ワークエンゲージメントとは?測定方法から向上施策まで、人事が知るべきポイントを解説
近年、従業員のモチベーション低下や離職率の増加に悩む企業が増えています。働き方改革が進む中、単に労働環境を整えるだけでは従業員の主体的な取り組みや高いパフォーマンスを引き出すことは困難です。
そこで注目されているのが「ワークエンゲージメント」です。仕事に対するポジティブな取り組みの度合いを表すこの概念は、厚生労働省健康経営の指標の1つとして提示されたことから多くの企業から注目を集めています。
本記事では、ワークエンゲージメントの基本的な概念から、具体的な測定方法、効果的な向上施策を解説します。自社の課題解決に向けた具体的なアプローチを見つけるヒントとなるので、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
- ワークエンゲージメントとは?基礎知識を解説
- ワークエンゲージメントの定義と3つの構成要素
- 日本企業におけるワークエンゲージメントの現状と課題
- ワークエンゲージメントと類似概念の違い
- ワークエンゲージメントの測定方法3選
- ①UWES
- ②MBI-GS
- ③OLBI
- ワークエンゲージメント向上がもたらす5つのメリット
- 生産性の向上とパフォーマンスの改善
- 離職率の低下と人材定着
- メンタルヘルスの改善
- 組織へのコミットメント向上
- イノベーションの促進
- ワークエンゲージメントを高める6つの具体的施策
- ①仕事の裁量権を増やす
- ②適切なフィードバックの実施
- ③キャリア開発支援の充実
- ④コミュニケーションの活性化
- ⑤人事評価制度の見直し
- ⑥ワークライフバランスの推進
- ワークエンゲージメント向上の成功事例4選
- 事例① 日清食品ホールディングス株式会社
- 事例② 株式会社トレンディ茨城
- 事例③ 株式会社サイバーエージェント
- 事例④ 兵庫ベンダ工業株式会社
- ワークエンゲージメント向上の注意点と落とし穴
- 過度な期待と押し付けのリスク
- 個人差への配慮の重要性
- 継続的な取り組みの必要性
- ワークエンゲージメントの高い人材を採用するならback check
ワークエンゲージメントとは?基礎知識を解説

ワークエンゲージメントは、仕事に対する前向きで充実した心理状態を指す概念です。
エンゲージメントは近年「働きがい」に関わる重要な指標として注目されており、「ワークエンゲージメント」と「従業員エンゲージメント」の2種類に大別されます。以下では、ワークエンゲージメントの定義と構成要素、日本企業における現状、そして類似概念との違いについて解説していきます。
ワークエンゲージメントの定義と3つの構成要素
ワークエンゲージメントとは「仕事に関連するポジティブで充実した心理状態」のことで、その特徴として「活力」「熱意」「没頭」の3要素がすべて揃った状態と定義されています。
これら3つの要素は相互に影響し合い、すべてが高い水準で維持されることで真のワークエンゲージメントが実現されます。
■ワークエンゲージメントの3要素
要素 | 定義 | 具体的な状態 |
|---|---|---|
活力 | 仕事からエネルギーを得て生き生きとしている状態 | 困難に直面しても意欲的に乗り越えようとする、疲労を感じにくい |
熱意 | 仕事に誇りややりがいを感じている状態 | 強い意義付けをもって積極的に取り組む、仕事への愛着が深い |
没頭 | 仕事に深く集中・没頭している状態 | 時間を忘れるほど没入する、業務に高い集中力を発揮する |
この3つの要素すべてが満たされているとき、従業員は仕事に対して情熱的かつ積極的に関与できており、単なる一時的な感情ではなく持続的・全般的な前向きの感情と認知が備わっていると言えるでしょう。
日本企業におけるワークエンゲージメントの現状と課題
日本企業では近年、人手不足への危機感や人的資本経営の重要性の高まりを背景に、ワークエンゲージメント向上への関心が強まっています。しかし、日本の従業員のエンゲージメント水準は海外より低い傾向が指摘されているのが実情です。
たとえば2024年に実施されたギャラップ社の調査(※1)では、日本の従業員エンゲージメントは6%にとどまり、世界平均の21%(※2)を下回りました。これは日本の職場文化や自己評価の厳しさも影響していると考えられ、従業員が自分の働きをポジティブに評価しづらい傾向があるためと分析されています。
一方で、先進企業では高いエンゲージメントを実現している例もあります。たとえばIT大手のサイバーエージェント(※3)では、「働きがいがある」と回答する社員が87%にのぼり、社員の主体性や能力発揮を促す人事施策によって高水準のエンゲージメントを維持しているのが特徴です。
日本全体では課題が残るものの、人材の定着や生産性向上の観点からエンゲージメント向上は企業規模を問わず重要な取り組みと位置づけられており、各社で施策が模索されています。
※1 参考:ギャラップ社「日本の雇用主が直面する人材確保の課題」(2024年11月25日)
※2 参考:ギャラップ社「世界の職場の現状」
※3 参考:株式会社サイバーエージェント「87%の社員が「働きがいがある」と答える環境を実現ーーCHO曽山が語るエンゲージメントを高める人事施策」(2022年5月26日)
ワークエンゲージメントと類似概念の違い
ワークエンゲージメントと従業員エンゲージメントは混同されやすいですが、指す対象が異なります。また、仕事満足度やモチベーション、燃え尽き症候群といった類似の概念とも違いがあるため、正しく理解することが重要です。
■ワークエンゲージメントと類似概念の比較
概念 | 対象 | 特徴 | 測定する内容 |
|---|---|---|---|
ワークエンゲージメント | 個人と仕事との関係 | 仕事そのものへの熱意・活力・没頭 | 仕事への内的動機づけ |
従業員エンゲージメント | 個人と組織との関係 | 会社への愛着・貢献意欲 | 組織へのコミットメント |
仕事満足度 | 与えられた条件 | 現状への満足感 | 待遇・環境への満足度 |
モチベーション | 行動の動機 | やる気・意欲 | 行動を起こす原動力 |
燃え尽き症候群 | 疲弊状態 | エンゲージメントの対極概念 | 疲労感・冷笑的態度・効力感の低下 |
ワークエンゲージメントが「個人と仕事との関係」に着目し、仕事そのものへ感じるやりがいや熱意、活力といった内的動機づけを示すのに対し、従業員エンゲージメントは「個人と組織との関係」に着目した概念で、所属企業への貢献意欲や愛着心を指します。
つまりワークエンゲージメント=仕事への熱意、従業員エンゲージメント=会社への愛着と言い換えられ、前者は働きがい、後者は組織へのコミットメントに近いニュアンスです。
ワークエンゲージメントの測定方法3選
ワークエンゲージメントを測定するための代表的なツールとして、以下の3つが広く用いられています。
UWES
MBI-GS
OLBI
それぞれアプローチは異なりますが、自社のエンゲージメントの現状を知り改善につなげる上で有効なツールです。適切な測定方法を選択することで、より効果的な施策立案が可能になります。
①UWES
UWES(ユトレヒト・ワークエンゲージメント尺度)は、オランダのユトレヒト大学で開発されたワークエンゲージメント測定法で、国際的にも広く利用されている代表的な尺度の一つです。17項目の設問(短縮版は9項目、超短縮版は3項目)により、活力・熱意・没頭の3要素それぞれの水準を評価できます。
質問例として「仕事をしていると活力がみなぎるように感じる」「自分の仕事に誇りを感じる」などが挙げられ、5段階評価で回答を得ます。回答結果から算出されるスコアが高いほど、ワークエンゲージメントが高い状態にあると判断可能です。
UWESは信頼性・安定性が検証されており、世界各国で広く用いられており、日本でも日本版UWESや短縮版が開発され多くの企業で活用されています。
②MBI-GS
MBI-GS(Maslach Burnout Inventory - General Survey)は、本来は燃え尽き症候群(バーンアウト)の程度を測定する質問票です。エンゲージメントとは裏表の関係にあることから、エンゲージメントを測る指標としても用いられています。
MBI-GSでは計16項目の質問から「疲労感」「シニシズム(冷笑的態度)」「職務効力感」の3次元についてスコア化するのが特徴です。疲労感5項目・シニシズム5項目・職務効力感6項目で構成され、これらの回答結果からバーンアウト傾向を評価します。
スコアが高いほどバーンアウト(燃え尽き)が強い状態を意味し、逆に言えばスコアが低いほどエンゲージメントが高い状態であると解釈されます。
③OLBI
OLBI(Oldenburg Burnout Inventory)もMBI同様にバーンアウトの度合いを測定する尺度で、ドイツのオルデンブルク大学で開発されました。
OLBIの特徴は質問項目にポジティブな内容とネガティブな内容を織り交ぜている点にあります。設問は合計16項目で、「疲弊」と「離脱」の2カテゴリに分類されます。
それぞれについて肯定的表現と否定的表現の質問が各4問ずつ設定されており、回答者が「全くそう思わない~とてもそう思う」の4段階で答えます。集計方法は、回答値を正負反転させつつ疲弊スコアと離脱スコアを算出する形で行われ、数値が低いほどバーンアウト度合いが低い(=エンゲージメントが高い)と判断されます。
OLBIは質問文が簡潔で回答者の負担が小さい利点があり、MBIより自由に使える尺度として、学術研究から企業の実態調査まで幅広く利用されています。
ワークエンゲージメント向上がもたらす5つのメリット
ワークエンゲージメントを高めることは、企業と従業員双方に様々なメリットが期待できます。実際の調査データや企業事例からも、エンゲージメント向上による具体的な効果が確認されています。
ここでは、エンゲージメント向上によって得られる代表的な効果を5つ取り上げて詳しく解説していきます。
生産性の向上とパフォーマンスの改善
エンゲージメントが高い職場では従業員の能力・パフォーマンスが最大限に発揮され、生産性が向上することが期待できます。
実際に、米ギャラップ社の調査によれば従業員エンゲージメントが上位25%の企業は下位25%の企業より生産性が14%、売上高が18%高いというデータも報告されています(※4)。
従業員一人ひとりがいきいきと力を発揮できる環境づくりは、組織全体の業績アップに寄与するでしょう。特に創造性や問題解決能力が求められる業務においては、エンゲージメントの高さがより顕著にパフォーマンス向上に現れる傾向があります。
離職率の低下と人材定着
ワークエンゲージメントを高めることは従業員の離職率低下、定着率向上にも効果が期待されます。
エンゲージメントが高い社員ほど会社や仕事に愛着を感じて積極的に貢献しようとするため、安易に退職しにくくなる傾向があります。働きがいのある会社は総じて離職率が低いというギャラップ社の調査結果もあり、エンゲージメントの高さは人材流出防止にも寄与すると言えるでしょう。
人材確保が困難な昨今において、既存人材の定着のためにもエンゲージメントのコントロールは重要な要素となっています。
メンタルヘルスの改善
ワークエンゲージメントはポジティブな心理状態であるため、従業員のメンタルヘルス面にも良い影響を与えます。
エンゲージメントが高い人は仕事に意義や活力を見出しており、ストレスを感じにくく燃え尽き症候群に陥りにくいことが知られています。厚生労働省の説明でも、エンゲージメントを高めることで「従業員が健康に活き活きと働き続けられる」効果があるとされています(※4)。
エンゲージメントが向上した組織では欠勤率の低下や職場の活気向上といったポジティブな効果が期待され、心身ともに健全な社員が増えることで職場全体の健康度が向上するでしょう。
その結果として、メンタルヘルス不調に伴う医療・労務コストの低減効果も期待できます。
※4 参考:厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト」
組織へのコミットメント向上
エンゲージメントが高まると、従業員の会社や組織に対する信頼感・愛着心も高まります。
自社の理念や目標に共感し、自分の存在意義と組織の方向性が重なっていると感じられるようになるため、結果として「この会社に貢献し続けたい」というコミットメント(貢献意欲)が強まるのです。
エンゲージメントの高い社員は「自社で働くことに誇りを感じる」割合が高いことも特徴です。こうした従業員が増えることで特に困難な状況や変化に直面した際に、組織として一丸となって課題に取り組む力が発揮されるでしょう。
イノベーションの促進
エンゲージメントとイノベーション創出には密接な関係があることが指摘されています。
意欲的で熱意のある従業員ほど新しいアイデアを生み出し実行に移す割合が高くなります。これは、エンゲージメントが高まることで社員が主体的・創造的になり、多少リスクがあってもチャレンジしようとする姿勢が育まれるためです。
さらに、エンゲージメントの高い職場はチーム内の心理的安全性も高まりやすく、自由に意見を言い合える風土が革新的な発想を後押しします。
ワークエンゲージメントを高める6つの具体的施策

従業員のエンゲージメントを高めるには、職場環境や人事施策の見直しを通じて仕事の「資源」と個人の「資源」を充実させることが有効だとされています。
以下の施策は多くの企業で実践されており、効果的なエンゲージメント向上につながることが確認されています。
①仕事の裁量権を増やす
従業員一人ひとりに仕事の進め方や意思決定の裁量権を与えることで、主体性と責任感が育ちエンゲージメント向上につながります。
上司が部下に業務を委譲したり、担当領域の判断を任せたりすることで、社員は「やらされている」感覚ではなく「自分で仕事を動かしている」という当事者意識を持てるようになります。
■具体的な施策例
決裁権限の委譲
社内公募制度の導入
プロジェクトリーダーとして抜擢する
業務プロセス改善提案の権限付与
実際に、上司から任される範囲が広がると「自分ごと」として仕事に取り組むようになり、仕事への熱意・没頭が高まったという例も報告されています。裁量の拡大は「仕事の資源」の充実策の一つであり、組織として意識的に進めることで社員のモチベーション向上に直結します。
②適切なフィードバックの実施
上司や同僚からのフィードバックは、社員の努力や成果を認知し承認する重要な機会です。
定期的かつ建設的なフィードバックを行うことで、社員は自分の成長実感を得られ、仕事への意欲が増します。上司からのサポートや適切なフィードバック提供といった支援は、「仕事の資源」を高める施策として効果的です。
■具体的な施策例
1on1ミーティングの定期実施
リアルタイムフィードバックシステムの導入
同僚同士の相互評価の場を設ける
表彰制度や感謝を伝える仕組み化
目標達成時の即座な承認・称賛の仕組み化
ポイントは否定的な指摘だけでなくポジティブな承認を増やすことです。自分の貢献が評価されていると感じられれば、社員はさらに主体的に仕事に取り組むようになり、ひいてはエンゲージメント向上に繋がります。
③キャリア開発支援の充実
社員が将来的な成長ビジョンを描ける環境を整えることも、エンゲージメント向上に有効です。
具体的には、研修や自己啓発支援、社内公募によるキャリアチェンジ機会、メンター制度などを通じて、「この会社で成長し続けられる」という実感を持たせます。
■具体的な施策例
階層別研修プログラムの体系化
外部研修・資格取得費用の補助制度
社内公募によるキャリアチェンジ制度
メンター・コーチング制度の導入
従業員自身が「理想とするキャリアに近づいている」と感じられれば、その組織に留まり貢献したいというエンゲージメントが高まるでしょう。
また、必要な知識・スキルを習得する場を用意することも重要で、ジョブローテーションや異動希望を叶える仕組みを整えることで社員の強み発揮と満足度向上につながります。
④コミュニケーションの活性化
風通しの良い職場づくりもエンゲージメント向上に欠かせません。
組織内コミュニケーションを活発化させ、経営層と社員、部署間、上司と部下などあらゆるレイヤーで対話が促進されると、社員は安心して意見を発信できるようになります。
■具体的な施策例
経営層との定期的なミーティング
部署横断プロジェクト
社内SNS・コミュニケーションツールの活用
オープンオフィス環境の整備
定期的な懇親イベント・チームビルディング
例えば、経営トップとの定期的なタウンホールミーティングやランチミーティングを設けて会社の方針や社員の声を直接やり取りする場を作れば、社員は自分の意見が経営に届いていると実感し、会社への信頼感やエンゲージメントが高まります。
逆に「声を上げても無視される」という状況では士気が下がってしまうため、アンケート調査後のフィードバックと改善策の実行までセットで行うことが重要です。
⑤人事評価制度の見直し
エンゲージメント向上のためには、社員の努力や成果が適正に評価・報酬される仕組みであることも重要です。
評価制度が不透明だったり、不公平感があると社員のモチベーションは大きく損なわれます。そこで、人事評価制度を見直し、公平公正で納得感のあるものに改善することが求められます。
■具体的な施策例
評価基準の明確化
成果とプロセス両方を評価する制度
360度評価(多面評価)の導入
評価結果のフィードバック面談の充実
評価が報酬に反映される制度
例えば、ある企業では従来の年功序列的な評価を改め、挑戦した失敗もポジティブに評価する制度に転換したところ、社員が新しいことに積極的に挑むようになりエンゲージメントが上昇したといいます。
社員が納得する人事評価制度を作ることは、「この会社で頑張りたい」という意欲を生み出し、エンゲージメント向上にもつながります。
⑥ワークライフバランスの推進
ワークライフバランスの改善も、エンゲージメント向上に直結する施策です。
長時間労働の是正や有給休暇の取得促進、在宅勤務の活用などにより仕事と私生活の両立を支援する環境を整えると、社員は心身の健康を保ちながら働くことができます。
■具体的な施策例
フレックスタイム制度の導入
在宅勤務・リモートワークの推進
有給休暇取得率の向上
長時間労働削減のためのシステム改善
育児・介護支援制度の充実
適切に休息とリフレッシュが取れてプライベートも充実すれば、仕事への意欲や集中力が高まり生産性が上がる傾向があります。
大切なのは、制度を作るだけでなく職場に根付かせることです。長時間労働を是としない風土づくりや管理職の意識改革と合わせて推進することで、社員が安心して休暇を取り、よりメリハリを持って働くことができるようになるでしょう。
ワークエンゲージメント向上の成功事例4選
ここでは、実際にワークエンゲージメント向上に取り組み成果を上げている日本企業の事例を4つ紹介します。
それぞれの企業がどのような工夫を凝らしたかを見ることで、自社での施策立案に活かせる具体的なヒントが得られるでしょう。
参考:厚生労働省「ワークエンゲージメント向上取組事例の紹介」
事例① 日清食品ホールディングス株式会社
日清食品ホールディングスでは、20年以上前から社員アンケートによる「働きがい」調査を行い、従業員意識の経年比較などに取り組んできました。近年は中途入社者の増加や多様化、離職率上昇やメンタルヘルス課題を背景に、エンゲージメントに着目した改革を加速しています。
具体的な施策として、2024年度から世界共通の尺度を用いたワークエンゲージメント調査を導入し、各職場単位で匿名の率直な意見を集めてフィードバックする仕組みを開始しました。また、「日清食品らしさ」の浸透(企業理念・DNAの共有)や、「仕事を楽しみ、自らやりたい人を支援する」風土づくりにも注力しています。例えば、従業員のアイデア提案制度や1on1ミーティングの推進、従業員が主体的に学べる研修プログラムなどを導入しました。
これらの取り組みにより、社員一人ひとりがいきいきと働き能力を発揮できるよう環境整備を進めた結果、社内のエンゲージメントスコアは向上傾向にあります。
■ビフォーアフター
課題 | 施策 | 結果 |
|---|---|---|
・中途入社者の増加 | ・ワークエンゲージメント調査導入 | ・エンゲージメントスコア向上 |
事例② 株式会社トレンディ茨城
茨城県の運送業・株式会社トレンディ茨城では、少人数ながら全社員が最大限力を発揮できる職場を目指し、エンゲージメント向上の取り組みを行っています。特に短期離職の多発という課題に直面していたことから、人材育成と定着に注力しました。
具体策として、従業員の強みを伸ばすチーム別の人材育成・評価制度を導入し、4つのチームに分けて各自の得意分野を活かせるようにしました。また、「褒める・認める」文化を醸成し、社内SNSで良い取り組みを称賛し合う仕組みや表彰制度を設けることで、社員の働きがいを高めています。
さらに、多能工化(マルチスキル化)にも取り組み、ドライバーであっても事務や他業務の知識を学ばせるなど、働きやすい柔軟な環境づくりを進めています。
新人に対して人材育成チームが入社直後から体系的・手厚いOJT指導を行い、安心して業務に習熟できるよう支援した結果、「入社後すぐ辞めてしまう」ケースが激減し定着率が向上しました。
■ビフォーアフター
課題 | 施策 | 結果 |
|---|---|---|
・短期離職の多発 | ・チーム別育成制度 | ・早期離職率激減 |
事例③ 株式会社サイバーエージェント
インターネット広告・メディア事業を展開するサイバーエージェントでは、従業員エンゲージメントの高さが社内外で知られています。
その背景には独自の人事施策があります。同社は社員満足度調査「GEPPO」を用いて毎月社員のコンディションや意見を吸い上げ、経営陣が全コメントに目を通し返信するという徹底ぶりです。
社内SNS的なこの仕組みにより「経営が自分たちの声を真摯に受け止めてくれる」という信頼感が醸成され、社員は安心して本音を発信できる風土が醸成されています。また、社内異動公募制度「キャリチャレ」を早くから導入しており、部署異動を希望する社員に対しては人事提案という形で実現させる運用としました。
これによって「やりたい仕事にチャレンジできる会社」という認識が広がり、主体的にキャリアを描く社員が増えています。
■ビフォーアフター
課題 | 施策 | 結果 |
|---|---|---|
・社員の声の吸い上げ | ・「GEPPO」による月次調査 | ・働きがい実感87%達成 |
事例④ 兵庫ベンダ工業株式会社
自動販売機関連の製造を行う兵庫ベンダ工業株式会社では、従来いわゆる「ブルーカラー」の多い労働集約型の職場でしたが、人的資本経営に注力しエンゲージメント向上による職場改革を進めています。
同社は10年前から社内制度改革に着手し、近年は「ハイモチベーション」「雇用・働き方改革」「社会への還元」の3本柱で様々な施策を実施しています。
具体的には、従業員の働きがい把握のためのサーベイ導入、人事評価や報酬制度の改善、若手抜擢やベテラン活躍推進、テレワーク導入、採用手法の工夫など多方面から取り組みました。特に注力したのが離職率の低下で、新規採用よりも既存社員の定着に重きを置いています。
例えば、現場作業者にもチャレンジングな仕事を任せる仕組みや、成果を正当に評価する制度に刷新したことで、「頑張れば報われる」と社員が実感できるようにしました。また、社内コミュニケーション活性化のために意見交換の場を設けたり、相互承認の文化を推進したりして従業員同士が認め合う風土づくりを行っています。
その結果、以前に比べて社員の定着率が向上し、生産現場にも創意工夫や前向きな提案が増えるなど、組織の活力が高まっています。
■ビフォーアフター
課題 | 施策 | 結果 |
|---|---|---|
・労働集約型職場での離職率高止まり | ・サーベイ導入 | ・定着率向上 |
ワークエンゲージメント向上の注意点と落とし穴
ワークエンゲージメントを高める施策を進める際には、いくつか注意すべき点があります。善意で始めた施策が逆効果を生んでしまうリスクもあるため、慎重に取り組む必要があります。
過度な期待と押し付けのリスク
エンゲージメント向上は多くのメリットをもたらしますが、「魔法の解決策」として過度に期待しすぎたり、従業員に押し付けたりすることには注意が必要です。
経営側が「エンゲージメントスコアを上げろ」とプレッシャーをかけすぎると、社員は逆にストレスを感じ本末転倒な結果になりかねません。
また、上司が一方的にエンゲージメント向上策を押し付けるようなやり方は逆効果になります。例えば、「無理に盛り上げようとするイベントへの強制参加」や「トップダウンでの価値観の押し付け」は、社員の反発やシラケを招きエンゲージメントを低下させる恐れがあります。
エンゲージメント向上はあくまで手段であり、その先に社員と組織双方の幸福や成長があることを忘れず、押し付けにならないよう注意しましょう。
個人差への配慮の重要性
従業員と一口に言っても、価値観や働くモチベーションは人それぞれです。
エンゲージメントを語る際、「全員が仕事に情熱を燃やす状態」を理想と考えがちですが、実際には必ずしも全員がキャリアアップや自己実現を追求しているわけではないことに留意が必要です。
■個人の価値観別の配慮と施策
価値観のタイプ | 必要な配慮 | 適切な施策 |
|---|---|---|
成長志向型 | 挑戦機会の提供 | 研修制度 |
安定志向型 | 安定した環境の保証 | 雇用保障 |
ワークライフバランス重視型 | 柔軟な働き方の選択肢 | フレックス制度 |
貢献志向型 | 自身の価値を実感できる機会 | 社会貢献プロジェクト |
専門性志向型 | 専門性を深める環境 | 専門研修 |
中には「生活のために割り切って働いている」「与えられた範囲の業務だけ淡々とこなしたい」という人もいます。そういった従業員に対し、一律に「もっと情熱を持て」「主体性を発揮せよ」と求めると負担や反発を招きかねません。
重要なのは、多様な働き方・価値観を尊重し、それぞれに合ったアプローチを取ることです。従業員の価値観に合わせて、セグメント別の施策も検討すると良いでしょう。
継続的な取り組みの必要性
エンゲージメント向上は一朝一夕で成果が出るものではありません。そのため、施策導入直後に目に見える変化がなくても焦らず、粘り強く丁寧にPDCAを回していくことが大切です。
エンゲージメント向上に成功している企業ほど、中長期的視点で計画的な施策展開と定期的な効果測定・改善を行っています。トップマネジメントのコミットメントの下、腰を据えて継続する姿勢を示すことで、社員の信頼も高まり、協力的に施策に参加してくれるようになるでしょう。
エンゲージメントは組織文化とも深く結びついた指標であるため、長期的な文化醸成の一環と位置づけ、息長く取り組みを続けていきましょう。
ワークエンゲージメントの高い人材を採用するならback check
これまでワークエンゲージメントの定義から測定方法、向上施策まで詳しく解説してきました。自社の既存従業員のエンゲージメント向上は重要な取り組みですが、採用段階でエンゲージメントの高い人材を見極めることも同様に大切になります。
しかし、履歴書や面接だけでは候補者の実際の働きぶりや仕事への取り組み方を正確に把握することは困難です。「面接では熱意があるように見えたが、入社後は受け身で主体性に欠ける」といったミスマッチは少なくありません。このような課題を解決するには、候補者の過去の実績や働きぶりを客観的に把握できるリファレンスチェックが効果的といえるでしょう。
back check株式会社では、オンライン完結型のリファレンスチェックサービス「back check(バックチェック)」を提供しています。
back checkでは、公的公開情報・Web情報・個別調査によって候補者の申告内容に虚偽がないか、コンプライアンスリスクがないかなどを確認するコンプライアンスチェックと、候補者と過去一緒に働いたことがある元上司や同僚から評価を得ることで、入社後に顕在化する働きぶりやカルチャーマッチといった言語化しにくい情報を確認するリファレンスチェックを同時に実施できます。
特に、前職での仕事への取り組み姿勢や熱意、困難な状況での対応力、チームへの貢献度などは、候補者のエンゲージメントに関する参考情報となり得ます。組織全体のエンゲージメントを高める人材の採用のためにも、ぜひback checkの導入をご検討ください。


back check magazine 編集部
リファレンスチェック/コンプライアンスチェックサービス「back check」が手がけるコラム「back check magazine」の編集部です。採用担当のみなさまに向けて、役に立つ情報を発信していきます。










