目次オンボーディングとは?オンボーディングとは、新しく入社した従業員が組織に順応し、早期に活躍できるよう支援する一連のプロセスを指します。具体的には、業務に必要な知識やスキルの習得支援から、企業文化への理解促進、人間関係の構築までの総合的なサポートを行います。オンボーディングの具体的な例としては、入社直後のオフィスツアーや社内システムの使い方講習、歓迎会の開催、メンター制度の導入など、さまざまな取り組みがあります。特に中途採用者の場合、前職とのギャップに戸惑うことも多いため、段階的な支援が重要です。なお、オンボーディングは単なる新人研修とは異なります。入社後の一時的なサポートではなく、「定着」と「早期戦力化」という明確な目的を持った、計画的かつ継続的な取り組みが必要です。従業員が組織の一員として活躍できるまでの道筋を示し、必要なサポートを提供することが、新入社員のスムーズな組織への定着を実現します。関連記事:オンボーディングとは?実施するメリットや導入時のポイントを解説なぜ中途採用でオンボーディングが必要なのか?4つのメリットを解説中途採用者は、新卒採用者と異なり、すでに他社での経験や独自の仕事の進め方を持っています。そのため、前職での経験や習慣と、新しい職場での方針やルールとの間にギャップが生じやすく、適応に時間がかかることも少なくありません。また、新卒採用者は同期と一緒に入社することが多く自然と仲間意識が生まれやすいのに対し、中途採用者は一人で入社することが多く、人間関係の構築に課題を抱えがちです。このような中途採用特有の課題に対して、オンボーディングは大きな効果を発揮します。定着率の向上人材会社のエン・ジャパンの調査によると、中途採用者が最も退職しやすい時期は「3カ月未満」という結果が出ています。短期間で離職が起こる主な理由としては「仕事内容や責任が期待と異なる」「社風が思っていたものと違う」などが挙げられます。参考:「中途入社者の定着」実態調査(2024)|エン・ジャパン株式会社(取得日:2025年3月6日)これら入社前後のギャップに対するオンボーディング施策としては、入社前からの丁寧な期待値のすり合わせ、入社後の継続的なフォローアップが効果的です。具体的には、定期的な1on1面談を通じて不安や困りごとを早期に把握し、適切なサポートを提供すると良いでしょう。これにより中途採用者が抱える不安や不満が解消され、定着率の向上につながります。関連記事:中途採用者がすぐ辞める7つの原因!定着率を高める施策11選を解説人間関係の構築中途採用者は、すでに形成されている職場の人間関係の中に一人で飛び込むことになります。「既存の人間関係に入っていけるだろうか」「自分の立ち位置はどうなるのか」といった不安を抱えやすく、孤立感を感じることも少なくありません。オンボーディングの施策としては、メンター制度や部署間交流会など、意図的に対話の機会を設けることが解決策となります。例えば、メンターとの定期的な対話は、業務上の相談だけでなく、職場の雰囲気や暗黙のルールを学ぶ機会となります。また、部署を超えた交流は、幅広い人脈形成につながり、結果として組織全体のコミュニケーションも活性化します。不安の解消中途採用者が抱える不安は、業務面と組織風土面の大きく2つに分けられます。業務面では「自社特有のシステムや業務フローをマスターできるか」「求められる成果水準に達せるか」といった不安が、組織風土面では「社風に馴染めるか」「暗黙のルールに適応できるか」といった不安が代表的です。業務面の不安に対しては、段階的な業務習得計画の提示や、OJTを通じた実践的なトレーニングを実施します。「まずは〇〇までに△△ができるようになる」といった具体的な目標設定により、中途採用者は自身の成長過程を実感しやすくなるでしょう。また、組織風土面の不安に対しては、入社時のウェルカムランチや定期的な1on1面談など、フランクなコミュニケーションの場を設けることが効果的です。特に、同じく中途入社した先輩社員と対話させることで、「自分も順応できる」という安心感を抱かせることができます。中途採用者の早期戦力化中途採用者には即戦力としての活躍が期待されますが、どれだけ経験豊富な人材でも、新しい環境では一定の適応期間が必要です。効果的なオンボーディングを実施することで、この適応期間を最小限に抑え、早期の戦力化を実現できます。具体的には、前職での経験やスキルを活かせる業務から着手し、徐々に自社特有の業務にシフトしていく段階的なアプローチが有効です。また、業界や職種の経験が豊富な人材であっても、自社の仕事の進め方や営業スタイルなどについては丁寧な説明が必要です。このように初めから自社のやり方を押し付けすぎず、中途採用者の意見やスタイルも配慮することで、企業への信頼感が高まりスムーズな適応を促せます。経験とスキルを持った人材の力を最大限に引き出すためにも、中途採用者との適切な接し方を心がけましょう。オンボーディング施策の具体例10選中途採用者の早期戦力化と定着を促進するため、さまざまなオンボーディング施策があります。ここでは、すぐに実践できる具体的な施策を10個紹介します。企業の規模や状況に応じて、自社に合った施策を選択・カスタマイズしてください。関連記事:オンボーディング施策とは?目的や実施方法、成功のための9つのポイントを解説①社内情報の提供入社時に必要な情報をまとめた「ウェルカムパック」の作成が効果的です。就業規則、福利厚生制度、組織図、業務マニュアルなどを1つのパッケージにまとめ、デジタルとプリントの両方で提供しましょう。社内の制度やその申請手続き、社内システムの利用方法など、日常的に必要な情報は図解や動画を活用してわかりやすく説明できると良いでしょう。また、よくある質問(FAQ)をまとめておくことで、中途採用者が都度確認に来る手間を省くことができます。②オフィスツアーオフィスツアーは入社前の不安を解消する目的があるほか、入社への期待感を高める効果を持ちます。各フロアや会議室、備品の利用ルールなど、日々の業務に必要な情報を提供しながら、各部署の雰囲気も体感できる重要な機会です。ツアーの際はフロアマップを配布し、重要なポイントをメモできるようにしましょう。適宜質問を受けつけたり、近くの社員とコミュニケーションを取ったりすると、より中途採用者の不安解消に繋がるでしょう。③事前学習資料の提供入社前から学習をスタートできるよう、必要な資料を事前に提供することも効果的です。中途採用者は新たな環境に早く適応しようと考え、入社前になにかできることは無いかと不安になっている場合もあります。そんな場合は、会社側から学習資料を提供することで、中途採用者の期待に応えることができるでしょう。提供すべき具体的な教材としては、業界知識、自社の商品・サービス情報、基幹システムのマニュアルなどが該当します。ただし、中途採用者の経験やスキルレベルは様々です。一律の資料提供ではなく、前職での経験や担当予定の業務に応じて、必要な資料を選別して提供することが重要です。④アンケートの実施定期的なアンケートにより、中途採用者の不安や要望を把握します。入社直後、1ヶ月後、3ヶ月後など、段階的に実施することで、時期による課題の変化を把握することが可能です。アンケートでは、「業務理解度」「人間関係」「社内制度の理解」など、複数の観点から状況を確認します。また、自由記述欄を設け、具体的な改善要望も収集しましょう。収集した意見はオンボーディング施策の改善に活用し、PDCAサイクルを回していくことが重要です。⑤部署紹介各部署の業務内容や役割、キーパーソンを紹介することで、組織全体における自身の立ち位置を理解しやすくなります。特に、直接的な協業が想定される部署については、具体的な連携方法や窓口担当者を明確に伝えましょう。部署紹介では組織図だけでなく、実際の業務フローの中で各部署がどのように関わっているかを示すことが重要です。これにより、中途採用者は自身のスキルや経験をどのように活かせるか、具体的なイメージを持つことができます。⑥歓迎会歓迎会は、新しい職場での人間関係構築の重要な機会です。ただし、会社や部署単位の大規模な飲み会だけでなく、少人数でのランチ会や、オンラインでの座談会など、参加しやすい形式を選択することが重要です。例えば、入社初日のウェルカムランチでは、直属の上司や同じチームのメンバーと気軽な雰囲気で交流できます。また、リモートワークが増えた現在は、オンラインでの歓迎会も一般的になっています。画面共有を使った自己紹介や、オンラインゲームを取り入れるなど、工夫次第で効果的なコミュニケーションが可能です。⑦OJT制度OJT(On the Job Training)は、実務を通じて必要なスキルや知識を習得する育成方法です。中途採用者の場合、前職での経験を活かしながら、その会社独自の業務プロセスや商習慣を学ぶことができます。教育係の選定では、業務スキルだけでなく、教育経験や指導力も重視しましょう。また、定期的な進捗確認や評価面談を設け、習得状況に応じて指導内容を調整することが重要です。教育係の負担軽減のため、業務分担の調整や指導時間の確保など、周囲のサポート体制も整えましょう。⑧メンター制度メンター制度は、OJTのような実務指導ではなく、キャリア相談や精神的なサポートを主な目的とします。特に中途採用者は、前職との違いに戸惑うことも多いため、気軽に相談できる「相談役」の存在が重要です。メンターは、直属の上司以外から選任し、一般的には月1回程度の定期面談を設定します。選任の際は、入社時期が近い先輩社員や、同様の転職経験を持つ社員を起用することで、より共感的なサポートができるでしょう。面談では業務上の悩みだけでなく、キャリアプランの相談や、職場での人間関係についても率直な対話ができる関係性を目指すことが大切です。⑨研修中途採用者向けの研修は、自社の業務プロセスや組織文化への理解を深める重要な機会です。eラーニングによる基礎知識の習得、対面でのグループワーク、実践的なケーススタディなど、目的に応じて適切な形式を選択します。研修内容は、中途採用者の経験レベルや職種に応じてカスタマイズすることが効果的です。また、研修後のフォローアップテストや実務での活用度チェックを通じて、学習効果を測定し、必要に応じて追加の支援を行います。⑩定期的な面談定期面談は、中途採用者の適応状況を確認し、早期に課題を発見・解決するための重要な機会です。入社後1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月など、段階的に実施することで、時期による課題の変化も把握できます。面談のやり方は、直属の上司による業務面のフォローと、人事部による組織適応面のフォローを使い分けることができます。特に入社後3ヶ月間は月1回程度の頻度で実施し、業務の理解度や人間関係の構築状況、不安や悩みなどを丁寧にヒアリングしましょう。面談結果は記録に残し、次回の面談や施策改善に活用することが重要です。【お役立ち資料】中途入社者の早期活躍を促進し定着率を向上させるオンボーディング実践例オンボーディングを成功させるための4つのポイント効果的なオンボーディングを実現するには、個々の施策を単に実施するだけでなく、組織全体での取り組みとして推進することが重要です。ここでは、オンボーディングを成功に導くための4つの重要なポイントを解説します。計画的かつ継続的な実施オンボーディングは、入社直後の数日間で完結するものではありません。3ヶ月、6ヶ月、1年といった中長期的な視点で、段階的な計画を立てることが重要です。具体的には、入社前~入社当日、入社当日~1週間後、1週間後~1ヶ月後、1ヶ月後~3ヶ月後といった時系列で、実施する施策とゴールを明確にします。また、定期的なアンケートや面談を通じて効果を測定し、PDCAサイクルを回しながら継続的な改善を図ることが成功への鍵となります。オンボーディング担当者を専任するオンボーディングを効果的に進めるには、全体を統括するオンボーディング専任担当者を設けることをおすすめします。専任担当者は、中途採用者の状況を一元的に把握し、必要なサポートを適切なタイミングで提供する役割を担います。また、各部署との調整や情報共有の窓口として機能し、「この件は誰に相談すればよいのか」という中途採用者の疑問にもスピーディに対応できるでしょう。特に大規模な組織では、部署間の連携をスムーズにする「橋渡し役」として重要な存在となります。関係部署との連携強化オンボーディングの成功には、人事部門だけでなく、配属部署の管理職、既存社員、さらには経営層も含めた組織全体での連携が不可欠です。各部門が持つ知見や課題認識を共有し、より効果的なプログラムを構築することが重要です。例えば、月1回の定例会議で各部署の担当者が集まり、中途採用者の状況や課題を共有する場を設けることが効果的です。また、情報共有プラットフォームを活用し、リアルタイムで状況を把握・対応できる体制を整えましょう。ツールの活用デジタルツールを活用することで、オンボーディングの効率化と質の向上を図ることができます。例えば、社内SNSやチャットツールは、気軽な質問や相談を可能にし、中途採用者の不安解消に役立ちます。また、タスク管理ツールで習得すべきスキルや研修の進捗を可視化したり、ナレッジ管理システムで業務マニュアルや社内規定を一元管理したりすることで、必要な情報へのアクセスが容易になります。特にリモートワークが増加している現在、これらのツールは円滑なコミュニケーションを支える重要なインフラとなっています。オンボーディングの成功事例3選先進的なオンボーディング施策を展開している企業の事例から、実践的なヒントを学びましょう。ここでは、規模や業態の異なる3社の特徴的な取り組みを紹介し、自社のオンボーディング改善のヒントとしてください。事例① メルカリメルカリでは、新入社員一人ひとりにメンターを配置し、業務指導だけでなく、キャリア形成や会社生活への適応まで幅広くサポートしています。コロナ禍では、メンターによるオンラインランチのセッティングなど、環境変化にも柔軟に対応。また、ITの開発者が協同でアプリやシステムを開発するイベント「#MercariHackWeek」を通じて、部署を超えた交流も促進しています。特筆すべきは、技術領域ごとにKPIを設定し、サーベイで進捗を確認する仕組みです。データに基づいて一人ひとりの状況を把握し、個別の課題に応じた支援を提供することで、早期戦力化を実現しています。参考:「全てのエンジニアに最高の従業員体験を」メルカリEngineering Officeってどんなチーム? #メルカンバトン|株式会社メルカリ(取得日:2025年3月7日)参考:「すべての新入社員に素晴らしいオンボーディング体験を」リモートオンボーディングを成功させる施策 #メルカリの日々|株式会社メルカリ(取得日:2025年3月7日)事例② Sansan株式会社Sansanのカスタマーサクセスの考え方の特徴は、「組織」「人」「ビジョン」の3つの観点から状況を分析し、個々の状況に合わせた支援を提供する点です。この考えを自社の新入社員へのオンボーディングにも自然と応用できているのか、配属後研修ではメンターやマネジャーが一人ひとりの新入社員に寄り添い、新人一人で悩ませないよう的確に助言を行っています。配属後1ヶ月間は、部門の基礎知識やツールの使い方に加え、ロールプレイングやアポイントメント目標の設定など、実践的なスキル習得に重点を置いています。その中でメンターやマネジャーが都度、具体的な不足点を示し、乗り越えるという成功体験を積み重ねることで、未経験からの中途採用であっても、本配属時にはうまくスタートを切ることができているようです。さらに、「Sansan ファミリーデー」など、社員の家族も参加できるイベントを開催し、会社への理解促進と一体感の醸成を図っている点も注目ポイントです。このような包括的なアプローチにより、中途人材の高い定着率を実現しています。参考:スキルとコミュニケーションで入社後の活躍を支援。Sansanの配属後研修|Sansan株式会社(取得日:2025年3月7日)参考:「Sansanファミリーデー」を開催しました!|Sansan株式会社(取得日:2025年3月7日)事例③ 株式会社サイバーエージェントサイバーエージェントでは、その月に入社した中途社員全員を対象にしたオンボーディングの機会を設けており、経営陣自らが「サイバーエージェントが大事にしているカルチャー」を直接説明しています。直接話を聞けることで、中途採用者は企業のビジョンや戦略、思いをより深く理解することができます。入社3ヶ月以内の中途社員を対象に、同期とのランチ代を補助する制度もあります。企業側がヨコの繋がりを作りやすいようサポートすることで、いち早く組織に順応していくことが可能になります。また、プレコンセプションケアの普及イベントや、働き方を考える冊子の発行など、社員のエンゲージメント向上を目的とした多様な取り組みも展開しています。自社の成長段階に応じて人事戦略を柔軟に変更し、常に最適な育成の仕組みを構築している点も、同社の強みといえるでしょう。参考:サイバーエージェントにエンジニアが中途入社すると?|CyberAgent|エンジニア採用広報(取得日:2025年3月7日)参考:【後編】高い満足度とロイヤリティ向上に繋がる社内施策の考え方「CAramel サイクル」|CyberAgentWay(取得日:2025年3月7日)オンボーディングしやすい人材を見極めるならback checkこれまで見てきたように、中途採用者の早期戦力化と定着には、効果的なオンボーディングが不可欠です。しかし、どれだけ充実したプログラムを用意しても、そもそも組織に適応できる素質を持った人材を採用できなければ、期待する効果は得られません。オンボーディングの成否を左右する重要な要素の一つが、候補者の適性を事前に見極めることです。面接だけでは把握しきれない、実際の働きぶりやコミュニケーションスタイルを確認するには、リファレンスチェックが効果的です。株式会社ROXXでは、オンライン完結型のリファレンスチェックサービス「back check(バックチェック)」を提供しています。back checkでは、前職の上司や同僚からの客観的な評価を通じて、チームワークの取り方や新しい環境への適応力、コミュニケーションスタイルなど、オンボーディングの成否を左右する重要な情報を事前に把握できます。さらに、候補者の職務経歴や実績に関する事実確認も同時に行えるため、より多くの視点から人材の見極め判断が可能となります。これにより、より適切なオンボーディングプランの策定や、入社後のフォロー体制の構築に活かせる具体的な情報を得ることができます。オンボーディングの成功には、組織への適応力が高く、柔軟な姿勢を持った人材を見極めることが重要です。back checkを活用することで、入社後の適応をスムーズにし、オンボーディングの効果を最大限に高めることができます。中途人材の定着や戦力化を促し、組織の強靭化を図るためにもぜひback checkの導入をご検討ください。