経歴詐称や学歴詐称で問われる責任とは?発覚の流れや採用後の対策を徹底解説

更新日:2026/6/18

執筆者:back check magazine 編集部

経歴詐称

この記事のまとめ(要約)

経歴詐称・学歴詐称は、場合によっては詐欺罪や文書偽造、損害賠償につながる可能性があります。発覚の流れや企業の対応、防止策を解説します。

採用を担当されている方の中には、経歴詐称や学歴詐称をした候補者を採用してしまった経験がある方も少なくないのではないでしょうか。経歴詐称や学歴詐称を行う理由は人それぞれですが、少しでも自分をよく見せて内定を得たい、より良い条件で採用されたいと考え、軽い気持ちで詐称してしまうケースもあります。しかし、そのような候補者を採用した結果、企業に大きな影響を及ぼすことも少なくありません。
本記事では、経歴詐称や学歴詐称について解説するとともに、発覚する流れや発覚後の対応方法について詳しくご紹介します。採用担当の方は、ぜひ参考にしてみてください。

監修者

中澤 泉

弁護士/合同会社ことりうみ代表

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目次

経歴詐称・学歴詐称とは

まずは経歴詐称や学歴詐称の基本を押さえていきましょう。経歴詐称や学歴詐称の意味を明確にし、経歴や学歴を申告する重要性を解説します。

経歴詐称・学歴詐称の定義

経歴詐称とは、職務経歴に関する虚偽の情報を記載する行為を指します。具体的には、勤務先、雇用形態、職務内容、在籍期間、転職回数、資格、役職などを偽る行為がこれに該当します。

一方、学歴詐称とは、自身の学歴に関して虚偽の申告を行うことを指します。これは、実際よりも高い学歴を装うケースだけでなく、逆に学歴を低く見せるケースも含まれます。例えば、「高校卒業」を「大学卒業」と偽ることはもちろん、「大学卒業」を「高校卒業」とするケースもあります。後者は、特定の採用基準に適合するために行われることがあり、いずれも詐称に該当します。

関連記事:経歴詐称をした人の末路は?候補者が経歴詐称をする理由

履歴書や職務経歴書における記載の重要性

履歴書や職務経歴書は、採用の意思決定を行う上で極めて重要な資料です。企業は、これらの情報をもとに応募者のスキルや経験が自社の求める人材と適合しているかを判断します。そのため、履歴書や職務経歴書に虚偽の内容が含まれていると、誤った情報を前提に選考を進めることになり、適切な採用判断ができなくなってしまいます。

経歴詐称・学歴詐称で問われる責任

経歴詐称や学歴詐称が発覚すると、企業だけでなく、詐称した本人にも重大な影響を及ぼします。企業は、求めていたスキルを持たない人物を採用することで業務遂行に支障をきたし、組織全体の生産性が低下する可能性があります。さらに、職場の信頼関係が崩れることで、他の社員にも悪影響を及ぼしかねません。

この章では、経歴詐称・学歴詐称によって問われる可能性のある責任について解説します。

詐欺罪

詐欺罪は、人を欺いて財物を交付させたり(刑法第246条第1項)、財産上不法の利益を得たりする犯罪です(同条第2項)。

もっとも、経歴を詐称して採用されたというだけで直ちに詐欺罪が成立するわけではありません。例えば、医師や弁護士のように高度な資格が契約の条件となる職種で、資格手当などその資格に対して支払われた場合などには、詐欺罪が成立する可能性があります。

文書偽造の罪

採用選考の際に提出を求められた書類を偽ると、私文書偽造や公文書偽造の罪に問われる可能性があります。

  • 私文書偽造
    私文書偽造は、行使の目的をもって、他人の印章・署名を使用して、権利・義務または事実証明に関する文書を偽造した場合に成立する犯罪です(刑法第159条)。
    通常、履歴書や職務経歴書では作成名義人を偽ることはないため、私文書偽造罪は成立しないと考えられます。しかし、他人の卒業証明書や資格の取得証明書を自分の名前に書き換えた場合は、私文書偽造罪に抵触する可能性があります。

  • 公文書偽造
    公文書偽造は、行使の目的をもって、公務所・公務員の印章・署名を使用して、公文書・公図画を偽造・変造すること、偽造した公務所・公務員の印章・署名を使用して公文書・公図画を偽造・変造した場合に成立する犯罪です(刑法第155条)。履歴書や職務経歴書は公文書ではないため、公文書偽造罪は成立しないと考えられます。しかし、健康保険証、運転免許証、住民票などの公的な文書を偽造・変造した場合は、公文書偽造罪に問われる可能性があります。

軽犯罪法違反

軽犯罪法は、日常生活上の秩序違反を規制する法律です。

軽犯罪法第1条では「左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。」と定められており、その第15号には、以下の規定があります。

「官公職、位階勲等、学位その他法令により定められた称号若しくは外国におけるこれらに準ずるものを詐称し、又は資格がないのにかかわらず、法令により定められた制服若しくは勲章、記章その他の標章若しくはこれらに似せて作つた物を用いた者」

したがって、公務員でないにもかかわらず、公務員と名乗るなど、官公職であるかのように肩書を偽るなどの場合、軽犯罪法違反に問われる可能性があります。

民事責任

上記の通り、経歴詐称や学歴詐称は刑事事件に発展する場合もありますが、その多くは、民事責任を追及されることが考えられます。

例えば、業務と直接関係のある資格を保有していると虚偽申告し、採用されたことで会社に損害を与えた場合、損害賠償請求を受ける可能性があります。また、募集要件として学歴が指定されていたにもかかわらず、虚偽の学歴を申告し、採否の判断に重大な影響を与えた場合、懲戒解雇などの処分が下される可能性があります。

経歴詐称・学歴詐称が発覚する経緯

経歴詐称や学歴詐称が発覚する経緯はさまざまですが、採用前に発覚するケースは稀であり、リファレンスチェックなどを実施しない限り、多くは採用後に発覚する傾向にあります。本人からの申告や同僚・関係者からの情報提供があれば良いですが、企業が積極的に調査を行わない限り、発覚が遅れることも少なくありません。

具体的にどのような場面で経歴詐称・学歴詐称が発覚するか、確認していきましょう。

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同僚・関係者からの指摘

採用後、実際の業務を行う中で、スキルや経験に明らかな不足を感じたり、履歴書に記載された実績と実際の能力に乖離があることに気づいたりした同僚や上司が不審に思うことがあります。

採用時に経験者であると申告していたのに、業務分野の基本的なスキルや知識が欠けている場合、疑念を抱かれることが多いです。このような違和感をきっかけに調査を行った結果、経歴詐称が発覚するケースが考えられます。

公的データやSNSによる発覚

企業が公的なデータベースを参照した際、申告内容と実際の学歴・職歴の矛盾が判明することがあります。また、採用者のSNS投稿で過去の職歴や学歴について言及していて、その投稿内容と履歴書の内容に矛盾があった場合に調査に発展して発覚することがあります。

関連記事:採用でSNSチェックは必要?採用でSNS調査を行う企業が増えている理由と注意点

外部からの通報

以前の勤務先の同僚や大学関係者からの情報提供をきっかけに調査が行われ、詐称が明らかになることがあります。特に、著名な企業や専門職に就いた際、ホームページ等で経歴を公表することがあります。その際、過去の関係者の目に留まり、経歴が実際と異なっていることが発覚し、指摘される場合があるのです。

資格や免許の確認時

業務を遂行する上で特定の資格や免許が必要な職種では、企業が正式な証明書等の提出を求めることがあります。この際に、業務遂行に必要な資格や免許を持っていないことが判明し、そこから学歴や職歴の詐称が疑われるケースもあります。

社内チェックやリファレンスチェック

採用プロセスの一環として、企業が候補者の職歴や学歴を確認することがあります。リファレンスチェックや、大学・前職への照会で詐称が判明することも少なくありません。

リファレンスチェックとは、候補者の過去の職歴や働きぶり、スキル、実績などを確認するために、前職の上司や同僚などに問い合わせを行うプロセスのことを指します。企業が採用時に実施することで、履歴書や面接での申告内容が正確であるか、実際にどのような業務を担当していたかを客観的に判断する材料となります。

経歴詐称・学歴詐称が採用後に発覚した場合の対応

採用後に経歴詐称や学歴詐称が発覚した場合、企業は迅速かつ適切な対応を求められます。

まず、事実確認を行い、本人に弁明の機会を与える必要があります。その上で、雇用契約書や就業規則に基づき、懲戒処分の可否を判断し、重大な場合には解雇も検討することが考えられます。特に、資格要件に関わる場合は業務遂行能力に直接影響を及ぼすため、厳格な対応が求められます。

詳しくみていきましょう。

懲戒解雇について

懲戒解雇は、制裁として行われる解雇であり、懲戒処分の中で最も重い措置です。懲戒解雇の場合でも、原則として30日前の解雇予告、または30日分以上の解雇予告手当が必要です(労働基準法第20条)。予告も手当もなく即時に解雇するには、「労働者の責めに帰すべき事由」があるとして、あらかじめ所轄労働基準監督署長の解雇予告除外認定を受ける必要があります。また、退職金についても、当然に不支給となるわけではなく、退職金規程の定めや事案により、不支給・減額が認められるかが判断されます。また、懲戒解雇となると、再就職時の印象も悪くなり、再就職が困難となる可能性があります。

一方で、懲戒解雇は労働者に重大な不利益を及ぼすため、その適法性は厳格に判断されます。前提として、就業規則などに懲戒事由が定められていることが必要です。また、懲戒の対象となる経歴詐称は、最終学歴・職歴・犯罪歴など「重要な経歴」の詐称に限られると考えられています。

そして労働契約法15条は、懲戒が、労働者の行為の性質・態様その他の事情に照らして客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合には、権利濫用として無効になると定めています。懲戒解雇を行う際は、この観点から相当性を慎重に検討する必要があります。

経歴詐称・学歴詐称と懲戒処分の裁判例

経歴詐称や学歴詐称は、多くの就業規則において「重大な詐称」として懲戒事由に該当するものと扱われます。裁判例でも、経歴詐称が使用者による労働力の評価を誤らせ、労使の信頼関係や資金体系・人事管理を混乱させる危険があるとして、実害の発生を問わず企業秩序違反となりうるとし、懲戒の対象となることを認めています(炭研精工事件・最判平成3・9・19労判615号16頁)。

関連記事:経歴詐称が発覚した場合、懲戒解雇はできる?判例とあわせて対処法を解説

企業が被る損失と対応の課題

経歴詐称や学歴詐称が発覚した場合、企業は採用者を懲戒処分にすることも内容次第では可能ですが、その対応には人的コストがかかります。また、企業が採用活動を行う目的は不足した人員を補充するためであり、経歴詐称や学歴詐称が発覚した後には新たに人員を採用しなければならず、そのためのコストや人的リソースが必要となります。よって、企業に対して、大きな損失を及ぼすことは避けられない状況となるでしょう。

💡 弁護士:中澤 泉からのワンポイント解説

「経歴詐称イコール懲戒解雇」とは限りません。懲戒の対象は「重要な経歴」の詐称に限られ、懲戒解雇でも原則として解雇予告や予告手当が必要です。慌てて即時解雇に踏み切ると、かえって紛争を招きかねません。就業規則の整備と、採用段階での確認・防止策をおすすめします。

経歴詐称・学歴詐称を採用前に防ぐために企業ができること

ここまでで経歴詐称・学歴詐称が実際に起こってしまうことは、企業にとって大きなデメリットであることがお分かりいただけたと思います。

それでは、企業は採用前にどのような対策を講じることで、経歴詐称や学歴詐称を防ぐことができるのでしょうか。企業が取るべき対策について、以下を紹介します。

履歴書・職務経歴書を慎重に確認

まず、候補者が提出した履歴書や職務経歴書に不自然な空白期間や不審な記載がないかを慎重に確認することが重要です。特に、職務経歴の一貫性をチェックし、短期間での転職が多い場合は理由を明確にするためのヒアリングを行う必要があります。また、必要に応じて、記載された資格が実際に取得可能なものか、それぞれの機関に問い合わせることも有効な対策の1つとなります。

面接での質問の工夫(具体的な職務内容の掘り下げ)

面接では、過去の業務内容について「具体的なエピソード」や「担当したプロジェクトの詳細」を尋ねることで、実務経験の信憑性を確認することが重要です。

例えば、どのような課題に直面し、それをどのように解決したのかを深掘りすることで、実際の経験が真実かどうかを見極めることに役立ちます。候補者の回答が具体性に欠ける場合、経歴を誇張している可能性も考えられるため、慎重に判断しましょう。

リファレンスチェック・コンプライアンスチェックの活用

リファレンスチェックでは、前職の上司や同僚に対し、候補者の勤務実態や実績についての評価を得ることが可能です。これにより履歴書や職務経歴書だけでは把握できない、実際の勤務状況をより具体的にイメージすることができるでしょう。なお、応募者の経歴は個人情報にあたるため、本人以外から情報を取得するリファレンスチェックやコンプライアンスチェックを行う際は、個人情報保護法や職業安定法の指針に基づき、あらかじめ本人の同意を得て実施する必要があります。

また、近年、リファレンスチェックに加えて、コンプライアンスチェックサービスも導入する企業が多くなっています。

コンプライアンスチェックとは、採用時における候補者の申告内容に虚偽の情報がないか、コンプライアンスリスクがないかなどを調査することです。自社での実施も可能ですが、調査すべきデータベースは膨大であり、法律等も関わる複雑な業務となるため、外部サービスの利用がおすすめです。

提供する会社によって内容は異なりますが、一般的には反社会的勢力との関係性の有無、経歴調査、保有資格の有無などの調査を行うことが可能となります。

関連記事:コンプライアンスチェックとは?コンプライアンスチェックの必要性を解説

このように、外部サービスを利用することも、経歴詐称や学歴詐称を採用前に防ぐための有効な手段になりえます。

経歴詐称・学歴詐称を未然に防ぐならback check

以上のように、経歴詐称や学歴詐称の候補者を採用してしまった場合、懲戒解雇を検討することは可能ですが、企業にとっても大きな影響を及ぼす可能性があります。

また、候補者にとっても懲戒解雇は重大な不利益となるため、可能な限り未然に防ぐことが重要です。

履歴書・職務経歴書を慎重に確認し、面接での質問を工夫したとしても、完全に経歴詐称や学歴詐称を防ぐことは難しい場合があります。そのため、外部サービスも活用しながら、適切な採用選考を実施できる体制を整えることが大切です。

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監修者

中澤 泉

弁護士/合同会社ことりうみ代表

2015年に中央大学法科大学院を修了し、2016年に弁護士資格を取得。弁護士事務所で債務整理・交通事故・離婚・相続など幅広い案件を担当後、大手メーカーのインハウスローヤーを経て、現在は弁護士として主に企業法務に携わる。傍らでライターとしても活動し、2025年に合同会社ことりうみを設立。法律記事の執筆・監修を手がけている。専門性と読みやすさを両立したコンテンツ制作が強み。

よくある質問

back check magazine 編集部

リファレンスチェック/コンプライアンスチェックサービス「back check」が手がけるコラム「back check magazine」の編集部です。採用担当のみなさまに向けて、役に立つ情報を発信していきます。

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