目次中途採用者の4人に1人が早期退職する中途採用者の4人に1人が早期退職していることが、厚生労働省のデータからわかっています。具体的には、令和2年の入職者数が7,103.4千人であるのに対して、離職者数は7,272.1千人であり、離職者が入職者を168.7千人も上回る状況です。同データによれば、中途採用の離職率は安定的に15%前後で推移していることもわかっています。採用担当者を悩ませる、”中途採用者が1年ですぐ辞める問題”は、全国的にみられる、そして長らく解決の糸口がみいだせていない課題といえるでしょう。さらに同データからは、入職率が著しく低下していることも分かっています。(画像出典:令和4年雇用動向調査_入職と離職の推移|厚生労働省)採用してもすぐに退職してしまい、新たに採用して不足する人員を補おうとしても、今度は採用難に見舞われる。これでは採用コストの増大のほか、人手不足に拍車がかかることによる悪影響も懸念されます。参考:令和4年雇用動向調査_入職と離職の推移|厚生労働省中途採用者が早期退職する7つの理由中途採用者はなぜ、1年で退職してしまうのでしょうか。その理由を、厚生労働省が発表した「1年前の仕事をやめた者の退職理由」を参考に、退職する側の視点から見てみましょう。本調査で中途採用者が1年で退職した理由の上位に挙げられた理由は、次の7つです。1位能力・実績が正当に評価されなかった2位給与・報酬が少ない3位事業又は会社の将来に不安を感じる4位労働時間が長い・休暇が少ない5位会社の経営方針に不満を感じた6位人間関係がうまくいかなかったから7位自分が希望する仕事ではなかった参考:5仕事をやめた者の退職理由|厚生労働省能力・実績が正当に評価されなかった再就職から1年で退職した多くの中途採用者が、退職理由として挙げたのは「能力・実績が正当に評価されなかった」というものです。これは、中途採用者に特有の傾向といえるでしょう。中途採用者の場合、企業は即戦力となることを期待して採用します。同様に中途採用される側も、「過去の実績や経験を活かして活躍できるもの」とイメージしているでしょう。ただし、仮に同業種や職種の経験者であっても、企業が違えば業務の進め方や細かなルールは異なります。採用する企業側の視点で考えれば、すでに自社で経験を積み、実績を上げている社員と同様もしくはそれに近い評価を与えるまでには、ある程度の時間がかかると考えるでしょう。ところが中途採用者の立場で考えると、様相は異なります。たとえば、「経験者である自分は転職先でもすぐに即戦力として第一線で活躍するチャンスを与えられるもの」というイメージを膨らませて入社してきた中途採用者の場合はどうでしょうか。「こんなはずではなかった」「経験者なのだから、もっと評価されて然るべき」と不満を抱える可能性があります。また自社のやり方に慣れてほしいという考えから、企業側が丁寧な研修の機会を提供したことが、「経験者なので今更研修など必要ない」「自分は過小評価されている」といった思いにつながることもあるでしょう。【お役立ち資料】社員が辞めない職場はどう作る?エンゲージメント向上の実践ガイド給与・報酬が少ない離職理由を年代別に調査した厚生労働省のデータによれば、正社員の25.4%が退職の理由として給与・報酬への不満を挙げたことがわかりました(複数回答可能)。企業側からみれば、給与や報酬についてはオファー時に条件を確認しており、金額に納得して入社したのではないかと疑問に思われるでしょう。ただここでも視点を中途採用者の側に移すと、違う景色がみえてきます。先に退職理由として紹介した、能力・実績が正当に評価されなかったという不満も相まって、「経験値や年齢といった条件から、もっと給与や報酬を得られるものと思っていた」「昇給が期待できると想定していた」といった、中途採用者の不満が垣間みえるのです。また「前職より多くの給与や報酬を得たい」と願って転職した中途採用者の場合、その願いが実現されないのであれば再び別の職を探そうと考えて、退職する可能性が十分にあるでしょう。給料や報酬を理由に退職する中途採用者は年代を問わず多い傾向がありますが、特に20代から44歳以下の年代層に多く、45歳以降は他の年代に比べると減少傾向にあることからも、若く転職の選択肢が多いうちに、より給与の高い仕事を見つけたいという思いがうかがえます。参考:2 離職理由|厚生労働省 事業又は会社の将来に不安を感じる給与への不満と並んで、すべての年代で退職理由の上位に挙がるのが、事業又は会社の将来への不安です。少し古いデータですが、独立行政法人労働政策研究・研修機構の調べでは、働き方改革や不安定な社会情勢の影響か、職種によっては80%近くが事業や会社の将来に不安を覚えていることが報告されました。(画像出典:特集ー働き方をめぐる新たな課題|独立行政法人労働政策研究・研修機構)ところが同調査では、定年まで勤めたいと考える人や、会社の発展に貢献したいと考える人が増加傾向にあることもわかっています。(画像出典:特集ー働き方をめぐる新たな課題|独立行政法人労働政策研究・研修機構)経済情勢の不安定さや社会情勢に関するネガティブなニュースが多い昨今、企業の経営状態の実情を知らないままに自社の将来性に不安を抱き、転職を考える中途採用者がいる可能性は考えられます。一般社員の場合、自社の経営状況を正しく理解するのは困難です。しかし長くやりがいをもって働きたいという意欲のある社員が、漠然とした不安にさいなまれたことによって退職する事態は避けなければなりません。こういった事態を未然に防ぐために、自社の経営状況について一般社員とも共有し、社の一員としての意識や自尊心を高める策を講じることが推奨されます。参考:特集―働き方をめぐる新たな課題|独立行政法人労働政策研究・研修機構労働時間が長い・休暇が少ないワークライフバランスに課題を感じている社員ほど転職を希望する割合が高いことが、厚生労働省の調べから分かっています。この傾向は20代から30代で高く、40代を超えたあたりから徐々に減少する傾向です。特に20代から30代の若年層では転職先の選択肢が多いため、労働環境が理想と違うと感じる場合、中途採用後1年であっても退職を考える大きな理由になる可能性は高いでしょう。企業側の目線で考えると、中途採用者の1年での退職が相次いでいる場合や新規採用が困難な場合では、リソースの確保が難しく、既存の社員の過重労働を受け入れざるを得ない側面もあるでしょう。ただし少子高齢化の加速により、労働力の不足は今後一層拡大すると推測されています。意欲・能力の高い中途採用者の1年での退職を避ける策として、経済産業省が推奨するDX化の促進やITツールによる業務効率化、給与・報酬体制の見直しといった対策の検討が必要でしょう。参考:2 離職理由|厚生労働省第1章 労働経済の推移と特徴|厚生労働省産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進施策について|経済産業省会社の経営方針に不満を感じた厚生労働省の調べでは、会社の経営方針に不満を感じることを理由に退職する中途採用者は、30代に特に多い傾向がみられます。30代は一定以上の社会経験を積み、ライフプランやキャリアプランを明確に描く年代です。そのタイミングで企業の成長に長期的な安定性を感じられない、また社内に望むポストがない、キャリアップの可能性に閉塞感を覚える、といったことがあると、退職を考える原因になります。年齢を重ねて転職の選択肢が狭まる前に早々に転職しようと考える可能性が高いのも、30代です。しかし30代といえば主戦力として採用、育成する人材が多い年代でしょう。1年経って、ようやく活躍が期待できると思った頃に退職されたのでは、企業が被る打撃は甚大です。中途採用した際、入社後もキャリアプランについて、中途採用者と企業側双方の意見を交換しながら、共通の認識のもとに日々の業務に邁進できる環境を整備することが求められます。人間関係がうまくいかなかった中途採用者に限らず、人間関係の悩みは誰もが抱える問題です。内閣府の調査によれば、約30%が人間関係の悩みを抱えていると回答しています。しかし独立行政法人労働政策研究・研修機構が21~33歳を対象にした調査結果によれば、30%近くが人間関係を理由に退職しており、個人で解決すべき問題と看過できるものでもないでしょう。そこで有効な対策が、産業医を選任したり、長時間労働者に対する医師による面接指導制度について周知するといった方法です。産業医とは、社員が健康で快適な作業環境のもとで業務にあたれるよう、専門的立場から指導・助言をおこなう医師を指します。労働者が50人以上の事業所では産業医の選任が義務付けられていますが、小規模な事業所でも産業医を選任することは可能です。厚生労働省の調べでは、精神的ストレス等を相談する相手として産業医を挙げた人は3%程度と、ごく僅かでした。また長時間労働者に対する医師による面接指導制度の認知率も、20%程度に留まります。企業が中途採用者の個別の人間関係に介入するのは、現実的ではないでしょう。しかし人間関係の悩みを相談できる仕組みを導入することは、1人で悩みを抱え込んだ末の早期退職といった事態を避ける有効な施策となり得ます。参考:第2章 調査からみえた課題と今後の方策|内閣府調査シリーズNo.164若年者の離職状況と離職後のキャリア形成|独立行政法人労働政策研究・研修機構中小企業事業者の為に産業医ができること|厚生労働省【労働者調査】1精神的ストレス等の状況|厚生労働省長時間労働者への医師による面接指導制度について|厚生労働省自分が希望する仕事ではなかった年代を問わず30%程度が退職理由として挙げたのが、自分が希望する仕事ではなかったという理由です。1日の大半の時間を投じる仕事に対してやりがいを求める傾向は、年齢が高いほど顕著です。たとえば厚生労働省がおこなった働く人の意識と就業行動の調査では、40代以上の年齢層で仕事に生きがいをみいだす人が著しく増加することがわかっています。(画像出典:働く人の意識と就業行動|厚生労働省) 中途採用者は、前職にはない何かを期待して入社しています。自社でどのようなキャリアを実現したいと考えているか、これまでの実績と理想のキャリアの差異はどのようなものか、人事評価等を介してコミュニケーションを取りながら、中途採用者の意欲向上をサポートできるような体制を整備するとよいでしょう。参考:働く人の意識と就業行動|厚生労働省中途採用者が1年で退職することによる企業のリスク中途採用者が1年で退職した場合、企業にはどのようなリスクがあるか、確認します。採用コストの増大中途採用者が退職した場合、新たな人材確保に向けた採用コストがかかります。また中途採用者の採用および教育等に要したコストが無に帰するため、大きなリスクとなるでしょう。既存社員の業務負担の増加新規採用した社員が一人前として業務に取り組めるようになるまで、中途採用者の退職に伴う欠員は埋まりません。むしろ新たな社員の教育のため、既存社員の業務が増える可能性があるでしょう。その結果、過重な業務に耐えかねた社員の退職につながる懸念もあり、連鎖的な退職といった負のループに陥るリスクが考えられます。中途採用者の1年での退職を避ける5つの方法中途採用者の1年での退職を避ける施策として、次の5つが考えられます。採用したい社員の人物像を求人の段階で明確に発信する中途採用者が1年で退職する場合、自社が求める人材像と合致しなかった、つまりミスマッチであった可能性が考えられます。たとえばどれほどスキルの高い人材であっても、社風が合わない場合、長く働くのは難しいと不満を抱いて早期退職するかもしれません。募集要項や採用面接で企業側は採用条件を提示し、その内容に納得した人材が応募し、入社しているはずです。しかし実際は、「早く仕事を決めたい」という思いから深い考えのないまま応募し、採用になった企業にとりあえず入社した、といった中途採用者もいるかもしれません。この場合、入社してから「こんなはずではなかったのに」「思っていたのと違う」という不満が募り、1年での退職に至る可能性は十分にあります。こういったミスマッチを避けるために、求人の段階で採用したい社員の人物像を具体的かつ明確に発信することが大切です。このとき、多く応募者を集めることよりも、自社にマッチしたコアな人材を集めることを意識してください。ミスマッチな人材が多く集まっても、長く自社に定着する人材に育成するのは困難です。キャリアプランの認識に対する擦り合わせを行う経験が豊富で実績のある中途採用者ほど、新たな職場に大きな期待を抱く傾向があります。中途採用者といえども自社では未経験者です。一から育成しなければならず、その間は新人として扱われます。しかし過去の経験は全くの未経験者にはないアドバンテージとなるからこそ、採用しています。そういった企業側の思い、そして中途採用者に期待するキャリアプランと中途採用者自身の描くキャリアプランを擦り合わせ、最大公約数のプランを歩めるような教育システムを構築することが大切です。中途採用者の意欲はそのままに、実現可能性を織り込んだキャリアプランを再構築し、企業と中途採用者で共有しながら長期的に活躍する人材に育成しましょう。【お役立ち資料】中途入社者の早期活躍を促進し定着率を向上させるオンボーディング実践例雇用条件・待遇・労働環境について共有先述のキャリアプランの擦り合わせと並行して、雇用条件や待遇といった部分についても、認識の共有を図ってください。このとき、雇用条件や待遇が変更される条件について具体的に示すことが大切です。たとえば、新卒の社員と中途採用者の場合、基本給の額が違います。しかし対応可能な業務内容に差異がなく、同様に研修が必要な場合、新卒の社員が昇給するのと同様のペースでは中途採用者は昇給しないことは十分にあります。業務量が増えたのに待遇が改善されないと、中途採用者が不満に感じることもあるでしょう。こういった事態を未然に防ぐためにも、どのような条件が揃った場合に待遇がどう変わるのか、といったように具体的に詳細条件を示すことが大切です。直属の上司を面接・採用選考に参加させる採用後の人間関係での不満や不和を予防する策として、直属の上司を採用選考に参加させる方法が有効です。直属の上司と相性が良い場合であれば、入社後に不満や悩みを抱えることがあっても、上司に相談することで退職に至らずに済むでしょう。しかし上司との相性が悪い場合、一層の不満を募らせて入社後1年での退職といった事態につながりかねません。またさまざまな視点から人材を選考することで、入社後のミスマッチによる早期退職の予防効果が期待できます。採用選考の過程でリファレンスチェックを実施する採用選考の過程で、リファレンスチェックを実施するのも有効な方法です。リファレンスチェックとは、候補者と一緒に働いたことがある第三者から、候補者の働きぶりや人柄などをヒアリングする手法です。中途採用では、相手が提出した書類と面接での様子から、相手の本質を見極めなければなりませんが、現実にはそれだけでは見極めは困難でしょう。そのため、ミスマッチが発生し中途採用後1年での退職につながります。例えば、面接で候補者が「自分はリーダーシップを持ち、新しい仕事を自ら生み出していくことができます」と話しているとします。入社後も実際に新しい仕事を生み出してくれる人材と、面接に受かりたい一心でそのような人物像を演じている人材がいます。過去に候補者と一緒に働いたことのある同僚から「候補者はどちらかというとフォロワー気質の強い人材でした」という回答があれば、候補者の発言を慎重に検討することができるでしょう。また、過去のプロジェクトにおける立ち位置や、候補者の保有するスキルレベル、勤務態度なども併せて確認することができます。リファレンスチェックという新たな仕組みを導入することは、中途採用者が1年で退職してしまうリスクを回避する有効な施策です。関連記事:【企業向け】リファレンスチェックとは?リファレンスチェックのやり方と内容を解説 ミスマッチを防ぐリファレンスチェックならback check中途採用者が1年で退職してしまう原因は、採用におけるミスマッチです。ミスマッチを防ぐためには、採用したい人物像を明確に発信すること・候補者との綿密なコミュニケーションのほか、リファレンスチェックの実施が有効です。ただしリファレンスチェックには「採用担当者の工数が圧迫されてしまう」といったデメリットもあるため、リファレンスチェックを効率よく実施し、効果を最大限に発揮するためには、専門のサービスを利用するのもおすすめです。株式会社ROXXでは、オンライン完結型のリファレンスチェックサービス「back check(バックチェック)」を提供しています。back checkは、Web上で候補者の情報を登録するだけで、簡単かつ低価格でリファレンスチェックを実施できるサービスです。中途採用者の早期退職を防ぎたいと考えている企業のご担当者さま、ぜひback checkをご検討ください。