2021年11月10日、「コロナ禍における求心力の必要性」と題してセミナーを開催。プロ経営者として各社の経営に関わるポジションを歴任された、元スターバックスコーヒージャパン株式会社 最高経営責任者、リーダーシップコンサルティング代表取締役社長の岩田 松雄氏にご講演いただきました。新型コロナウイルス感染症を背景に、リモートワークが中心になるなど働き方には大きな変化が生まれました。ポジティブな変化もある一方、組織内でのコミュニケーション不足や生産性への懸念なども増加しています。そのような状況下で人事担当者は、企業成長を支えるために一体何が求められるのでしょうか。ミッション、求心力、人事の3つの視点から、ミッションの実現を達成するための本質理解、マネジメントによる従業員のエンゲージメント向上、採用におけるリファレンスチェックの重要性などについて解説いただきました。講演者プロフィール岩田 松雄 氏リーダーシップ コンサルティング代表/元スターバックスコーヒージャパンCEO1982年に日産自動車入社。製造現場、セールスマンから財務に至るまで幅広く経験し、社内留学先のUCLAビジネススクールにて経営理論を学ぶ。帰国後は、外資系コンサルティング会社、日本コカ・コーラ ビバレッジサービス常務執行役員を経て、2000年(株)アトラスの代表取締役に就任。3期連続赤字企業を見事に再生させる。2005年には「THE BODY SHOP」を運営する(株)イオンフォレストの代表取締役社長に就任。店舗数を107店から175店舗に拡大しながら、売上げを約2倍にする。伝説の創業者、アニータ・ロディックからの信頼も厚かった。2009年、スターバックスコーヒージャパン(株)のCEOに就任。「100年後も輝くブランド」に向けて、安定成長へ方向修正。ANAとの提携、新商品VIA(スティックコーヒー)の発売、店舗内wifi化、価格改定の実行など次々に改革を実行し、業績を向上。日本に数少ない“専門経営者”として確固たる実績を上げてきた。 2012年より約1年間産業革新機構に参画。 2013年にリーダー育成のための(株)リーダーシップコンサルティング設立。2010年UCLAよりAlumni 100 Points of Impactに選出される。(歴代全卒業生37000人から100人選出。92年卒業生では唯一人)ミッションとは「会社の存在理由」である会社が掲げるミッションについて岩田氏は、「ミッションは会社の存在理由」と定義。経営の観点から見ても、会社のミッションと個人のミッションが同じ方向を向いていることが最も良い状態であると示しました。当時のスターバックスコーヒージャパン株式会社(以下、「スターバックス」)では約3万人ものスタッフが在籍し、そのほとんどがアルバイトパートナー。一方で、スタッフ全員がミッションを理解し心から共鳴している状態であるため、「会社もスタッフに対して教育投資ができ、さらに人が辞めない。」といった良い循環サイクルが生まれているといいます。こちらはスタッフ自身がミッションを実現できている状態であるため、モラルがとても高くなり離職率が減っているということになります。また、ミッションは簡単には変わらないものであり、ミッションを実現するための手段として戦略が重要です。「会社の存在理由とは世の中を良くするためにあります。世の中のミッションが利益の最大化になっている場合は間違っており、利益を伸ばすことはあくまで手段であります。」と伝え、世の中の変化に伴って変えるべきものは、ミッションではなく戦略であると述べました。このような戦略を日頃から体現できている会社は世の中多くはない一方で、スターバックスがそうであるように、本質を忘れずに愚直にこれらを成し遂げ続けることができる会社は、長く愛され続ける会社になっていくと受けました。求心力とはどのようなものであるのか世界83カ国3万2,000を超える店舗(本レポート作成時点)を構えている、世界的にも有名なスターバックスの事例を元に綴っていきます。スターバックスはサービス業ではなく「感動経験産業」と岩田氏は位置付けられており、「お客様に感動経験を提供して、人々の日常に潤いを与える」ことをミッションに掲げています。ミッションの実現のためにサービスマニュアルは用意されておらず、一人ひとりがミッションに即した、「お客様の期待を超えるサービス提供」が求められます。また、ミッションの浸透をするために岩田氏は、「大切なメッセージは繰り返し直接伝える」というマネジメントレターをスタッフに送っていました。「あるお店の前で交通事故があり、事故を起こしてしまった女性のドライバーがその場にたちすくんでしまっていたそうです。その様子を窓越しに見たアルバイトパートナーは、マネジメントレターを思い出し、コーヒーを淹れてその女性にそっと差し出し、『これを飲んで心を落ち着かせてください』と伝えました」というエピソードがあったと言います。マニュアルがない中で、アルバイトパートナーがこのような行動をできたことに対し、ミッションが浸透していたからだと振り返りました。このように岩田氏はマネジメントの一つとしても、「道徳、法律、倫理に反しない限り、お客様が喜んでくださることは何でもして差し上げること」をマネジメントレターを通してスタッフに伝えています。ミッションとリファレンスチェックの関係性について「会社の存在意義を日々体現する人が経営において重要であり、人事が会社の鍵を握る」と話した岩田氏。最後の質疑応答ではリファレンスチェックの重要性についても着目しています。質疑応答で上げられた「候補者が企業のミッションに合っているかどうかを、採用ではどのように見極めれば良いですか?」という質問に対して、「リファレンスチェックを実施することでしか分からないです。そもそも面接の場でミッションに合っているか否かを見極めることは難しく、一緒に働いていた人からの声が真実であり大事です。」と答えました。リファレンスチェックは、前職評価といった形であらゆる角度から判断できる情報が多く、採用ミスマッチを低下することができるひとつの手段ではあるが、採用後のオンボーディングにも活用できる点など、活用範囲が広いことにも言及しました。実施する場合と実施しない場合では岩田氏が論じているように、ミッションに合っているかどうかの判断が付きやすくなるものなので、より良い組織を創りあげていくためには、まず候補者のことを深く知ることが重要であると受けました。参加者の実際の声書籍購入しました。リーダーシップについて考えていたところだったので非常に勉強になり、マネジメントのイメージもつきました。岩田さんの書籍も愛読しており、いつもお話から勉強させていただいています。今回も納得感があり非常に勉強になりました。ありがとうございました!実際の経験談などが聞けてとても良い講演でした。また、ミッションの重要性を改めて感じる良い機会となりました。最後に人事や組織マネジメントに関する知見は社外に出てくることが多くありません。自社のやり方が正しいのか、次にどんな課題が出てくるのか分からず不安になっている人事担当者の方、経営者の方は多いのではないでしょうか。「成長企業の人事」は、人事に関するあらゆる課題を紐解き、企業の皆様と学び合いながら、知見を共有し未来に繋ぐ場です。具体的には、登壇イベントやセミナー動画を主体に、先進企業の成功事例やゲストの方をお招きし、向き合った課題、その解決策、先進企業の事例など、皆様のお役に立てるコンテンツをご提供していきます。(文:小原 陸、バナーデザイン:竹下 大樹)