目次外国人労働者の雇用が注目される中、自社でも採用するべきか悩んでいませんか?採用方法やデメリット、注意点など分からないことが多いと、外国人労働者の雇用には抵抗を感じるかもしれません。本記事では、外国人労働者を雇用する際に把握しておくべき情報をまとめて紹介します。外国人労働者の採用・雇用傾向日本で就労する外国人労働者の採用・雇用傾向について、見ておきましょう。外国人労働者の受け入れ状況は?外国人労働者の採用・雇用状況どちらも、外国人採用を検討中の企業にとって、把握しておくべき情報です。周りの状況から、外国人労働者を雇用するべきか否か判断しやすくなります。外国人労働者の受け入れ状況は?日本で働く外国人労働者の受け入れの現状は、年々増加傾向にあります。厚生労働省の発表によると、外国人労働者は2016年に100万人を突破。2024年には約230万人となり、今後さらに増えていくことが予測されます(※1)。外国人労働者を雇用する事業者の数は、2024年10月末時点で約34万箇所にのぼります。6年前に比べ約1.58倍に増えていることからも、外国人労働者の雇用は年々拡大していることが分かります。※1 参考:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)|厚生労働省(2025年2月23日参照)受け入れが加速している背景には、2018年に改正出入国管理法が成立し、2019年4月に「特定技能」(※2)在留資格が新設されました。この制度は、一定の専門性・技能を有する外国人労働者を受け入れるために導入されました。以下の分野は人材の確保が困難な状況にあるため、特定技能外国人の受け入れが実施されています。①介護 ②ビルクリーニング ③工業製品製造業 ④建設 ⑤造船・舶用工業 ⑥自動車整備 ⑦航空 ⑧宿泊 ⑨自動車運送業 ⑩鉄道 ⑪農業 ⑫漁業 ⑬飲食料品製造業 ⑭外食業 ⑮林業 ⑯木材産業これらの分野を中心に、外国人労働者受け入れの場がさらに増えていくでしょう。※2 参考:特定技能制度の概要|出入国在留管理庁(2025年2月23日参照)外国人労働者の採用・雇用状況すでに外国人労働者を雇用している企業は、今後の見通しとしてどのように考えているのでしょうか。雇用形態を下記3つに分けて、解説します。正社員アルバイト技能実習生2019年にパーソル総合研究所が公表した「外国人雇用に関する企業の意識・実態調査」(※3)を参考に見てみましょう。※3 参考:外国人雇用に関する企業の意識・実態調査|パーソル総合研究所(2025年2月23日参照)【正社員】正社員枠としての外国人採用について、企業は下記のような見通しを立てています。増やしていく予定:73.7%現状維持の予定:24.4%減らしていく予定:1.9%正社員の外国人労働者を増やしていく予定と答えた企業は、全体の70%以上を占めました。減らしていく予定と答えた企業は2%以下であることから、今後はさらに外国人の正社員枠が増えていくと予測されます。正社員といえば、パートやアルバイトよりも責任のある立場であるため、企業としても慎重に採用を進める傾向があります。一方で、すでに雇用実績のある企業では、外国人労働者の適性や能力に対する信頼が高まっており、今後の積極的な採用に繋がっていると考えられます。【アルバイト】アルバイトとしての外国人採用について、企業は下記のような見通しを立てています。増やしていく予定:67.4%現状維持の予定:29.7%減らしていく予定:2.9%正社員と同様に「増やしていく」「現状維持」を予定している企業が全体のほとんどを占めています。外国人アルバイトを雇用したことによる大きな問題を感じていない企業が多いことが、この結果に影響していると考えられます。ただし、外国人留学生を雇用する場合は、いくつか確認事項があります。特に以下の点に注意してください。資格外活動許可を取得しているか週28時間以内(長期休暇中は1日8時間以内)の労働時間制限を守っているか外国人留学生は「留学」の在留資格で滞在しているため、就労には資格外活動許可が必要です。また、週28時間以内の労働時間制限があり、長期休暇中のみ1日8時間までの就労が認められる点も重要です。これらの条件を超えて働かせた場合、雇用主も罰則の対象となるため注意が必要です。【技能実習生】技能実習生としての外国人採用について、企業は下記のような見通しを立てています。増やしていく予定:71.9%現状維持の予定:25.7%減らしていく予定:2.4%技能実習生とは、本来「日本の技術や知識を母国に移転し、経済発展に寄与すること」を目的とした制度であり、労働力確保を目的とするものではありません。2019年6月末時点で、日本に在住する技能実習生の数は367,709人にのぼります。企業側の需要が高いことから、今後さらに増加すると考えられます。しかし、技能実習制度には厳格なルールが定められており、受け入れ企業は以下の点を遵守する必要があります。適切な研修計画の策定と実施適正な賃金支払い(日本人と同等以上の水準)実習期間の管理(最長5年間)監理団体や認定機関による適正な監査の受け入れ近年、技能実習生に対する不適切な労働環境が問題視されるケースもあり、受け入れ企業には適正な雇用管理が求められています。外国人雇用に積極的な業界外国人雇用に積極的な業界の1つに製造業があります。次いで、卸売業・小売業、宿泊業、飲食サービス業などでも多くの外国人が雇用されています。特に、特定の資格や高度な語学力を必須としない業界では、外国人労働者の雇用が増加する傾向が見られます(※4)。また、海外に支社を持つ企業や、海外で生産拠点を展開している企業なども例外ではありません。グローバルに事業を展開する企業にとって、外国人労働者は市場理解の促進や国際展開の戦略において貴重な存在となっています。海外進出を予定している企業にとっても、外国人採用は市場理解の促進や国際展開に向けた戦略の一環として積極的に進められています。※4 参考:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末現在)|厚生労働省(2025年2月23日参照)外国人労働者の採用方法は?外国人労働者の採用方法は、基本的には日本人の場合と同じです。求人募集を出す選考する就労ビザの申請を行う行政手続きを行う求人募集は自社のホームページや外国人派遣会社、SNSなどで出せます。募集を出す際は、難しい日本語は使わず、英語や中国語など、複数の言語で情報を用意すると、応募者の理解がしやすくなります。書類選考や面接などを行い、内定者を決めるまでのプロセスは、日本人の採用と同じです。日本人の採用と異なるのは、在留資格に関する手続きです。在留資格を持っていない場合:内定決定後3ヶ月以内に、入国管理局(出入国在留管理庁)で「在留資格認定証明書」の交付申請を行い、在留資格を取得する必要があります。すでに在留資格を持っている場合:在留資格の種類によっては、「就労資格証明書交付申請」を行い、就労可能かどうかを確認することもできます。雇用が決まった後の手続きは以下です。ハローワークへの届出(「外国人雇用状況届出書」の提出)・企業は、外国人労働者を雇用した際、および離職した際に、ハローワークへ届出を行う義務があります。・ただし、特別永住者(在日韓国人など)は届出の対象外です。社会保険・税関連の手続き・日本人と同じく、健康保険・厚生年金・雇用保険への加入手続きを行います。・所得税や住民税の計算・源泉徴収を適切に行います。外国人労働者を雇用するメリット外国人労働者を採用する方法を把握したところで、雇用するメリットについて見ておきましょう。外国人労働者の雇用には、下記4つのメリットが挙げられます。優秀な若い人材の確保が可能海外進出の際の即戦力斬新なアイデアによる活性化企業のグローバル化が期待できるそれぞれ詳しく解説します。優秀な若い人材の確保が可能多くの企業では、少子高齢化に伴い、若手の人材不足が深刻となっています。外国人労働者の雇用を積極的に行うことで、若年層の人材確保をカバーできるようになるのです。また、日本で働こうとする外国人労働者は、学習意欲が高い傾向にあります。日本で生活し、働くためには、日本語の読み書きやコミュニケーション能力が求められます。これらを学び、実際に仕事に活かそうとする姿勢は、業務のスキルアップにもつながります。海外進出の際の即戦力海外進出を考えている企業にとって、外国人労働者は即戦力です。言語の違いだけであれば、日本人社員が対応できる場合もありますが、現地の文化や商習慣、価値観など、外国人ならではの視点が不可欠な場面も多くあります。例えば、海外市場では日本人の常識が通用しないケースもあります。外国人労働者がいれば、現地の市場調査や戦略立案に役立ち、ビジネスの成功率を高めることができます。海外の取引先や現地担当者との橋渡し役としても、重要な存在となるでしょう。斬新なアイデアによる活性化外国人労働者は、日本人では思いつかないような斬新なアイデアを提供することがあります。異なる文化や価値観を持つからこそ、新しい発想が生まれやすく、それが企業の成長や競争力向上につながることもあります。多様な視点を持つ人材がチームに加わることで、組織の柔軟性が増し、変化に強い企業文化を構築できる可能性があります。お互いに意見を交わすことで、新たなビジネスチャンスが生まれることも期待できます。企業のグローバル化が期待できる外国人労働者の増加により、企業は多様な言語や文化に触れる機会が増えます。外国人社員との交流を通じて、日本人社員も異文化理解を深めることができ、国際的なビジネス感覚を養うきっかけになります。近年、一部の企業では社内公用語を英語にするなど、グローバル化を推進する取り組みも進んでいます。楽天株式会社は、2012年に社内公用語を英語化し、アサヒビール株式会社、株式会社ユニクロ、株式会社資生堂なども同様の取り組みを行っています。外国人労働者を雇用するデメリット外国人雇用にはメリットがある一方で、デメリットも存在します。主なデメリットは、以下の3つです。コミュニケーションや文化の違い企業イメージや受け入れ環境への配慮雇用手続きが煩雑それぞれ詳しく見ていきましょう。コミュニケーションや文化の問題外国人採用において、言語の壁は大きな課題の一つです。業務に必要な日本語能力が不足していると、社内での意思疎通に時間がかかることがあります。また、文化や習慣の違いによる価値観のズレも、企業内での摩擦を生む要因となることがあります。例えば、日本企業における「暗黙の了解」や「空気を読む文化」は、外国人労働者には伝わりにくい場合があります。そのため、研修や社内教育に十分な時間をかけることが重要です。企業イメージや受け入れ環境への配慮外国人労働者の雇用が増加する中、一部の地域では外国人雇用に対する理解が進んでいない場合もあります。企業側としては、地域社会との調和を図りながら、外国人労働者を受け入れる環境を整えることが求められます。例えば、労働者向けの日本語研修の実施や、地域との交流イベントを開催することで、外国人労働者が職場や地域に馴染みやすい環境をつくることができます。雇用手続きが煩雑外国人労働者の雇用手続きは、日本人とほぼ同じですが、企業側にとっては追加の行政手続きが発生します。例えば、外国人労働者を雇用・離職した場合は、ハローワークに「外国人雇用状況届出書」を提出する義務があります(特別永住者を除く)。また、求人募集を行う際には、分かりやすい日本語を使用したり、英語・中国語などの言語対応を行う必要がある場合もあります。 初めて外国人を雇用する企業にとっては、これらの対応が負担に感じることもあるでしょう。【お役立ち資料】リファラル採用から学ぶ、ミスマッチを減らす方法外国人雇用で受給できる助成金雇用保険に加入している事業所が外国人を雇用する際、厚生労働省の助成金を受給できる場合があります。 条件を満たす場合は、忘れずに申請しましょう。助成金にはさまざまな種類がありますが、今回は外国人雇用でも対象となりやすい助成金を2つ紹介します(※5)。トライアル雇用助成金(一般コース)ハローワークや職業紹介事業者の紹介を通じて、一定期間試行雇用を行う場合に受け取れる助成金です。対象:職業経験が少なく、就職が困難な求職者(外国人も対象となる場合がある)助成額:1人あたり最大5万円(最長3ヶ月)要件:試行雇用終了後、正規雇用への移行が期待できること試行雇用の対象となるのは、雇用に課題を抱えている求職者(例:長期失業者、若年未経験者など)であり、外国人であっても要件を満たせば対象になります。人材開発支援助成金(特定訓練コース)企業が従業員に対して職務に関連する専門知識や技能取得のための訓練を実施する際に、賃金や経費の一部が補助される助成金です。対象:職務に関連する専門知識や技能の習得を目的とした訓練を受ける労働者助成額:訓練の種類や実施内容によって賃金助成・経費助成が受けられる要件:訓練計画を作成し、ハローワークまたは管轄労働局へ事前に提出すること助成金の上限額や助成率は、訓練の種類や企業の規模によって異なります。 例えば、経費助成の上限額は50万円とされるケースもありますが、実際の支給額は申請内容によって変動します。外国人雇用に関連する助成金は他にもあります。詳しくは、ハローワークまたは管轄の労働局にお問い合わせください。※5 参考:事業主の方のための雇用関係助成金|厚生労働省(2025年2月23日参照)外国人労働者を採用する際の注意点最後に、外国人採用の注意点を紹介します。主な注意点は、以下の3点です。在留資格の確認在留資格に合った仕事の提供差別的待遇の禁止これらを守らない場合、企業側にも罰則が科せられる可能性があります。「知らなかった」では済まされないため、しっかりと確認しておきましょう。在留資格の確認外国人労働者を雇用する際は、在留資格の確認が必須です。「就労ビザ」という言葉が使われることもありますが、正確には「在留資格」に分類されます。確認すべきポイント報酬を伴う就労が認められている在留資格か在留資格の種類と業務内容が合致しているか在留資格には、就労が認められていない種類もあるため、単に「在留資格を持っている=就労できる」とは限りません。必要に応じて、企業が雇用予定の外国人に対し、出入国在留管理庁で手続きをサポートすることも可能です。在留資格を確認せず、不法就労をさせた場合、企業側も罪に問われる可能性があります。罰則:3年以下の懲役または300万円以下の罰金、またはその両方(出入国管理及び難民認定法 第73条の2)なお、「ビザ(査証)」は入国時に必要となる許可証であり、在留資格とは異なります。混同しないよう注意してください。在留資格に合った仕事の提供在留資格ごとに認められている業務範囲が異なるため、雇用予定の業務が適合しているかを確認する必要があります。例えば、「医療」の在留資格 → 医師・看護師・薬剤師などの医療業務「介護」の在留資格 → 介護福祉施設での介護業務企業は、在留資格で認められている業務以外の仕事を指示できません。 違反した場合、不法就労助長罪に問われる可能性があるため、注意が必要です。差別的待遇の禁止外国人労働者の雇用において、日本人労働者と同等の待遇を確保することが求められます。具体的には以下の点に注意が必要です。賃金の公平性(日本人と同等以上の賃金を支払う必要がある)社会保険・雇用保険への適正な加入ハラスメント防止対策の徹底外国人だからといって低賃金で雇用することは法律違反となります。適正な賃金を支払わなかった場合、企業は労働基準法違反として罰則を受ける可能性があります。また、待遇に格差があると、離職率の上昇や社内トラブルの原因になり、SNSなどで企業イメージを損なうリスクもあるため、適正な雇用管理が重要です。まとめ外国人労働者の雇用は、企業にとって多くのメリットがあります。文化の違いから生まれる新しいアイデアや、企業のグローバル化の促進など、競争力を強化する要素にもなります。特に、若手の人材不足が深刻な企業にとっては、外国人労働者は貴重な人材です。しかし、企業ごとに適した雇用形態が異なるため、自社の業務内容や環境に合うかを慎重に検討し、メリットとデメリットを比較した上で判断することが大切です。