人時生産性とは?計算方法や向上施策6選に加え効果的な人材配置のポイントを解説
少子高齢化による労働人口の減少や、働き方改革による労働時間の制約が進む中、企業における生産性の向上は喫緊の課題となっています。
日本生産性本部の調査によると、日本の一人当たり労働生産性は主要先進7カ国中で最下位となっており、1人あたりの労働生産性を高めることが企業の存続と成長に不可欠とされています。
その生産性向上のためのひとつ指標として注目されているのが「人時生産性」です。
本記事では、人時生産性の基本的な考え方から、業界平均値、具体的な向上施策、適材適所の人材配置まで、実務に役立つ情報を詳しく解説します。人事担当者の方はもちろん、経営層の方々もぜひご一読ください。
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目次
- 人時生産性とは
- 人時生産性の定義
- 労働生産性・人時売上高との違い
- なぜ今、人時生産性の向上が求められているのか
- 人時生産性の計算方法と業界平均
- 業種別の人時生産性の平均値
- 人時生産性を向上させるメリット
- 経営効率の向上
- 従業員の定着率の向上
- 社会的評価の向上
- 人時生産性向上に取り組むデメリットと注意点
- 過剰な効率化によるミスの発生やイノベーションの阻害
- 企業文化との衝突
- 人時生産性を下げる要因と課題
- 業務プロセスの非効率性
- 人材配置のミスマッチ
- 従業員のモチベーション低下
- 部門間連携の不足
- 人時生産性を向上させる6つの施策
- 業務の可視化と効率化
- 適材適所の人材配置
- 社内コミュニケーションの改善
- 従業員エンゲージメントの向上
- 適切な人事評価制度の運用
- 人材育成制度の構築
- 人時生産性を高める人材の採用にはback check
人時生産性とは

人時生産性とは、労働者1人が1時間あたりにどれだけの価値を生み出しているかを表す指標です。
企業の利益創出力や競争力を測るための重要な経営指標として、人時生産性は注目されています。こちらで人時生産性の基本的な要素を解説していきます。
人時生産性の定義
人時生産性とは、従業員一人一時間あたりの付加価値額を示す指標です。具体的には、企業の付加価値額を総労働時間で割ることで算出します。
付加価値額は一般的に粗利益などに置き換えられることが多いです。人時生産性を向上させることで、以下のようなメリットが期待できます。
収益力の向上
人件費の最適化
従業員一人あたりの生産性向上
企業の競争力強化
労働生産性・人時売上高との違い
人時生産性と似た概念に「人時売上高」と「労働生産性」がありますが、それぞれ以下のような違いがあります。
人時生産性 | 人時売上高 | 労働生産性 | |
求めるもの | 従業員一人一時間あたりの付加価値額 | 従業員一人一時間あたりの売上高 | 従業員一人あたりの付加価値額 |
人時生産性は、時間単位での付加価値を表す指標です。生産性を測る指標の中でも、個人の生産性に着目しているため、より実質的な企業の収益力を測ることができます。社内の内部効率や付加価値創出を重視します。
人時売上高は原価等は考慮せず、売上高に注目します。営業効率を重視する際に使用し、例えば同社の店舗ごとの収益性を比較評価する際などに使うと良いでしょう。
労働生産性は、年間や月間などの単位で従業員一人あたりの付加価値額を検証する際に利用されます。
なぜ今、人時生産性の向上が求められているのか
人時生産性の向上は、現代の企業経営における最重要課題の一つとなっています。
その背景には、深刻な社会課題である少子高齢化があります。
総務省の調査(※1)によると、1995年のピーク時には約8700万人だった日本の生産年齢人口は、2030年には約6,800万人まで減少すると予測されています。このような状況下では、現在と同じだけの人手確保は難しく、一人あたりの生産性を高めることが企業の存続のために必須の条件となります。
また、働き方改革の推進により、労働時間の上限規制や有給休暇の取得促進が進んでいる点も見逃せません。
限られた時間でより多くの価値を生み出すためには、業務効率の向上が不可欠です。同時に、最低賃金の引き上げや人材獲得競争の激化により人件費は年々上昇しており、人材投資に見合った生産性の向上も求められています。
※1 参考:令和4年度版 情報通信白書 生産年齢人口の現象|総務省
人時生産性の計算方法と業界平均
人時生産性を正確に把握し、向上させるためには、まず適切な計算方法を理解する必要があります。
ここでは具体的な計算式と、業種別の平均値を解説します。
人時生産性の基本計算式
人時生産性は、1時間あたりの粗利を表す指標です。以下の計算式で算出することができます。
■人時生産性(円)= ①粗利 ÷ ②総労働時間
①粗利 = 売上高 - 売上原価(仕入れや製造にかかった費用)
②総労働時間 = 従業員数 × 労働時間
具体的な計算例を以下に示すので、参考にしてみてください。
【A社の年間データ】
売上高:5億円
売上原価:3億円
従業員数:100人
一人あたりの年間労働時間:2,000時間
【計算手順】
①粗利の計算
5億円 - 3億円 = 2億円
②総労働時間の計算
100人 × 2,000時間 = 200,000時間
③人時生産性の計算
2億円 ÷ 200,000時間 = 1,000円/時間
業種別の人時生産性の平均値
中小企業庁による調査(※2)によると、2021年における中小企業の業種別の平均人時生産性は以下の通りとなっています。
製造業:2,837円
小売業:2,444円
宿泊業:2,805円
飲食業:1,902円
自社の人時生産性を評価する際は、これらの業界平均値を参考にしてみましょう。人時生産性の目標設定をする際のひとつの目安として活用できます。
また、これらの数値はあくまで業種の平均値となります。取り扱うサービスの単価や従業員の稼働状況によって、数値は大きく変わることを頭に入れておきましょう。
人時生産性を向上させるメリット
人時生産性を上げることで、企業はどのようなメリットを享受できるのでしょうか。
経営効率の向上
人時生産性が向上した場合、同じ成果をより短い時間で達成できるため、人件費や電気などのエネルギーコストの削減が可能になります。
効率の良い運営が可能になることで、価格競争や納期対応で他社より優位に立てる上、生産性向上による収益増加を、新しいプロジェクトや技術への投資に回せる好循環が生まれます。
従業員の定着率の向上
従業員の定着率が低いままだと、常に新しい人材を募集しなければならず、採用コスト・教育コストが余計にかかってしまいます。
人時生産性が向上した場合、従業員は企業に定着しやすくなり、不要なコストがかからなくなります。
人時生産性を上げる過程で不要な作業を削減することで従業員のストレスは軽減されます。効率的に働けることで残業が減り、ワークライフバランスを実現できるようになるでしょう。
関連記事:社員の定着率を上げる方法は?成功事例と7つの施策で定着率改善を実現
社会的評価の向上
人時生産性が向上することで、働き方改革が実現できます。また、余計なエネルギーコストも使わないことは、環境負荷削減への取り組みが成功していると捉えられます。そのため、企業イメージの向上に繋がるでしょう。
また、利益率が高まることでステークホルダーからの評価も高まります。
人時生産性向上に取り組むデメリットと注意点
多くのメリットがある一方で、少し注意すべき点もあります。人時生産性の向上に取り組む前に確認しておきましょう。
過剰な効率化によるミスの発生やイノベーションの阻害
作業の効率化や時間の短縮を求める余り、従業員に過度なプレッシャーを与えたり、ミスがないか確認・チェックする工程を省いたりすると、インシデントの原因になります。現場の意見も取り入れて、ミスやストレスの少ない仕組みで人時生産性を上げていきましょう。
また、短期的な人時生産性にのみ注目してしまうと、時間はかかるけれど大きな成果が期待できる取り組みや、創造的・実験的な活動を評価できず、イノベーションを阻害することになってしまいます。中長期的な視点を意識するよう注意しましょう。
企業文化との衝突
人時生産性が向上すると、その高い生産性を維持、もしくはさらに向上させようと、短期的な数値目標に固執してしまう場合があります。そうなると、失敗への許容度が下がってしまう可能性があります。
例えばリスクを恐れず、挑戦を続ける社風だったにもかかわらず、失敗が許容されなくなってしまっては、大切に醸成されてきた企業文化を壊すことになってしまうでしょう。
人時生産性向上の取り組みや目標値は、自社の文化や価値観と相違がないか確認しながら設定するよう注意しましょう。
人時生産性を下げる要因と課題

人時生産性の向上を目指す上で、まずは生産性を下げている要因を正確に把握することが重要です。
ここでは、多くの企業で共通して見られる主な要因と課題を解説します。
業務プロセスの非効率性
業務プロセスの非効率性は、人時生産性を大きく低下させる要因の一つです。
たとえば、必要以上に複雑な承認プロセスや、紙とデジタルの二重管理、不必要な会議や報告業務などは生産性を下げる原因となっています。
さらに、業務の標準化が進んでいないことで属人化が進み、特定の従業員に業務が集中する傾向も見られます。
これらの非効率な業務プロセスは、作業時間の浪費につながるだけでなく、従業員のストレスや疲労の原因となり得るでしょう。
人材配置のミスマッチ
人材配置をどのように行うかは人時生産性に直接影響を与えます。
部署による極端な人員の偏りや、チーム構成バランスの悪さなどが人材配置の主な課題です。また、個人の適性と業務内容が一致していないケースも少なくありません。
このような配置の問題は、単なる業務効率の低下だけでなく、従業員の成長機会の損失やモチベーション低下にもつながります。
特に中途採用者の場合、前職での経験やスキルを活かせない配置は、早期離職のリスクも高めることになります。結果として、採用や教育にかけたコストが無駄になるだけでなく、組織全体の生産性にも大きな影響を与えることになるでしょう。
従業員のモチベーション低下
従業員のモチベーション低下は、人時生産性を低下させる見落としがちな要素です。
モチベーション低下の主な原因として、成果が適切に評価されないことや、キャリアパスが不明確なことが挙げられます。また、自身の仕事の意義や目的が理解できていない場合も、モチベーションは低下します。
特に注意が必要なのは、従業員のモチベーション低下は業務の質が低下するだけでなく、周囲の従業員にも悪影響を及ぼす可能性が高いという点です。これは組織全体の生産性低下につながる重大な問題となります。
部門間連携の不足
部門間連携の不足は、組織全体の生産性を大きく損なう要因となっています。
部門ごとの目標設定や評価制度が異なることで、部門間の協力体制が築きにくい状況が生まれています。そもそも、情報共有をするための仕組みや機会がないという企業も少なくありません。
このような連携不足は業務の重複や手戻りの原因となるだけでなく、顧客対応の遅延やサービス品質の低下にもつながります。
人時生産性を向上させる6つの施策
ここまで見てきた人時生産性を下げる要因に対し、具体的にどのような施策を実施すべきなのでしょうか。
ここからは、人時生産性を向上させるための実践的な改善策を詳しく解説します。
業務の可視化と効率化
人時生産性向上の第一歩は、業務の可視化から始まります。
まずは現状の業務フローを詳細に洗い出し、各工程にかかる時間や、関係する部署、必要なリソースを明確にしましょう。
この過程で、これまで気付かなかった無駄な作業や重複業務が見えてくることも多くあります。
業務を可視化した後は、以下の観点から効率化の具体的な施策を進めていきます。
業務フロー図の作成:業務フローを図として可視化し、共有することで関係者が現状を把握しやすくなります。
業務マニュアルの整備:業務を標準化してマニュアルを作成することで、業務の属人化を防ぎます。
自動化の検討:システムや機械で置き換えられる業務はないでしょうか。導入に費用がかかる場合もあるため、長期で見て生産性の向上に有用であるか見極めが必要です。
短縮の検討:書面の郵送でやり取りしていたものをメールやチャットツールに置き換えたり、対面での会議をオンライン会議としたり、時間短縮ができる業務がないか検討します。
省略の検討:慣習としてやっていたものの、何のためにやっているのか分からない作業は思い切って省略しましょう。
承認プロセスのスリム化:紙で稟議や申請を回し、順番に判を押す作業をスリム化しましょう。ワークフローツールなどを用いて承認を早く進めることで、意思決定のスピードも上がります。
これらの施策を順序立てて実施することで、効果的な生産性向上の施策を打つことができます。
適材適所の人材配置
人材の適切な配置は、人時生産性を大きく向上させる重要な施策です。
まず必要なのは、従業員一人ひとりの能力や経験、適性を正確に把握することです。面談やアセスメントツールなどを活用し、各従業員の強みと育成課題を明確にしましょう。
これにより、その人材が最も力を発揮できるポジションが見えてきます。
入社時にリファレンスチェックを行っている場合は、そのリファレンスチェックの結果レポートも従業員の適性把握に活用できます。
リファレンスチェックは、選考時、候補者と過去に働いたことのある上司や同僚に、候補者の働きぶりや人物像を聞くことですが、その中で強みや価値観、実績も知ることが可能です。採用だけでなく、人材配置にも活用すると良いでしょう。
また、配置を検討する際は、個人の希望するキャリアパスも考慮に入れることが重要です。従業員の志向に沿った配置を行うことで、モチベーションの向上と長期的な成長が期待できます。
さらに、チーム全体のバランスも重要な要素です。経験者と若手のバランス、得意分野の異なるメンバーの組み合わせなど、チーム全体としての相乗効果を考慮した人材配置を行うようにしましょう。
社内コミュニケーションの改善
部門間の連携不足は人時生産性を大きく低下させる要因です。
従業員同士や部門間の円滑なコミュニケーションを実現するための施策を打ち出していきましょう。
部門横断ミーティングの設置は、情報共有を促進する最も効果的な手段のひとつです。ただし、単なる報告会にならないよう、課題解決や改善提案に重点を置いた議論の場とすることが重要です。
また、社内SNSやビジネスチャットの活用も推奨されます。これにより、リアルタイムでの情報共有が可能になり、意思決定のスピードが向上します。
従業員エンゲージメントの向上
従業員のエンゲージメント向上は、人時生産性を底上げするための重要な要素です。
エンゲージメント向上のためにまず必要となるのが、各従業員が自身の仕事の意義や目的を明確に理解できる環境づくりです。
経営層は会社のビジョンや目標を定期的に共有し、各従業員の業務がどのように会社の成長に貢献しているのかを示す必要があります。また、定期的な1on1ミーティングを通じて、従業員の課題や成長意欲を把握し、適切なサポートを提供することも重要です。
さらに、成果に対する適切な評価と報酬も、エンゲージメント向上には欠かせません。評価基準を明確にし、達成度に応じた適正な評価を行うことは、従業員のモチベーション維持につながります。
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適切な人事評価制度の運用
人時生産性の向上には、公平で透明性の高い人事評価制度が欠かせません。評価制度が適切に機能していない場合、従業員のモチベーションが低下し、生産性に大きな影響を与えます。
まず重要なのは、評価基準の明確化です。期待される成果や行動を具体的に示し、どのような取り組みが高い評価につながるのかを従業員が理解できるようにします。
また、役職や職種に応じた評価項目を設定し、それぞれの特性に合わせた適切な評価を行うことも大切です。
評価結果は必ずフィードバックを行い、改善点や期待する点を具体的に伝えましょう。フィードバックを行うことで、従業員は自身の強みや課題を理解するとともに、会社や上司への貢献意欲を感じやすくなります。
関連記事:コンピテンシー評価とは?メリット・デメリットや導入の流れを解説
人材育成制度の構築
人材育成は人時生産性向上の要となる重要な施策です。
効果的な育成制度を構築することで、従業員のスキル向上と組織全体の生産性向上を実現できます。
新入社員研修から階層別研修、専門スキル研修まで、各段階に応じた育成プログラムを用意するのが理想です。画一的な研修だけでなく、個人の成長段階や目標に合わせた教育の機会を作れるとより良いでしょう。
また、OJTの質を高めることも重要です。経験豊富な社員から若手への知識・スキルの伝達を効果的に行うため、指導者の育成や指導プログラムの整備にも注力する必要があります。
関連記事:新入社員研修のカリキュラムはどうすべき? 必要な理由と作成のコツ、具体的なおすすめ研修内容を解説
人時生産性を高める人材の採用にはback check
今回は人時生産性の定義から計算方法、向上のための具体的な施策までを解説してきました。既存の従業員に対する人時生産性の向上には、業務プロセスの改善や適材適所の人員配置など、さまざまな改善施策が考えられます。
また、組織全体で見た時には、新入社員の人時生産性も意識する必要があります。選考の時点で効率よく働いてくれる人物であるかを見極め、適切な部署に配置することで、早期に成果を出してくれるでしょう。
しかし、履歴書や面接だけでは候補者の過去の実績や働きぶり、生産性を正確に把握することは難しく、配置後にミスマッチが発覚して生産性が低下するケースも少なくありません。
このような課題を解決するには、候補者の情報を客観的に把握できるリファレンスチェックが効果的です。
あるスタートアップ企業では、オンライン選考を積極的に導入することで、人事担当者の移動時間を削減し、面接準備や候補者分析など、より付加価値の高い業務に時間を充てられるようになりました。選考プロセスも「オンラインで広く募集・面接を実施し、最終のみ対面」とすることで効率化と候補者体験の両立を実現しました。
こうした取り組みは、単なる業務効率化にとどまらず、自社の生産性向上を対外的にも示す施策として機能しています。採用活動のオンライン化は、人時生産性を高めるうえでも有効な手段といえるでしょう。
back check株式会社では、オンライン完結型のリファレンスチェックサービス「back check(バックチェック)」を提供しています。
back checkでは、候補者の情報を登録するだけで、候補者と過去一緒に働いたことがある元上司や同僚から評価レポートを得られます。通常入社後に顕在化する働きぶりやカルチャーマッチといった言語化しにくい情報を確認して採用を判断する際の1つの材料とすることが可能です。
また、レポートを通じて強みや人物像を把握できるため、適切なチームへ配置するためにも役立ちます。back checkは、リモート時代における採用の信頼性と効率性を両立させ、企業の採用DXを後押しします。人時生産性の向上に向けて、より正確な人材評価と適切な配置を実現するために、ぜひback checkの導入をご検討ください。


back check magazine 編集部
リファレンスチェック/コンプライアンスチェックサービス「back check」が手がけるコラム「back check magazine」の編集部です。採用担当のみなさまに向けて、役に立つ情報を発信していきます。










