えています。
なぜコンピテンシー面接が実施されるようになったのでしょうか。コンピテンシー面接を実施する主な目的と、その背景を3つみていきましょう。
採用精度を向上させ、成果を出せる人材を確保する
主な目的の1つ目は採用の精度向上です。
コンピテンシー面接であれば面接官の主観や勘といったものに頼ることなく、候補者が職務で必要とされる能力やスキルを実際に持っているかを正確に判断することが可能です。そのため、従来の面接方法より、採用した人材が自社で活躍してくれる確率が高くなります。
採用精度の向上が必要になった背景には、近年の労働人口の減少があります。
かつての日本では、採用における「面接」の重要性はあまり高くありませんでした。労働人口が多かったため人材が豊富だったことや、新卒社員への画一的な教育で企業が十分な成果を達成できていたことなどが理由です。「大量採用した中から活躍人材が生まれれば良い」という考え方でも、十分に企業の採用活動は成立していました。
しかし、現在は労働人口が低下しており、採用市場では人材の取り合いが激化しています。そのため、量よりも質にこだわり、優秀な人材をいかに採用できるかが企業の大きな課題となっているのです。
採用ミスマッチによる早期離職の防止
主な目的の2つ目は早期離職を防止することです。
実際に職務を遂行できるかどうかを重視したコンピテンシー面接を行うことで、入社後のパフォーマンス不足や文化的な不一致による離職を減らすことが可能になります。
これには、候補者が面接時に自分をより良く見せようとしすぎてしまう傾向に採用担当者が悩まされてきた背景があります。
従来の面接方法では、候補者は内定を勝ち取ろうと、好印象を与えることに注力してしまいがちです。そのため、事実より誇張して自己PRを行うこともしばしば起こります。
もし、面接官は候補者の誇張された実績を信じ採用したとすると、実際に職務を遂行し切るだけの十分な能力がないため、任される仕事と能力にミスマッチが起こります。仕事がこなせず、早期離職に至ってしまえば、せっかくかけた採用コストが無駄になってしまいます。
しかし、事実を基に深掘りしていくコンピテンシー面接では嘘や誇張を貫き通すことは難しく、候補者の本当の能力を見極めやすくなります。また、過去の成功体験をコンピテンシー面接で聞き出せた場合、候補者は自社の仕事でも同じように考え行動し、仕事を成功に導いてくれると期待できます。そのため、企業側の期待値と本人の実力にギャップが生まれにくいと考えられるコンピテンシー面接に注目が集まるのです。
公平性の確保
主な目的の3つ目は公平性の確保です。
コンピテンシー面接では事前に設定した評価基準に基づいて応募者を比較するため、バイアスが少なく、公平性が高いと言えます。バックグラウンドの異なる多様な候補者であっても公正に評価できます。また、全候補者に同じ質問をすることで、一貫性のある評価が可能です。
この背景には、政府からダイバーシティの推進や、公正な採用選考の実施・就職差別の防止などが呼びかけられていることが関係しています。
ダイバーシティは企業が発展していく中で必要なことですが、従来の面接方法では、面接官自身の想像の範疇を超えたバックグラウンドを持つ候補者が応募してきた時に、対応しきれず、「よく分からない人だから」と偏見を理由に不採用にしてしまう可能性があります。差別と捉えられる場合もありSNSなどで拡散されることがあれば、公正な採用を行わないコンプライアンスの観点で問題がある企業と見なされるかもしれません。
しかしコンピテンシー面接であれば一貫して行動に着目して質問を行い評価することができるので、採用・不採用の理由も明確です。偏見や差別なく、公平性を保つことができます。
コンピテンシー面接のメリット
コンピテンシー面接を導入すると、下記4つのメリットがあります。
候補者の考えや本質を見極めやすい
企業との相性を確認できる
学歴や経歴に惑わされず適性を判断できる
採用判断のばらつきがなくなる
本章では、上記それぞれのメリットについて詳しく解説します。
候補者の考えや本質を見極めやすい
コンピテンシー面接は、候補者の行動や考え方などから、本質を見極めやすいことが最大のメリットです。コンピテンシー面接は、面接官と候補者が会話を行うように進め、その中で質問を繰り返して候補者の思考や行動の特性を探っていきます。そのため、表面的ではない候補者の本質を見極めることが可能です。
従来の面接では、基本的には面接官が候補者に対して質問し、その回答内容で適性を判断します。しかし、どの企業も質問内容が似通っていて事前の対策も立てやすく、候補者は当たり障りのない回答をするため本質を見極めるのは困難です。コンピテンシー面接は会話形式で進めるため、誇張や矛盾を見抜きやすくなります。
企業との相性を確認できる
コンピテンシー面接は、自社で活躍できる人材の特性を持った候補者を採用するための面接です。例えば、自社が求めるような自律性や問題解決能力、ストレス耐性やマネジメント資質があるかなど、自社の尺度で候補者の適性を確認できます。そのため、自社とマッチする人材を採用しやすくなり、離職率の低下につなげることも可能です。
どのような人材が適切かは企業によって異なります。従来の面接は画一的な手法なので、平均的な能力値の判断はできても、自社で活躍できる人材かどうかは未知数でした。せっかく採用してもすぐに離職となってしまうと、企業と人材、双方にとって良くない結果となってしまいます。コンピテンシー面接を導入すれば、効率的かつ低コストで優秀な人材を採用しやすくなるでしょう。
学歴や経歴などに惑わされずに、候補者の適性を見抜くことができる
コンピテンシー面接では、学歴や経歴といった表面的な情報に左右されずに、候補者の適性を見抜くことができます。従来の面接では得られる情報が限られていたため、どうしても学歴や経歴で判断せざるを得ない場面もありました。しかし、こうした情報は本来ひとつの指標に過ぎず、適性を見抜く基準としては不十分です。
もちろん、学歴や経歴も採用判断の重要な指標ではありますが、高学歴だからといって自社での業務遂行能力も高いとは限りません。コンピテンシー面接を行えば、候補者の思考や行動の傾向をつかめます。実際に入社して活躍できるかという観点で判断できるので、今までもよりも候補者の適性を正確に見抜けるようになります。
採用判断のばらつきがなくなる
コンピテンシー面接では、面接官による判断のバイアスを排除しやすいこともメリットです。従来の面接手法では、第一印象や「好き」「嫌い」という感情の影響を受けて、面接官によって判断の偏りが生じることがありました。年齢や性別など目に見えやすい表面的な要素に左右されて、適性を正確に判断しづらいことも問題です。
しかし、コンピテンシー面接は「モデルとなる社員の行動特性」を基準にするため、明確なものさしで候補者を確認できます。例えば、外見や話し方ではなく、主体性や創意工夫などは業務において本質的に重要な指標です。その結果、優秀な人材を感情で不採用としてしまうことなく、合理的な判断で適切な人材を採用できるようになるでしょう。
コンピテンシー面接のデメリット
コンピテンシー面接には下記のようなデメリットもあるため、事前の対策が必要です。
モデルにする社員のアウトプット次第で指標が変わる
コンピテンシーモデル作成までに時間が必要
コンピテンシーモデルが社員の中に存在しないと困難
それぞれの重要なポイントと、デメリットを軽減するための対策方法を解説します。
モデルにする社員のアウトプット次第で指標が変わる
コンピテンシー面接は、モデルとする社員の行動特性を基準にして採用の判断軸を設定します。言い換えれば、モデル社員のアウトプット次第では指標が変わり、適切な判断ができない可能性もあるということです。特に、モデル社員の行動特性を規定する要素は、本人自身が「当たり前」だと感じておりわざわざアウトプットしないため、抽出が困難なケースも少なくありません。
勤務中のコミュニケーションやマネジメントなどの傾向は、他の社員も普段から目にする機会が多いため判断は容易です。しかし、優秀な社員は勤務時間外における行動が特徴的なことがあり、そうした要素は見落としてしまいがちです。例えば、通勤時間中に時事問題の情報収集をしている、プライベートでストレスを解消する趣味があるなどです。
そのため、モデル社員へのヒアリングは細かいところまでしっかり行い、行動特性を左右する要素を把握しておくことが重要です。
コンピテンシーモデル作成までに時間が必要
コンピテンシー面接を行うためには、自社で活躍できる人材を基にした「コンピテンシーモデル」の作成が欠かせません。しかし、コンピテンシーモデルの作成には時間と手間がかかります。誰をモデルにすべきかを探し、実際に自社で活躍している人材に細かなヒアリングを行って行動特性を洗い出すといった、調査や分析を行う必要があります。
前述したように、ヒアリングが不十分だと正確な判断基準を設定できず、コンピテンシー面接の効果を十分に得られないこともあります。しかし、コンピテンシーモデルの作成に成功すれば、企業が得られるメリットは計り知れません。企業とマッチする人材を採用するために、時間と労力をかけてでもチャレンジする価値があります。
コンピテンシーモデルが社員の中に存在しないと、企業が求める人物像の設定が難しい
そもそもコンピテンシーモデルとなる人材が企業に存在しない場合は、コンピテンシー面接を行うのは困難です。実在する人物にヒアリングができないため、企業が理想とする人材像をゼロベースで作り上げる必要があります。ある程度は実績や経験で判断できますが、どうしても主観が入り込んでしまい、正確なモデルを作成できないこともあります。
モデルケースがなければコンピテンシー面接の実施は難しいので、小さな能力からでもモデルを発掘していくことをおすすめします。少しでも理想に近い人材をモデルとしてヒアリングを行い、そのうえで理想的な行動特性を組み込んで、コンピテンシーモデルを徐々に構築していきましょう。試行錯誤の時間や手間はかかりますが、十分に実現可能な手法です。
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コンピテンシー面接の実施方法・質問例
コンピテンシー面接を実施する際は、下記4つのステップごとに進めていきましょう。
コンピテンシーモデルを作成する
コンピテンシーレベルを理解する
スコアリングの準備
コンピテンシー面接で効果的な質問を作成する
評価シートを作成する
コツを意識して面接を実施する
コンピテンシー面接を成功させるために重要なポイントを、分かりやすく解説します。
1.コンピテンシーモデルを作成する
コンピテンシー面接を行うにあたって、評価項目を決めなければなりません。
評価項目の決め方は、自社のハイパフォーマーをモデルとして、コンピテンシーモデルを作成していくと良いでしょう。
ここでのハイパフォーマーとは、今回採用を検討している部門・部署で高い成果を出している、いわゆるエース社員のことを指します。
高い成果を出している成績上位20%の社員をモデル社員とし、それぞれの行動特性を書き出していきましょう。ストレス解消方法や個人的な勉強など、業務時間外の行動もヒアリングします。
そうはいっても、仕事をする上での行動を1つ1つカウントするとなると、細かいものまで含めたら膨大な数になってしまいます。そこで、行動特性を書き出す際のヒントとして、コンピテンシーディクショナリーを活用すると良いでしょう。コンピテンシー・ディクショナリーとは、業種や職種問わず活用できるコンピテンシーを6領域20項目で体系的に整理したものです。
各モデル社員の行動特性を集めるうち、徐々にハイパフォーマーが共通して持っているいくつかの特性に気づくかと思います。それこそが注目するべき評価項目群であり、自社のコンピテンシーモデルです。
評価項目は、コンピテンシーディクショナリーの項目に必ずしも当てはめる必要はなく、「この部署においてはハイパフォーマーの多くがリスクマネジメントを強く意識している」という共通点を見つけたのであれば、「リスクマネジメント」を評価項目としたり、さらに分解して「リスク感知能力」「リスク分析力」「危機対応能力」などを評価項目としても良いでしょう。
■コンピテンシー・ディクショナリー
コンピテンシー領域 | コンピテンシー項目 |
1.達成・行動 | 達成志向 |
2.援助・対人支援 | 対人理解 |
3.インパクト・対人影響力 | インパクト・影響力 |
4.管理領域 | 他者育成 |
5.知的領域 | 分析的思考 |
6.個人の効果性 | 自己管理 |
出典:ライル・M.スペンサー, シグネ・M.スペンサー著 ; 梅津祐良, 成田攻, 横山哲夫訳.コンピテンシー・マネジメントの展開 : 導入・構築・活用.生産性出版. 2001
2.コンピテンシーレベルを理解する
コンピテンシー面接を行うために、続いて「コンピテンシーレベル」について理解しておく必要があります。コンピテンシーレベルとは、行動特性の段階を示す指標です。川上真史と斎藤亮三による書籍「コンピテンシー面接マニュアル(弘文堂)」によると、コンピテンシーレベルは下記5段階に分類されます。
レベル1:受動行動
レベル2:通常行動
レベル3:能動・主体的行動
レベル4:創造、課題解決行動
レベル5:パラダイム転換行動
基本的には、数値が高いほど行動特性のレベルが高いことを示します。まずは、コンピテンシーモデルとなる社員のコンピテンシーレベルを把握しましょう。そのうえで、候補者がどのレベルに属しているかを判断して、採用の判断材料にします。本章では、コンピテンシーレベルについて詳しく解説します。
レベル1:受動行動
レベル1の「受動行動」はいわゆる「受け身」の行動特性を示します。上司や先輩の指示がなければ動こうとせず、自身でアイデアの発信や情報収集を行うこともないことが特徴です。主体性が欠けている傾向がある社員は、このタイプのコンピテンシーレベルに該当すると考えられます。
例えば、他のコンピテンシーレベルを持つ社員が、新たなシステムに関する情報収集やアイデア創出に前向きである一方で、レベル1の社員は上司から指示されるまで動きません。また、自身が追い込まれてから何らかの行動を取り始めることも、レベル1に該当する社員の特徴です。
レベル2:通常行動
レベル2の「通常行動」はいわゆる「普通の社員」のような行動特性を示します。最低限の通常業務をこなすことはできますが、創意工夫は得意としないため独自の意図は見られません。レベル1と同じく上司の指示を待ちますが、指示された業務をこなせる能力は十分にあります。
通常行動のコンピテンシーレベルに該当する社員は、「ミスなくこなそう」という意欲があるため、レベル1の社員よりは業務に対して前向きだと言えるでしょう。ただし、創意工夫は得意ではないため、新たなアイデアを創出したり、積極的な情報収集を行ったりすることはありません。
レベル3:能動・主体的行動
レベル3の「能動・主体的行動」はいわゆる「自発的」な行動特性を示します。明確な理由から自身で目的を設定して、課題解決のために能動的に動くことができる社員です。既成概念の範囲内で実績を上げるための判断基準があり、必要なものを自分で考えて用意できます。
例えば、「社内で新たなシステムを導入するらしい」という情報を得たときに、すぐに研修会や勉強会に参加したり情報を集めたりする社員はレベル3に該当します。ただし、あくまで行動範囲は既存の枠組み内にとどまるため、独自の工夫で状況を変化させることは苦手です。
レベル4:創造、課題解決行動
レベル4の「創造、課題解決行動」はいわゆる「創造的」な行動特性を示します。自発的に考えて独自の工夫を加えることにより、周囲の状況を変化させることができる社員です。課題の発見や解決の能力が高く、独創的なアイデア創出で高い成果を生み出せることが特徴です。
例えば、レベル4の社員が新人教育を任された場合は、教育の効率化を図るためのシステム導入のアイデアを出します。全体的な能力が高く、既存の概念に縛られずに新しい提案ができるため、企業の生産性や機動性を向上させるような重要な役割を担うことが多いことも特徴です。
レベル5:パラダイム転換行動
レベル5の「パラダイム転換行動」はいわゆる「独創的」な行動特性を示します。独創的なアイデアを生み出し、リーダーシップを発揮しながら組織全体に有益な状況を作り出すことができます。固定概念を捨てて、新たな概念や価値を生み出すようなパラダイムシフトを起こせることが特徴です。
大規模な改革を起こせる社員はレベル5に該当します。例えば、AI(人工知能)やクラウドコンピューティングなどの導入により、必要人員を減らしたり徹底的な効率化を図ったりするなどです。ただし、企業によってはこうした人材へのポジションの振り分けが難しいこともあるため、採用を検討する際は注意が必要です。
3.スコアリングの準備
コンピテンシー面接では、各評価項目に対してスコアリングを行い評価していきます。そのため、ステップ1で抽出したそれぞれの評価項目に対し、ステップ2でご紹介した5段階のレベルをあてはめ、具体的に各レベルで求める内容を設定していきましょう。
具体的にレベルの定義を設定しておかないと、例えば「7割くらいこの行動特性があるな」と感じた時に、ある面接官は「3」と付け、また別の面接官は「4」と付けるかもしれません。このようなことがあっては結局従来の主観評価と変わりません。そのため、このステップで「こういうことが出来ていたら3」と明確に定義することで、誰が読んでも正しくスコアリングできるようにします。
また、各評価項目の中には、モデル社員が全員レベル4〜5だったような、特に重要視したい項目もあれば、レベルにバラつきのある項目もあるかと思います。例えば、「コミュニケーション能力:40%」「問題解決力:30%」「リーダーシップ:20%」「柔軟性:10%」といったように、あらかじめ評価項目に重み付けを行っておくことで、より自社に合った人材が高いスコアとなるように設計できるでしょう。
4.コンピテンシー面接で効果的な質問を作成する
コンピテンシー面接では、候補者の資質や適性を見抜くことができますが、そのメリットを最大限に活かすためには効果的な質問を用意しておく必要があります。コンピテンシー面接に最適な手法が「STAR面接」で、下記4つの要素から構成されていることが特徴です。
Situation(状況)
Task(課題)
Action(行動)
Result(結果)
STAR面接はGoogleが採用していることで有名な手法です。ひとつのテーマに対して「状況→課題→行動→結果」という順番で詳しく掘り下げていくことが特徴で、候補者に該当するコンピテンシーレベルを客観的に判断できます。上記4つの要素について、具体的にどのような質問をすればいいか分かりやすく解説します。
Situation(状況)
最初にテーマについての「Situation(状況)」を確認します。課題を洗い出したり問題を解決したりする際は、まず現状を認識することが重要です。状況についてしっかり把握して、具体的に説明できるかを下記のような質問で確認しましょう。
その組織の中では、あなたはどのような役割でしたか?
どのような組織に属し、どのようなチーム体制でしたか?
あなたは組織内で、責任や意思決定の権限を持っていましたか?
Task(課題)
次に候補者が認識した「Task(課題)」を確認します。具体的な行動を起こす前に、課題点や改善策について分析する必要があります。業務遂行に不可欠な問題解決力を判断するために、下記のような質問をしてみましょう。
働いたときに、どのような課題を見つけましたか?
解決のために、どのような目標を掲げましたか?
問題発生や課題発見のきっかけは何ですか?
どのような理由で問題に気づいたのですか?
Action(行動)
さらに、候補者が取った「Action(行動)」についても確認しましょう。自身が取った行動について正しく認識して報告することは、業務改善やノウハウの蓄積のために欠かせません。候補者の業務遂行力について、下記のような質問で確認してみましょう。
問題を解決するために、具体的にどのようなことを実践しましたか?
その課題に対して、どのような方法でアプローチしましたか?
実際に行動したことを、順番に話してもらえますか?
Result(結果)
最後に課題解決の「Result(結果)」への認識を確認します。仕事で得た経験を次に活かすためには、課題解決の過程や結果について正しく認識することが重要です。下記のような質問で、候補者の結果に対する認識力を判断しましょう。
課題をクリアすることにより、得たものは何ですか?
課題のうち、どれくらい解決できましたか?
計画遂行時に、問題点はありましたか?
周囲の反応や評価は、どのようなものでしたか?
課題解決後に、どのような変化がありましたか?
STAR面接での深掘りの仕方を踏まえ、各評価項目ごとにあらかじめ具体的な質問文に落とし込んでいきましょう。上記でご紹介したように、S,T,A,Rの各段階でコンピテンシーを評価することも出来ますし、重要な評価項目であれば以下のようにS,T,A,Rの質問全体を通して1つのコンピテンシーを評価するのも良いでしょう。
例えば適切な優先順位を付ける力を測るのであれば、以下のような質問の流れになります。
S(状況):予期せぬ事態が発生した状況について教えてください。
T(課題):その事態を落ち着けるために、あなたの役割は何でしたか。
A(行動):どのような順で対応しましたか。
R(結果):その結果、事態は収束しましたか。どのような成果が得られましたか?
5.評価シートを作成する
ここまでの4つのステップで決めた内容を、面接官が実際の面接で使えるように一覧化しましょう。
テーブル形式で、「評価項目」「S,T,A,Rの質問文」「S,T,A,Rそれぞれの回答内容記録欄」「コンピテンシーレベル」「候補者のレベルスコア記入欄」「コメント欄」の行をそれぞれ用意し、全ての面接官に共有しておきましょう。
他の面接官にもコンピテンシー面接の目的を共有し、従来の面接とは異なる手法であることを理解してもらっておく必要があります。
6.コツを意識して面接を実施する
コンピテンシー面接を実施するときは、面接官が正しい意識をもって候補者と向き合うことが重要です。そのために、下記4つのポイントを意識するようにしましょう。
誘導質問は避けて、候補者を公平に判断することを心掛ける
第一印象や面接官の好みなどの感情で、フィルターをかけない
事前に設定した採用の判断基準のみを基準にして、採用の判断を行う
具体的な言葉や数値を引き出せるような、効果的な質問をする
コンピテンシー面接の重要なポイントは、具体的な言葉や数値を引き出すことです。問題認識や解決策を模索する過程や、候補者が果たした役割や結果はもちろん、自発性や創造性も確認することが重要です。
また、コンピテンシー面接は採用の判断のばらつきを防ぎやすいことが特徴ですが、採用担当者全員がコンピテンシーモデルと採用の判断指標について理解しておくことも大切です。個人的な感情に左右されず、候補者を客観的に判断しましょう。
まとめ
コンピテンシー面接は、自社にとって理想的な行動や思考の性質を持つ人材を採用しやすくするための面接手法です。
導入までに時間と手間はかかりますが、離職率と採用コストが下がるため長期的にはリターンが大きく、導入する価値が非常に高い面接手法です。
優秀な人材の採用に課題を抱えているのであれば、ぜひコンピテンシー面接の導入を検討してみましょう。
ただし、コンピテンシー面接ではあくまで「候補者本人が自覚している行動特性」しか見極めることができません。候補者と一緒に働いたことのある第三者から、人柄や働きぶりをヒアリングする「リファレンスチェック」を併用することで、採用のマッチング精度をさらに高めることができるでしょう。


back check magazine 編集部
リファレンスチェック/コンプライアンスチェックサービス「back check」が手がけるコラム「back check magazine」の編集部です。採用担当のみなさまに向けて、役に立つ情報を発信していきます。










