目次前職調査とは?前職調査とは、採用プロセスの一環として、候補者の過去の職歴や職務遂行能力を調べることを指します。候補者の応募書類や面接で得た情報に虚偽がないか裏付けを確認するために行われます。前職調査は、必ず行われるというわけではなく、専門職、信頼性が特に重視される職種で行われる傾向が高いものです。中でも警備業や金融機関などの業種、外資系企業や重要なポジションなどの採用の場合に、前職調査は行われることが多いです。しかし、これらに含まれない選考や通常の採用過程でも行われる場合もあり、採用へのリスクを減らしたいと考えて、前職調査を導入する判断をしているのかもしれません。前職調査とリファレンスチェックの違いと類似点前職調査とは異なりますが、リファレンスチェックと呼ばれる選考プロセスがあります。リファレンスチェックとは、候補者と過去一緒に働いたことのある第三者から、書類や面接だけでは分からない候補者の情報を取得することを言います。候補者について客観的に事実確認する点は、前職調査もリファレンスチェックも同様です。前職調査は候補者の申告した情報を元に事実を確認することを指すのに対して、リファレンスチェックは、第三者からの情報を元に事実を確認する点が異なります。また、前職調査は採用企業がヒアリングの対象者を選ぶのに対して、リファレンスチェックは候補者がヒアリングの対象者を指定する点も両者の違いとなります。関連記事:リファレンスチェックとは?リファレンスチェックのやり方と内容を解説前職調査が必要な理由とは?前職調査が必要な理由を解説します。真実性の確認のため前職調査により、候補者が履歴書や面接で提供した情報に虚偽の情報がないかを確認できます。一般的には、採用企業が得られる情報源は履歴書の情報や面接の内容のみです。より適切な採用判断をするため、これらに嘘がないかを前職調査で確認します。【お役立ち資料】「20人に1人はいる、経歴詐称をしている人材の見抜き方」職務遂行能力の評価のため過去の職場でのパフォーマンスと能力を把握することで、候補者が新しい職務を遂行する能力を評価することができます。実際にどのような業務について、どのような仕事をこなしてきたかを確認します。潜在的なリスクの特定のため候補者の過去の行動やパフォーマンスを通じて、候補者が隠していた情報や潜在的な問題点を特定できる可能性があります。候補者が自らマイナスな部分について話すことはあまりないので、そういった点を確認できるのも前職調査のメリットのひとつです。【お役立ち資料】知らないと危険!身近にあふれる「コンプライアンスリスク」組織文化への適合性への評価のため候補者が過去にどのような組織文化の中で働いてきたかを理解することで、候補者が自社の組織文化に適合するかどうかを評価することができます。また、前職の職場環境や文化を確認すること自体も、採用判断に役立つでしょう。書類や面接では判断できない情報を確認するため面接や書類選考だけでは把握できない部分が多くあるのも事実です。前職調査を行うことで、候補者の実際の職務遂行能力や人間関係の構築能力などを確認できます。前職調査の主な内容実際に前職調査で調査される内容を解説します。勤務状況過去の職場での勤務状況、勤務態度、勤務実績などを詳しく調査します。学歴や職歴履歴書に記載された学歴や職歴が正確かどうかを確認します。業務の成果や評価以前の職場での業務の成果やその成果に対する評価を調べます。保有スキル職務に必要な技術的なスキルや、対人関係構築能力など、候補者が保有するスキルを評価します。人柄候補者の人柄や、チーム内での対人関係の構築能力などを評価します。また、金銭トラブルや反社とのトラブルがないかも確認します。健康状態職務に影響を与える可能性のある健康状態や、過去の健康記録について調査します。退職理由前職を退職した理由やその背景を理解することで、候補者の動機や価値観を把握します。前職調査の違法性前職調査は、適切な方法で実施すれば違法性はありません。どのような場合に違法と見なされてしまうのか確認していきましょう。候補者の同意を得ずに調査を行う場合個人情報保護法の第17条(適切な取得)では、「個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならない。」と定められています。そのため、応募者の同意を得ずに、勝手に前職の同僚や上司に接触して情報を収集することは違法とみなされます。関連記事:前職調査は同意なしでも可能?前職調査を勝手に行うことの問題点また、第16条(利用目的による制限)においては、「特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。」とも定められています。そのため、例えば前職調査を行う調査範囲や利用目的を明確に説明せず、「採用のため」と曖昧な説明で調査の同意を得ていた場合、前職調査を行うと違法となる可能性があります。採用判断に関係のない範囲まで調査を行う場合採用判断に関係のないことまで踏み込んで事細かに調べる行為は違法とみなされる可能性があります。職業安定法の第五条の五(求職者等の個人情報の取扱い)には、「その業務の目的の達成に必要な範囲内で、厚生労働省令で定めるところにより、当該目的を明らかにして求職者等の個人情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。」という記載があり、「採用可否の判断」という目的の達成に必要のない調査は適切な前職調査の域を超えているといえます。行き過ぎた調査の例として、出身地や国籍、宗教、政治的立場や性的指向など、候補者本人の職務適性と関係がない項目の調査が挙げられます。例えば前職の関係者から候補者の出身地を聞き出し、「被差別部落の出身であるから不採用」と判断をする場合、それは就職差別です。注意:候補者側には前職調査を拒否する権利がある選考を受けている企業から前職調査の実施の同意を求められた場合、候補者は拒否することも可能です。候補者からの同意が得られなかったのに勝手に前職調査を進めると、上記の通り違法行為となってしまうため注意しましょう。また、内定通知後に前職調査を行おうとして、実施の同意を得られなかった場合、「何かやましいことがあるのではないか、入社してほしくない」と企業は不信感を持ってしまうかもしれません。しかし、内定通知後の場合は「前職調査を拒否されたから」という理由で内定取り消しをすることは違法とみなされる可能性が高いです。これは労働契約法の第十六条(解雇)にて「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定められているためです。内定時点で労働契約が成り立っているため、内定取り消しは「解雇」にあたり、「前職調査の拒否」は客観的に合理的な理由には該当しない可能性が高いのです。前職調査のポイント前職調査を行う際のポイントを解説します。内定を出す前に実施する前職調査は、内定を出す前に行うことが重要です。内定後に前職調査チェックを行うことで万が一、内定を取り消すことがあれば、企業のブランドイメージが損なわれ、他の採用活動にも悪影響を及ぼす可能性が考えられます。内定取り消しになれば、それまでその人物にかけた採用コストが無駄になるだけではなく、新たに候補者を探すためのコストも発生します。さらに、別の候補者の選考が必要となるため、採用活動が遅れる可能性があります。関連記事:前職調査は内定後・入社後にする?適切な前職調査のタイミングを解説候補者の許可を得る候補者本人の許可を得ずに前職調査を実施すると、個人情報保護法違反になる可能性があります。法的にも倫理的にも候補者のプライバシーを尊重し、調査を行う前に必ず候補者から書面での許可を得ることが重要です。採用と関係ない情報を取得しない個人のプライバシーに関わる情報や、個人的な趣味や信条など採用判断に不要な情報は取得しないようにします。選考に関係ない情報を取得することも個人情報保護法違反となる可能性があります。前職調査の実施方法実際に前職調査を実施する方法について解説します。自社で独自調査自社の人事部門や採用担当者が直接、過去の職場や教育機関に連絡を取り、情報を収集する方法です。すぐに始められるというメリットがある一方で、採用担当者の負担が大きい・専門の調査機関による調査と比べると得られる情報に限りがあるといったデメリットがあります。興信所や探偵事務所専門的な調査を行うために、興信所や探偵事務所に依頼することもあります。これらの機関は個人調査に特化しているため、より詳細な情報を収集することが可能ですが、コストがかかります。また、候補者の許可を得て調査を行うことが大前提のため、興信所や探偵事務所に調査依頼をすることを伝えると快く思わないどころか不信感を与えてしまう可能性が高いので注意が必要です。専門の調査会社へ依頼専門の調査会社に依頼する方法です。費用はかかりますが、興信所や探偵事務所よりも与える不信感は少なくなります。前職調査の結果によっては内定取り消しの可能性前職調査の結果、候補者が提出した履歴書や面接等での申告内容に虚偽が見つかった場合、どのように対応したら良いのでしょうか。まず、内定通知前の場合、「虚偽の申告をしてしまう候補者のため信頼性に欠ける。採用したくない」と判断した場合は不採用通知を送るのみで問題ありません。注意が必要なのは、すでに内定を出していた場合です。虚偽の内容によっては内定取り消しの可能性も出てくるでしょう。しかし、内定は「労働契約」であるため労働契約法が適用されます。第16条で「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定められていることから、正当な解雇理由として認められない内容の場合は内定取り消しが難しいのが現状です。どのような場合に内定取り消しの可能性が出てくるか確認していきましょう。内定取り消しが認められる場合以下のようなケースは経歴詐称の具体的な内容と、それが採用にどのような影響を与えたかを客観的に説明することができ、法的にも内定取り消しが認められる可能性が高いでしょう。採用判断に重大な影響を与えた項目で詐称があったケース詐称されていた内容が、「これがなければ採用されなかった」と客観的に説明できるものである場合、内定取り消しが可能な場合があります。例えば、必要な免許や資格を実は持っていなかった、重要な職歴や実績を偽っていて採用基準を満たしていなかった、といった場合は解雇が相当な措置と判断されるでしょう。業務に関係のある犯罪歴や重大なトラブルを隠していたケース犯罪歴や過去のトラブルが、業務遂行能力や信頼性に直接的な関係があり、それが隠されていた場合は内定を取り消す正当な理由になり得ます。例えば、以下のような内定者が該当するでしょう。過去に横領や詐欺の犯罪歴があり、それを隠して金融業界の内定を得ていた。重大な交通違反や酒気帯び運転の前歴があるが、意図的に伝えず運輸業界の内定を得ていた。性犯罪歴があるが申告せず教育業界の内定を得ていた。雇用契約書や就業規定などで厳密に定めてあるケース内定者も同意した書類や規定に、あらかじめ「虚偽申告が発覚した場合、内定を取り消すことがある」と明記されていた場合、企業側が正当性を持ちやすくなります。内定取り消しが認められない場合以下のようなケースは、「客観的に合理的な理由」とは言えず、社会通念上、解雇が相当な措置であると認められない可能性が高くなります。意図的ではなく記載ミスをしていたケース人間誰しも不注意でミスをしてしまうことがあるものです。履歴書を書く際、うっかりミスや記憶違いなどでアルバイト歴や在籍期間の一部を誤ってしまった内定者がいたとします。しかし、その経験年数のみが内定を出した決め手となっていたわけでもなく、業務遂行能力に問題がない状況であれば、内定取り消しは過剰な措置と判断される可能性が高いでしょう。手続きや調査が不適切なケース調査結果を鵜呑みにし、一方的に内定取り消しを通知することも法的に認められません。調査が不十分で、調査の方が誤っていた、ということがないよう裏付けをとりましょう。また、内定者に説明や反論の機会を与えることも重要です。不当な理由を含むケース前職調査の過程で、職務の遂行に関係のない情報を得てしまうこともあるでしょう。しかし、職務の遂行に関係のない事項を理由に内定取り消しを行うことは就職差別とみなされます。前職調査を実施する可能性が高い企業の特徴前職調査は実施が義務付けられているわけではないため、各社がそれぞれ実施の判断を行っています。どのような企業で実施されることが多いのでしょうか。高い信頼性や倫理性が求められる企業・金融業界・福祉業界・教育業界・公共・インフラ関連業界・防衛・警備業界上記のような業界では、信用性や顧客との高い信頼関係が求められます。公共性が高く、トラブルが起こった場合は社会全体に与える影響が大きいため、前職調査を実施して透明性・安全性を確保します。高い専門性が求められる企業・医療業界・IT・ハイテク業界・コンサルティングファーム・製造業界のうち、特に機密性の高い情報の取扱や、品質管理が重要な企業上記のような企業は、高い専門性やスキルが求められます。申告された過去の成果に虚偽がないかを確認し、能力が確かなものであるかを裏付ける必要があります。外資系企業外資系企業の場合、海外にある本社(親会社)の人事ポリシーや採用基準がそのまま適用されることがよくあります。海外では前職調査が日本よりも一般的であるため採用プロセスの一環として前職調査も自然と組み込まれているケースが多くあります。過去にトラブルを経験した企業過去に経歴詐称や不正行為をした社員がおり、問題が発生した企業では、前職調査を実施する可能性が高いです。再発防止のため、前職調査を強化し、慎重な採用活動を行っている場合が多いでしょう。前職調査ならback check(バックチェック)前職調査は採用のリスクを減らすために有効な手段のひとつですが、自社で実施するには採用担当者の負担が大きく、得られる情報にも限界があります。自社で前職調査をするのが難しい場合は、専門の調査会社に依頼するのも良いでしょう。株式会社ROXXが提供する「back check(バックチェック)」では、公的公開情報・Web情報・個別調査によって候補者の申告内容に虚偽がないか、コンプライアンスリスクがないかなどを確認するコンプライアンスチェックと、候補者と過去一緒に働いたことがある元上司や同僚から評価を得ることで、入社後に顕在化する働きぶりやカルチャーマッチといった言語化しにくい情報を確認するリファレンスチェックが実施できます。【お役立ち資料】サンプルレポート付き!コンプライアンスチェックでわかる採用リスクコンプライアンスチェックとリファレンスチェックを一括で実施できるため、採用担当者と候補者の負担を大幅に削減することができます。前職調査によって採用のリスクを減らしたいと考えている採用担当者様は、ぜひback checkの導入をご検討ください。