目次経歴詐称する人物を雇用することのリスク経歴詐称する人物を雇用してしまうと、企業には以下のリスクが伴います。採用してもパフォーマンスが出ないそもそも経歴詐称をして入社した場合、採用判断の根拠となった情報に信憑性がありません。そのため、採用判断時に期待した通りの成果が出せない可能性が高いです。企業の秩序が崩壊する経歴詐称が発覚してからも雇用を継続し、その事実が他の社員に知られてしまった場合、良く思わない人たちからの反発が生じます。企業の秩序が崩れガバナンスが効きにくくなることが想像できます。コンプライアンス上のリスクになる経歴詐称して入社をするような人物の場合、業務においても問題を起こしてしまう可能性が高いです。社内や顧客に嘘をついたりルールを破り企業の信用力やブランドイメージを低下させたりと、コンプライアンス上のリスクにもなります。【お役立ち資料】知らないと危険!身近にあふれる「コンプライアンスリスク」経歴詐称の具体例7つ経歴詐称のパターンはさまざまですが、特に以下の項目についての詐称が多いです。1.学歴学校名を偽る留年・浪人を隠すために入学・卒業年度を偽る中退していたのに卒業したと偽る高卒なのに大卒と偽る大卒なのに高卒と偽る(このような行為は逆学歴詐称と呼ばれます) など2.雇用形態契約社員だったのに正社員だったと偽る派遣社員だったのに正社員だったと偽る など3.在籍期間実際には3ヶ月しか在籍していないのに、1年在籍したと偽る職歴がない期間をごまかすために前職の在籍期間を長くする など4.転職回数4回転職しているのに、2回しか転職していないと偽る など5.免許・資格保有していない免許や資格を保有していると偽るTOEICの点数を偽る など6.年収現在の年収を、実際よりも高く申告する など7.職位・職務一般社員だったなのに、マネージャーと偽る未経験の業務について、「やったことがある」と偽る など【お役立ち資料】「20人に1人はいる、経歴詐称をしている人材の見抜き方」経歴詐称が発覚した場合、懲戒解雇はできる?結論、経歴詐称の内容によって懲戒解雇ができる場合とできない場合があります。経歴詐称の内容は、軽い嘘から違法性の高い重大なものまでさまざまです。そのため、単純な指標で懲戒解雇の可否を判断することできません。懲戒解雇が可能になる一つの基準は「重要な経歴」を詐称したか、です。重要な経歴とは、企業が正確な情報を有していたのであれば雇用契約を締結しなかったであろう経歴をいいます。具体的にどういった詐称内容であれば「重大な経歴の詐称」となり解雇理由となるかは、上記の基準を踏まえて個別に判断されることになります。懲戒解雇できる可能性が高い3つのケース懲戒解雇ができる可能性が高い“重要な経歴”とは何か。一般的には「学歴」「職歴」「犯罪歴」の3つが該当します。ただ、解雇理由となるかどうかは個別に判断されるものですので、これらの項目で経歴詐称があったからと言って必ずしも懲戒解雇が認められるというわけではありません。学歴詐称経歴詐称の中でも、学歴詐称は特に多い傾向にあります。学歴を見る企業が一定数存在するため、中途採用の候補者でも学歴詐称をすることがあるようです。最終学歴によって給与が変わる企業もあり、学歴詐称は「重要な経歴を詐称した」と判断できる可能性が高いです。例えば、日本精線事件では、本来の学歴が採用時に判明していたならば、従業員として採用しなかったであろうと認められ、解雇が有効であるとされています。(大阪地裁 1975.10.31)ただし、例外もあり、企業が採用における学歴の条件を明示していなかった場合や、応募職種におけるパフォーマンスや評価が学歴と関係が無いものについては、解雇が認められない場合もあります。例えば、三愛作業事件は「学歴不問」の求人に対して、大学中退を高卒と詐称したものですが「採用条件については、特に大学在籍者は採用しない旨学歴の上限を画することはせず、むしろ「学歴不問」としたり、また下限についても必ずしも明確ではなかった。そして本件は、このような採用条件の不明確さが重要な場面で影響したと考えられる」として、解雇無効と判断しました。(名古屋地決 1980.8.6)職歴詐称職歴詐称は入社後のパフォーマンスや賃金に影響を及ぼす可能性が高く、重大な詐称と判断できる可能性が高いです。例えば、KPIソリューションズ事件では、システムエンジニアを募集し採用したところ、プログラミングの職務経験が無いにも関わらず職歴を偽っていたことが判明。実際はプログラミングはほとんどできず解雇を有効とされ、企業への損害賠償が認められたという事例があります。(東京地裁 2015.6.2)ただし、求人票に「未経験歓迎」や「経験不問」等の記載をしている場合、職歴詐称があったとしても重要な経歴詐称にはならない場合があります。犯罪歴詐称犯罪歴の詐称は業務の内容に直接影響するか、企業秩序に影響を与える可能性があるかによって重大な詐称と判断できる場合があります。企業が認識しておくべきポイントとしては、刑が確定していなかったり消滅した前科の場合には、履歴書やエントリーシートの賞罰記載欄で申告する義務はないということです。例えば、マルヤタクシー事件ではタクシー乗務員として採用されるにあたり、刑の消滅した前科を秘匿していたが、刑の消滅した前科については、その存在が労働力の評価に重大な影響を及ぼす特段の事情がない限り、告知すべき信義則上の義務はないとして懲戒解雇が無効とされた事例があります。(1985.9.19)上記の判例は一例ですので、実際に個別の事案についてまずは弁護士に相談し、それが「重要な経歴」の詐称に当たるかを判断してもらうのが良いでしょう。経歴詐称は犯罪?基本的に経歴詐称や学歴詐称は、犯罪行為ではありません。しかし、詐称の内容によっては犯罪となり得るケースもあります。経歴詐称で問われる可能性のある犯罪は、以下の通りです。詐欺罪軽犯罪法違反私文書偽造罪民事責任(損害賠償、懲戒解雇など)より詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。関連記事:経歴詐称・学歴詐称は犯罪?詐称に気づいた時の対処法を解説経歴詐称の程度によっては解雇しないという選択肢も経歴詐称はその程度によって懲戒解雇をすることができるとは限りませんし、現在の業務に影響がなく、企業としても許容できる内容であるならば必ずしも懲戒解雇をする必要はありません。ただし、経歴詐称が発覚した際は看過せずに、本人に事実関係の説明と改善を促しましょう。納得のいく説明・反省・改善を継続雇用の条件にしても良いかもしれません。「経歴詐称が発覚したら即解雇を通告する」と規定することも策の一つですが、他の社員を採用するコストを考慮すると、詐称の度合いや反省の度合いによって都度検討するのが良いでしょう。経歴詐称を防ぐ3つの方法経歴詐称を完全に見抜くのは非常に難しいです。候補者が事前にあらゆる準備を講じている場合、その詐称を暴く手段が限られているからです。ただ、採用選考時に経歴詐称をしにくい状況を用意したり、詐称を検知しやすくすることはできます。経歴詐称を防ぐ方法としては、以下の3つが挙げられます。提出してもらう書類の工夫面接時のヒアリング内容の工夫コンプライアンスチェックの実施1. 提出してもらう書類の工夫1つ目は、提出してもらう書類の工夫です。採用選考時に、「必ずこの書類を提出しなければならない」という義務や決まりは存在しません。よって、企業側が欲しい情報を定義し、該当する書類の提出を促す必要があります。提出書類の具体例と確認内容卒業証書:学歴資格やTOEICスコアを証明する書類:保有する資格やその等級やスコア退職証明書、雇用保険被保険者証:在職の有無や期間や退職日源泉徴収票・課税証明書:前職での年収2. 面接時のヒアリング内容の工夫2つ目は、面接時のヒアリング内容の工夫です。選考書類に記載されている内容について少しでも気になる点があれば、面接で深堀りしましょう。特に履歴書の空白期間についてはその期間に何をしていたか・それはなぜかを確認したほうが良いです。また職務経歴書に記載されている内容は、数値レベルまで掘り下げてヒアリングし、本当に経験があるかを確認します。少しでも怪しい点があれば、その内容について深掘りしても良いでしょう。経歴詐称をしている場合は深掘りの質問に対してスムーズな回答ができないことが多いので、経歴詐称を見抜くヒントになります。1点注意をする必要があるのは、犯罪歴については業務を円滑に進める上で必要な範囲でしか情報収集できないという点です。不用意に踏み込んで質問しすぎないようにしましょう。3. コンプライアンスチェックの実施3つ目は、候補者に対するコンプライアンスチェックを実施することです。コンプライアンスチェックでは、公的公開情報・WEB情報・個別調査によって、候補者申告に虚偽の情報がないか、コンプライアンスリスクがないか等を調べる手法のことです。経歴詐称だけではなく、犯罪歴がないか、反社会的勢力に関与していないか、SNSで問題発言をしていないかといった内容も調べることができます。関連記事:コンプライアンスチェックとは?コンプライアンスチェックの必要性を解説【お役立ち資料】サンプルレポート付き!コンプライアンスチェックでわかる採用リスクまとめ経歴詐称と一口にいっても、その内容は軽微な経歴の水増しから重大な経歴詐称までさまざまです。最近はメディアでもたびたび、経歴詐称が明らかになり社会から批判されるような状況を目にしますが、それでも経歴を詐称する人は後を立ちません。転職活動において経歴は大きな判断材料になるため、候補者は少しでも自分をよく見せようとします。そのような力学が働くことは仕方がないことですので、企業は候補者が申告した情報の真偽を見極めるために厳格なチェックを行う必要があります。経歴詐称を見抜くためには、上記で述べた対策のほかに、候補者と一緒に働いたことのある第三者から候補者の情報を得る「リファレンスチェック」も有効です。オンライン完結型のコンプライアンスチェック/リファレンスチェックサービスであるback check (バックチェック)では、コンプライアンスチェックもリファレンスチェックも同時に行うことができます。経歴詐称を未然に防ぎたい企業の採用担当者の方は、是非ご検討ください。