目次外国人労働者の雇用が注目される中、自社でも採用するべきか悩んでいませんか?採用方法やデメリット、注意点など分からないことが多いと、外国人労働者の雇用には抵抗があるでしょう。本記事では、外国人労働者を雇用する際に把握しておくべき情報をまとめて紹介します。外国人労働者の採用・雇用傾向日本で就労する外国人労働者の採用・雇用傾向について、見ておきましょう。外国人労働者の受け入れ状況は?外国人労働者の採用・雇用状況どちらも、外国人採用を検討中の企業にとって、把握しておくべき情報です。周りの状況から、外国人労働者を雇用するべきか否か判断しやすくなります。外国人労働者の受け入れ状況は?日本で働く外国人労働者の受け入れの現状は、年々増加傾向にあります。厚生労働省の発表によると、外国人労働者は2016年に100万人を突破。2022年には192万人となり、今後さらに増えていくことが予測されます。外国人労働者を雇用する事業者の数は、約30万箇所にのぼります。5年前に比べ1.5倍に増えていることからも、外国人労働者の存在は大きくなりつつあると言えるでしょう。参考:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)|厚生労働省外国人労働者の採用・雇用状況すでに外国人労働者を雇用している企業は、今後の見通しとしてどのように考えているのでしょうか。雇用形態を下記3つに分けて、解説します。正社員アルバイト技能実習生2019年にパーソル総合研究所が公表した「外国人雇用に関する企業の意識・実態調査」を参考に見てみましょう。参考:外国人雇用に関する企業の意識・実態調査|パーソル総合研究所【正社員】正社員枠としての外国人採用について、企業は下記のような見通しを立てています。増やしていく予定:73.7%現状維持の予定:24.4%減らしていく予定:1.9%正社員の外国人労働者を増やしていく予定と答えた企業は、全体の70%以上を占めました。減らしていく予定と答えた企業は2%以下であることから、今後はさらに外国人の正社員枠が増えていくと予測されます。正社員といえば、パートやアルバイトよりも責任のある立場です。すでに雇用しているからこそ分かる、外国人に対する信頼感と期待があっての判断でしょう。【アルバイト】アルバイトとしての外国人採用について、企業は下記のような見通しを立てています。増やしていく予定:67.4%現状維持の予定:29.7%減らしていく予定:2.9%正社員と同じく、増やしていく・現状維持を予定している企業が全体のほとんどを占めています。外国人を雇用したことで、デメリットに感じることが特になかったからこその判断でしょう。ただし、外国人留学生を雇用する場合は、いくつか注意点があるので気をつけてください。具体的には「資格外活動許可」を取得しているのか、労働時間の制限を超えて就労していないか、などの確認は必須です。【技能実習生】技能実習生としての外国人採用について、企業は下記のような見通しを立てています。増やしていく予定:71.9%現状維持の予定:25.7%減らしていく予定:2.4%技能実習生とは、経済発展を図るため、日本で習得した技能や知識を本国に移転することを目的に就労する外国人労働者です。最長5年間の滞在が認められています。2019年6月末時点での日本在住の技能実習生は367,709人。増やしていく意向を見せている企業が多いことから、今後さらに増えることが予測されます。外国人雇用に積極的な業界外国人雇用に積極的な業界は、製造業です。次いで卸売業や小売業、宿泊業、飲食サービス業などで多くの外国人が雇用されています。外国人採用企業は特別な資格やスキル、語学力をあまり必要としない業界において、雇用枠が多い傾向が見られました。また、海外に支社をおく企業、海外生産をしている企業なども例外ではありません。グローバルに事業を展開する企業にとって、外国人労働者は貴重な存在です。海外進出を予定している企業においても、外国人採用は積極的に行われています。参考:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和4元年 10 月末現在)|厚生労働省外国人労働者の採用方法は?外国人労働者の採用方法は、基本的には日本人の場合と同じです。求人募集を出す選考する就労ビザの申請を行う行政手続きを行う求人募集は自社のホームページや外国人派遣会社、SNSなどで出せます。募集を出す際は、難しい日本語は使わず、英語や中国語など、複数の言語を用意しておくと良いです。書類選考や面接などを行い、内定者を決めるというステップまでは、日本人の採用と同じです。日本人の採用と異なる部分はここからです。外国人が就労ビザを持っていない場合は、内定決定後3ヶ月以内に入国管理局にて「在留資格認定証明書」を発行してもらいます。すでに就労ビザを持っている場合は、入国管理局にて就労資格証明書交付申請を行い、外国人が就労できるかを確認しましょう。雇用が決まった後は、ハローワークに外国人雇用状況届出書を提出します。その後は、日本人と同じく社会保険の加入、所得税・住民税の課税などの手続きを済ませて終了です。外国人労働者を雇用するメリット外国人労働者を採用する方法を把握したところで、雇用するメリットについて見ておきましょう。外国人労働者の雇用には、下記4つのメリットが挙げられます。優秀な若い人材の確保が可能海外進出の際の即戦力斬新なアイデアによる活性化企業のグローバル化が期待できるそれぞれ詳しく解説します。優秀な若い人材の確保が可能多くの企業では、少子高齢化に伴い、若手の人材不足が深刻となっています。外国人労働者の雇用を積極的に行うことで、若年層の人材確保をカバーできるようになるのです。加えて、日本で働こうとする外国人労働者は学習意欲が高い傾向にあります。日本に住むためには漢字・ひらがな・カタカナを使い分ける必要があり、習得するのは容易ではありません。これらを学び、働こうとする外国人は学ぶことに抵抗がないので、仕事においても知識やスキルをどんどん吸収しようとするでしょう。海外進出の際の即戦力海外進出を考えている企業にとって、外国人労働者は即戦力です。言語の違いだけであれば、日本人だけでも対応できるでしょう。しかし、国の文化や現地の情報など、その国の人でなければ分からないことは多々あります。また国によっては考え方の違いから、日本人にとっては一般的なことが通用しないこともあるので、海外進出は難しいものです。外国人労働者がいれば、たくさんの情報収集や戦略的なマーケティングができるようになります。担当者との仲を取り持ってくれれば、海外進出の足掛かりとして心強い存在となるでしょう。斬新なアイデアによる活性化外国人は、日本人では思いつきにくい斬新なアイデアを出すことがあります。育った環境や文化が異なるからこそ生まれる発想は、企業にとって新しいチャンスを掴むきっかけになる可能性を秘めているものです。1つのアイデアから、また違ったアイデアが生まれるケースは少なくありません。異なる文化という新しい風を入れることで、日本人にとっても良い刺激となるはずです。お互いに意見交換もすれば、新たなアイデアが生まれるでしょう。企業のグローバル化が期待できる外国人労働者が増えれば、さまざまな言語や文化に触れることができます。人間同士の付き合いだけでなく、その国独自の技術や知識を学ぶこともできるでしょう。社内公用語を英語にすることもまた、企業のグローバル化の1つです。社内公用語英語化は、海外取引におけるビジネスチャンスを増やし、企業発展につなげられます。すでに楽天株式会社では2年間の準備期間を経て、2012年に社内公用語英語化を本格スタート。ほかにも、アサヒビール株式会社や株式会社ユニクロ、株式会社資生堂などでも意欲的に取り組んでいます。外国人労働者を雇用するデメリット外国人雇用には魅力的なメリットがある反面、デメリットもあります。主なデメリットは、下記3つです。コミュニケーションや文化の問題治安の不安に対する理解不足雇用手続きが煩雑メリット以上のデメリットはないか、今一度確認しておきましょう。コミュニケーションや文化の問題外国人採用において、デメリットになりやすいのは言語の違いです。お互いに言語が理解できていないとコミュニケーションが取れず、業務に支障が出る恐れがあります。また文化や習慣の違いによって、外国人と日本人の間で衝突する可能性も否定できません。日本人にとっては当たり前のことでも、異文化で生活することになった移民にとっては疑問に感じることは多々あります。外国人が「なぜ?」と思うことには、丁寧に教えてあげなければいけません。そのため、研修や教育にかかる時間は、日本人よりも長くなることが予想されます。治安の不安に対する理解不足残念ながら「外国人は犯罪を犯しやすい」といった固定概念を持っている日本人は、少なからずいるものです。外国人がいることで治安が悪くなる、と心配する人もいるでしょう。そのため、外国人労働者のいる企業に対して、良くない印象を持たれることも少なくありません。企業にとってイメージが悪いのは大きなデメリットです。例えば、製造業の場合は、企業イメージが悪いと商品が売れず、経営破綻する可能性も否めません。外国人労働者の雇用が活発でない地域ほど、理解が得られにくいかもしれません。雇用手続きが煩雑雇用手続きは日本人の場合とほとんど変わりませんが、慣れていない企業にとっては、面倒に感じる手続きもあります。例えば、外国人を雇用する際は、ハローワークに外国人雇用状況届出書を提出しなければいけません。雇用形態に関わらず提出が必要なので、パートやアルバイト、さらに永住者も対象です。また、求人募集を出すときは、易しい日本語を使ったり英語や中国語などでも記載したりするなどの工夫が必要です。外国人労働者を初めて雇用する企業にとっては、大変な作業となるでしょう。【お役立ち資料】リファラル採用から学ぶ、ミスマッチを減らす方法外国人雇用で受給できる助成金雇用保険に加入している事業所が外国人を雇用する際は、厚生労働省から助成金を受け取れる場合があるため忘れずに申請しましょう。助成金にもいろいろとありますが、今回は多くの事業所が対象になりやすい助成金を2つ紹介します。1つ目は「トライアル雇用助成金(一般コース)」で、就職困難になっている外国人を雇用するときに受け取れる助成金です。ハローワークや職業紹介事業者などの紹介後、一定期間試行雇用をすると、1人あたり最大5万円(最長3ヶ月)を受給できます。2つ目は「人材開発支援助成金(特定訓練コース)」で、職務に関連する、専門知識や技能取得にかかった賃金と経費への補助を目的とした助成金です。訓練計画を作成し、ハローワークまたは管轄労働局に提出すると、最大で50万円の補助を受けられます。外国人雇用でもらえる助成金は他にもあるので、詳しくはハローワークまたは管轄の労働局にて問い合わせてください。参考:事業主の方のための雇用関係助成金|厚生労働省外国人労働者を採用する際の注意点最後に、外国人採用の注意点を紹介します。主な注意点は、下記3つです。就労ビザ・在留資格の確認在留資格に合った仕事の提供差別的待遇はNG守られていないと雇用者が罰則されるものもあります。「知らなかった」では済まないので、この機会にしっかり確認しておきましょう。就労ビザ・在留資格の確認外国人労働者を雇用する際は、就労ビザと在留資格の確認が必須です。就労ビザは就労することを目的とした在留資格なので、就労ビザも在留資格も同じと考えて良いでしょう。確認すべきポイントは、報酬を伴う就労が認められている在留資格を有しているかどうかです。在留資格には就労が認められていないものもあり、必ずしも「在留資格がある=就労できる」というわけではありません。在留資格を有していない場合は、企業が入出国在留管理庁に代理で申請手続きを行います。就労ビザ・在留資格の確認を行わず、万が一不法就労させていた場合は、雇用主も罪に問われます。3年以下の懲役または300万円以下の罰金、もしくはその両方が科せられるので十分注意しましょう。ちなみに、ビザは入国時に必要となる入国許可証なので、就労ビザ・在留資格とは別のものとなります。混合しないように気をつけてください。在留資格に合った仕事の提供在留資格で認められている業務範囲の確認を行いましょう。報酬を伴う就労が認められている在留資格を有していても、認められている業種の範囲や在留期間は人によって異なります。例えば、医療の在留資格を有していれば医師や看護師、薬剤師など医療業務に携わる活動が可能です。また介護の在留資格を有していれば介護業務に携われるので、介護福祉施設で就労できます。外国人労働者を雇用する際は、在留資格に合った仕事を提供できるかが、必ず確認しておくべきポイントです。差別的待遇はNG外国人は安い労働者ではありません。過去には、人材が足りなくなると安く雇える外国人を雇用していた時代もありました。しかし、現代の日本では、適正な賃金を支払わないと、法律で罰則を受ける可能性があります。また、日本人と外国人の間に格差があると離職やボイコット、SNSでの拡散などトラブルに発展することも。企業にとっては大きなイメージダウンになることは、言うまでもないでしょう。適正な賃金・労働条件で雇用することは、基本中の基本です。差別的待遇は絶対に止めましょう。まとめ外国人労働者の雇用は、多くの企業にとってメリットがあります。文化の違いから、日本人にはない斬新なアイデアが生まれたり、企業のグローバル化が図れたり、企業発展につながりやすくなります。特に、若手の人材不足が深刻な企業にとっては、外国人労働者は救世主ともいえる人材です。しかし、場合によっては、外国人労働者の雇用が適していない企業もあります。自社にとって外国人労働者は価値のあるものなのか、メリットとデメリットを比較しながら判断しましょう。