目次従業員のモチベーションとエンゲージメントの違いまずはモチベーションとエンゲージメントの違いを「3つの観点」から探っていきます。「概念」の違いモチベーション特定の目的や目標に向かって行動するための動機・やる気・意欲。エンゲージメント「組織と従業員との深い繋がり」を表す指標。会社や組織に対する愛着や貢献意欲のこと。「構成要素」の違い従業員のモチベーションを構成する要素は「外発的動機づけ」「内発的動機づけ」の2つです。外発的動機づけ報酬や評価など、外部からの要因による動機づけ。短期的なモチベーションになりやすい。例)営業成績が上がれば昇格できるので、目標達成を目指す。契約を取らないと評価が下がるので、努力する。チームの目標を達成すればインセンティブが支給されるので、頑張る。内発的動機づけ自分自身の中から生まれる興味・関心・向上心・感情による動機づけ。長期的に持続するモチベーションとなりやすい。例)お客様に感謝されることにやりがいを感じ、提案の引きだしを増やす努力をする。できなかったことができるようになって嬉しいので、積極的に先輩に学ぶ。資格取得の制度を利用するのは、自分の興味のある分野だからだ。次に従業員エンゲージメントを構成する要素は大きく分けて3つです。企業への「理解度」企業理念や価値観を理解し、企業と社会の繋がりや果たすべき役割を理解しているかどうか。例)自分の仕事が、会社の成長にどう貢献しているかを実感できている。会社の目指す未来や、そのために取り組んでいることが明確に分かる。企業への「共感度」理念や価値観に共感し、従業員自身の目標やビジョンとの「重なり」を感じているかどうか。例)この会社のミッションが、自分の価値観と合っている。社会的に意義があると感じられる仕事だから、やりがいを持てる。行動意欲組織への貢献意欲が高く、主体的に組織のための行動を起こしているかどうか。例)会社の成長に貢献したいから、新しいプロジェクトに手を挙げてみる。会社の目標を達成するために、自分ももっとスキルアップして貢献したい。「何のため、誰のために頑張るか」の違いモチベーション従業員が自分自身のキャリアや報酬のために頑張る動機づけ。エンゲージメント従業員が会社を信頼し、組織のために貢献する動機づけ。以上、3つの観点からモチベーションとエンゲージメントの違いを解説しました。これを踏まえて自社の従業員の一人ひとりの顔を思い浮かべてみてください。エンゲージメントが高いと感じる人もいれば、エンゲージメントは低いけれどモチベーションが高いと感じる人もいるでしょう。自社と従業員の関係性を振り返ってみましょう。関連記事:エンゲージメントとは?ビジネスにおける意味と、高めることで得られる3つのメリット、測定方法を解説モチベーションとエンゲージメントの関係性モチベーションは「従業員個人のビジョン実現や目標達成のための意欲」を測る指標という側面が強いのに対し、エンゲージメントは「企業と従業員が同じ目標を見据え、ビジョン実現のために手を取り合えているかどうか」を表す指標だと言えるでしょう。両者の違いが分かったところで、続いてはその関係性を確認していきましょう。モチベーションとエンゲージメントは互いに高め合いやすい関係モチベーションとエンゲージメントは、相互に影響を与え高め合うような、好循環を生み出せる関係性の指標です。例えば、ある企業のミッションに感銘を受けた従業員がいたとします。その従業員は企業のミッションに共感し、「この会社で働きたい」と考え、入社しました。この状態は、エンゲージメントが少しある状態です。働き始めると、仕事自体への興味が湧き、内発的モチベーションが高まりました。モチベーションが高まったことでさらなる成長意欲やチャレンジ精神が生まれ、仕事で成果が出ます。するとその成果を企業が認め、正しく評価してくれるので、さらにエンゲージメントが高まるというような循環です。また、モチベーションとエンゲージメントは同時に高まることもあります。例えば評価・報酬の適正化です。頑張った分だけ正しく評価される仕組みがあると、社員のモチベーションが維持しやすい環境になります。併せて評価の公平性が担保されている状態なため、組織への信頼感が生まれ、エンゲージメントも高まります。必ずしも相乗的に向上するわけではない基本的には相乗的に向上するモチベーションとエンゲージメントですが、そうではない場合もあることを知っておく必要があります。モチベーションだけが高く、エンゲージメントが育っていないケースがあるのです。給料や労働環境が良いことでモチベーションは高いけれども、会社のビジョンや理念が自分自身が働く理由と重なっていない時にはエンゲージメントは向上しません。会社側からの理念やビジョンの発信が不足していたり、上司・同僚との関係が希薄だと生まれるケースです。また、周りの意識が低いことで組織への不満が募るような場合もあります。この場合、「ボーナスがあるから頑張るけど、会社への愛着はない」「成果を出せば評価されるが、社内の雰囲気には馴染めない」という感情から、短期成果は出るものの、離職しやすく、組織の安定性が損なわれる可能性があります。チームで課題に取り組んでもらう、日々の仕事の目的や意味を見つめてもらえるように働きかけるなど、「組織のために貢献したい」という思いを育てるアクションが必要です。また、その人の周りの従業員に対して働きかけたり、配置転換が必要な場合もあるでしょう。「イエスマン=エンゲージメントやモチベーションが高い」わけではない言われたことを進んでやってくれるからと言って、モチベーションやエンゲージメントが高いと安心してはいけません。一生懸命働いてくれているように見えても、不満を抱えながら、毎日を作業的にやり過ごしている人がいるかもしれないということを知っておくべきです。成果が出せなかったり、ミスが多いような人が当てはまる傾向にあります。このような場合、まずはできることとできないことを把握します。そして、現状を踏まえて目指すべき明確なスモールゴールを設定し、達成の先に何があるのかを示してあげる必要があります。一つずつ階段を登れるように手助けをするイメージです。また、抱えている不満をヒアリングした上で解消するためのアクションをとることや、チャレンジできる環境を用意することも大切です。まずはエンゲージメントサーベイやモチベーションサーベイで定量的な調査を実施して実態把握をすると良いでしょう。エンゲージメントとモチベーションの違いを知ることで得られるメリットここまでで、「エンゲージメント」と「モチベーション」の違いや関係性がご理解いただけたと思います。その知識は人事戦略に活かすことが可能です。エンゲージメントとモチベーションの違いの理解がもたらす具体的なメリットを3点ご紹介します。施策の優先順位が明確になるエンゲージメントとモチベーションの違いが理解できていると、「短期施策」と「長期施策」のバランスを正しく取り、人事施策の優先順位を計画的かつ的確に判断することが可能になります。仮に、従業員のパフォーマンスが低下しているという問題があったとします。もし、短期的に成果を出したい、局所的にやる気を出させたいという目的であれば、モチベーション向上施策を優先する判断となるでしょう。「このプロジェクトを成功させたら給料やボーナスを上げる」といった施策は、外発的動機づけとして一時的なモチベーション向上に繋がります。短期的に士気を高め、プロジェクトを加速させたい時に有効でしょう。一方で、外発的動機づけとなっていた給料やボーナスを得たら、目標が達成されたため意欲を失ってしまう可能性が高いです。逆に、時間がかかっても従業員と組織の関係性を強くして長期的に人材を定着させたいという目的であれば、エンゲージメント向上施策を優先するべきです。会社への貢献意欲が高まるにつれ、徐々に従業員のパフォーマンスの改善が期待できます。強い信頼関係を結ぶまでに時間がかかるため、パフォーマンス向上まで辛抱強く施策を続ける必要があります。エンゲージメントとモチベーションの違いを理解していないと、「とりあえず給料を上げれば解決するのではないか」という短絡的な発想になりがちです。自社の問題の本質を見極め、目標・目的・方針に合わせた人事施策を実施することで、その効果は大きく変わってくるでしょう。採用の判断がしやすくなるエンゲージメントとモチベーションの違いが分かっていると、採用の場面でも適切な判断がしやすくなります。例えば、今回は、長く働いてくれて、ゆくゆくはリーダーの立場になるような人材を採用したいとします。「成長意欲があります!バリバリ働きたいです!」と面接で言っている方の候補者は、そのモチベーションがいつまで続くか分からず、実際にその企業文化に合うかどうかは未知数です。一方で企業理念やビジョンに共感しており、組織に貢献する意欲が強い方の候補者は自社とのエンゲージメントが高めやすいように見えます。短期的なモチベーションの波があっても、長期的に活躍できる可能性が高いです。そうなると今回は「エンゲージメントが高めやすそうな人」を選ぶのが適切でしょう。しかし、面接や応募書類だけでモチベーションやエンゲージメントを見極めきるのは難しいため、選考過程にリファレンスチェックを組み込むと良いでしょう。リファレンスチェックとは、過去に候補者と一緒に働いたことのある第三者に、候補者の働きぶりや実績を質問する手法です。結果をまとめたレポートを確認することで、具体的な成果やパフォーマンスの傾向、キャリアの一貫性やコミュニケーションスタイルなどを知ることができます。リファレンスチェックの結果、前職の上司や同僚から「この人は困難な状況でも粘り強く努力できる」「自己成長への意欲がある」などの評価を得ている候補者であれば、一時的なモチベーションではなく、内発的動機づけがあると判断できます。長期的に生産性高く働いてくれることを期待できるでしょう。また、リファレンスチェックの結果、本人の働きぶりや性格・価値観が自社の文化や価値観と親和性が高く、リーダーシップを評価されているようなら、エンゲージメントを高めやすく次世代リーダー候補としての採用も考えられるでしょう。エンゲージメントとモチベーションへの理解を採用判断にも活かしましょう。関連記事:リファレンスチェックとは?基本的な流れや質問内容について解説離職率を効果的に下げる取り組みができるエンゲージメントとモチベーションの違いが分かっていると、離職率の改善に繋げ、採用コストを抑えられるような施策判断も可能となります。エンゲージメントが低い従業員は、どれだけ企業側がモチベーションを上げる施策を打っても転職を考えます。例えば、以下のようなケースです。「給料が上がったけど、この会社の文化が合わないから辞めよう」「仕事は楽しいけど、会社に対する愛着がないから転職しよう」業務自体に内発的動機づけがあり、モチベーションが高い人材は、同じような業務ができる同業他社に流れてしまう可能性がありますし、給与やボーナスを動機としていた人材であれば、より良い勤務条件の企業があれば転職を検討してしまうでしょう。逆に、エンゲージメントが高いと、「この会社だからこそ愛着を感じている」「この組織の一員で居続けたい」という思いであるため、「多少忙しくても、この会社に貢献したい」「一時的にモチベーションが下がっても、会社のビジョンに共感しているから頑張ろう」と、長期的に働き続ける可能性が高くなります。つまり、人材不足が囁かれる昨今ですが、離職率を改善したいならばモチベーションの維持に関する施策は一旦後回しにし、エンゲージメント向上施策に注力するというのも方法の1つです。関連記事:離職率を改善させる3つの方法とは?実際の取り組み事例も紹介モチベーション向上のためのアクション3選モチベーションとエンゲージメントの違いが明らかになったことで、自社で今取り組むべきことは「従業員のモチベーション向上」なのか、「従業員のエンゲージメント向上」なのかが把握できたと思います。モチベーション向上のための具体的な施策を3つご紹介します。評価制度や給与体系を見直す昇進やキャリアアップの基準を明確にしたり、業績や成果に応じたボーナス・昇給を導入したりといった外発的動機づけが有効です。頑張りが正当に評価される環境を用意することは、従業員がモチベーションを保つことに繋がります。評価基準を明確にしておくことはもちろんですが、個々の従業員が今取り組むべき課題を明確にすることや、期待する役割を伝えることも重要となります。定期的なフィードバックで「何をするべきかはっきり理解できている」状態を常に作ってあげることを意識しましょう。目の前の小さな目標の達成感がモチベーション向上に繋がるのです。最近は年齢や勤続年数ではなく、社内の優秀な人材の行動特性を基準とした「コンピテンシー評価」を取り入れる企業も増えています。自社の評価制度を今一度見つめ直し、最適な手法を検討しましょう。関連記事:コンピテンシー評価とは?メリット・デメリットや導入の流れを解説負担やストレスとなっている「不満の素」を取り除くモチベーション向上のためには、まずは不満となっている要素を取り除き、フラットな状態に戻すことも必要です。大きな不満が足枷となっている状態では、他の施策でモチベーションを上げようとしても効果が薄くなってしまいます。従業員それぞれが自分の業務に打ち込める環境を用意できているのか、点検しましょう。そのために、人事担当者との個人面談や、匿名アンケートが効果的です。残業の多さ、福利厚生の不足、人間関係など、何が不満の要因になるのかは人それぞれなので、働いている状況を把握し、抱えている思いを打ち明けてもらえるようにしなければなりません。現場を知り、従業員一人ひとりとの良好な関係を普段から築いておくことも大切です。挑戦できる環境を用意する内発的動機づけとして、自己成長の機会の提供や、裁量の拡大も効果的です。転職が当たり前となり、キャリア形成やスキル取得のために働く人も多い昨今では、チャレンジできる環境があるのかどうかは大きくモチベーションを左右します。部署異動申請ができる、自分のアイディアをプレゼンできる機会がある、手を挙げれば仕事を任せてもらえるような風土があるかどうかは重要な要素です。従業員をルーティーンワークに閉じ込めてしまっていないか、従業員の挑戦心を刺激するような環境を整えられているかどうか、今一度見直してみても良いのではないでしょうか。エンゲージメント向上のためのアクション3選続いて、エンゲージメント向上のための具体的な施策を3つご紹介します。【お役立ち資料】社員が辞めない職場はどう作る?エンゲージメント向上の実践ガイド会社のビジョンや現状を共有し、浸透させるこれが何よりも大切です。モチベーションを上げるのも、エンゲージメントを上げるのも、全ては会社の目標を達成してビジョンを実現するためです。会社側から積極的に、経営者の考えや会社の理念を伝える機会を作りましょう。全体ミーティングや全社員が見る掲示板などで、役員が会社のビジョンを繰り返し伝えていくことが有効です。現在の仕事が社会にどう貢献しているのか、そしてどんな未来を築く礎になっているのかを従業員に理解してもらう必要があります。また、現状の課題を共有し、どのように解決するのかを組織で考えることも大切です。課題と向き合ったり困難に立ち向かうことは、従業員の自主性を引き出すのに効果的です。従業員同士のコミュニケーションの機会を多く作る会社への愛着心を育むためには、共に働く従業員と良好な「ヨコの関係」を築けているかは大切な要素です。懇親会を定期的に開催したり、コミュニケーションスペースを用意してフランクな会話ができるように促進することで、従業員同士の繋がりを強めることが期待できます。近年ではリモートワークを実施する企業が増加したこともあり、従業員の組織への帰属意識の薄まりも懸念されています。ビジネスチャットツールやオンライン会議ツールを整備し、気軽にコミュニケーションが取れる環境を提供しましょう。自社に適した人材を採用するそもそも採用の段階から、自社の風土に合う人材を採用することにこだわるのも一つの方法です。そのためには自社の課題を確認し、求める人物像を明確化した上で採用活動に取り組まなければなりません。時間はかかりますが、通年採用を導入して候補者一人ひとりとじっくり向き合う時間を確保することは効果的なアプローチ方法の1つです。このほかの手段としてはリファレンスチェックを使用することも考えられます。リファレンスチェックは、比較的短い時間で、候補者の客観的な情報を収集することが可能です。客観的な情報を収集し、より多くの視点から候補者をみることによって、求める人物像とのミスマッチを防止し、自社に適した人材を採用しやすくなります。関連記事:リファレンスチェックによる採用で企業・候補者が得られるメリットエンゲージメントやモチベーションの向上に繋がる採用にはback checkモチベーションは短期的なやる気、エンゲージメントは長期的な組織への愛着のことであり、両者とも組織の成長に必要な要素であるとご理解いただけたと思います。自社の課題や目的に合わせ、モチベーション向上施策・エンゲージメント向上施策をバランスよく取り入れて行きましょう。従業員のエンゲージメントとモチベーションを高めるには、採用プロセスが特に重要です。採用時の見極めを正しく行うことで、モチベーション向上施策・エンゲージメント向上施策の効果がより出やすくなります。選考過程でリファレンスチェックを行い、企業文化に合っているかを確認することで、エンゲージメントを高めやすい人材を採用することができます。また、リファレンスチェックを通してモチベーションが長続きするタイプの人材を見極めることで、組織全体のパフォーマンス向上も期待できます。さらに、リファレンスチェックの結果を基に、入社後の1on1や個別研修プログラムを通し、個人に合わせたモチベーション向上施策・エンゲージメント向上施策を実施することも可能です。株式会社ROXXが提供するリファレンスチェックサービスの「back check(バックチェック)」なら、全ての作業がオンライン上で完結し、候補者のレポートを平均4. 6日間という短期間で取得可能です。この機会にぜひ、株式会社ROXXが提供するback checkの導入をご検討ください。