目次項目作成に役立つ「コンピテンシーディクショナリー」コンピテンシー評価の作成に役立つサンプルとして、「コンピテンシーディクショナリー」というものがあります。これは米国のマックバー社のCEOライル・M.スペンサーと、同じくマックバー社のシグネ・M.スペンサーが1990年代に提唱したコンピテンシー評価の項目のモデルです。多くの企業が参考にしている古典的なモデルなので、これからコンピテンシー評価の導入を検討している場合は大きな助けになるでしょう。関連記事:コンピテンシー評価とは?メリット・デメリットや導入の流れを解説コンピテンシーディクショナリーでは、コンピテンシーの領域を以下の6つに分類しています。達成・行動:個人が成果を達成する際の行動を重視して評価援助・対人支援:他者に対してサポートを提供し、良好な対人関係を築くための行動を評価インパクト・対人影響力:他者に影響を与え望ましい行動や反応を引き出す個人の行動を評価マネジメントコンピテンシー:他者やチームをリードし、高める行動を評価認知コンピテンシー:業務の状況や問題を理解・分析し、解決するための知的スキルや行動を評価個人の効果性:自己管理や自己成長を図る特性やスキル、行動を評価以下のように、コンピテンシー領域それぞれに対してコンピテンシー項目が分けられており、具体的な行動や思考が設定されています。コンピテンシー領域コンピテンシー項目1.達成・行動達成志向秩序・品質・正確性への関心イニシアチブ情報収集2.援助・対人支援対人理解顧客支援志向3.インパクト・対人影響力インパクト・影響力組織感覚関係構築4.マネジメントコンピテンシー他者育成指導チームワークと協力チームリーダーシップ5.認知コンピテンシー分析的思考概念的思考技術的・専門職的・管理的専門性6.個人の効果性自己管理自信柔軟性組織コミットメントこのように、大枠のコンピテンシー領域の中の項目を評価軸に従って評価するのがコンピテンシー評価です。評価軸として、各コンピテンシー項目ごとに行動指標を具体的に決めていきます。たとえば「顧客支援志向」の項目の行動指標であれば「顧客のニーズを理解し、顧客満足を意識して行動できるか」などと設定できます。そして各コンピテンシー項目を、どの程度のレベルでできているか3段階や5段階で評価することになります。たとえば「顧客支援志向」の項目であれば、行動指標をさらに具体的な行動に落とし込み、以下のように設定していきます。レベル3(優れている):顧客からの信頼を得て、長期的な関係が構築されている。レベル2(標準):顧客の要望に対して柔軟かつ迅速に対応している。レベル1(改善が必要):顧客の要望に十分に応えられていない。このように評価を具体的に示すことで、評価者の主観で人事評価の結果が変わりづらくなり公平性が増します。従業員の納得感も得やすいでしょう。また、従業員は次に目指すべきステップが明確になることで正しい方向の努力をし、成長することができるでしょう。コンピテンシー評価の項目を適切に選ぶ前章で紹介したコンピテンシーディクショナリーでは、6つの領域と20の項目がまとめられていますが、全ての行動特性や思考を高いレベルで持つ人間はほとんどいないでしょう。また、ある従業員の立場や職種では、重要ではないコンピテンシーもあります。そのため、コンピテンシーディクショナリーをそのまま流用しても適切な評価とはならず、自社に合うように取捨選択し、カスタマイズする必要があります。実際に評価項目表を作成し始める前にまずやるべき2つのステップを見ていきましょう。目的を明確にするまずは自社でコンピテンシー評価を行う目的をはっきりさせましょう。そもそもコンピテンシー評価は、成果や結果で評価するのではなく、「成果を上げる人がどのような行動をとっているか」に着目、分析することによって再現性の高い人材育成を行うことが主な目的です。自社では、コンピテンシー評価を通して、どのような成果に期待したいのでしょうか。たとえば以下のような目的が挙げられます。(1)従業員個人のパフォーマンスを向上させたい従業員のパフォーマンスが低いことが問題となっている企業の場合、個人の怠惰が問題ではない可能性があります。各従業員が強みを持っているコンピテンシー領域と、配置されている部署や立場で高い成果を出すために必要なコンピテンシー領域が異なっていることで、うまく成果が出せていないかもしれません。コンピテンシー評価を通して従業員が高いレベルで行動できている特性を把握できれば、ゴールとして適切な人事異動を行って強みを活かせる部署で活躍してもらうことができるでしょう。もしくは、配置されている部署や立場では必要なのにもかかわらず、レベルが低い行動特性の項目が浮き彫りになれば、本人に具体的な改善を求めることも出来ます。「今は評価基準のレベル2だから、自発的に行動できるようになってレベル3を目指しましょう」など、具体的なフィードバックが可能になります。(2)リーダーの強化・育成がしたい次世代の優秀なリーダーが育たないことが問題となっている企業の場合、ロールモデルとなるべき優秀なリーダーが近くにいないことが原因の場合があります。コンピテンシー評価を通して優秀なリーダーの行動特性が把握できることで、すでにリーダーの立場にある従業員には具体的なフィードバックが可能になります。まだ現時点ではリーダーでない従業員は、今は自発的にリーダーシップを発揮できていなくても、コンピテンシー評価を通して求められている行動がどんなものか分かれば、優秀なリーダーの行動特性を再現していくことが可能になります。自分のものにして成長できる従業員が育てば、次世代の優秀なリーダーとなってくれるでしょう。(3)組織全体の目標を達成したい個々では優秀な人材がいるものの、組織全体やチームでの成果がいまいち振るわないことが問題の企業もあるでしょう。その場合、従業員が見ている方向がバラバラである可能性があります。組織の目標や価値観に沿った行動やスキルを評価することで、従業員が目標達成に向けて組織文化に適応しやすくなります。また、チームで高い成果を出しやすくする行動特性を評価し、具体的な行動をフィードバックすることで、チームワークやコミュニケーションの悪さが原因となっている場合も解消に近づけることが可能となります。職務・役割に求められる能力を分析する目的が明確になったら、どのコンピテンシーを評価すべきかを固めていきましょう。もし、目的が「(1)従業員個人のパフォーマンスを向上させたい」なのであれば、期待したい「成果」は、一人ひとりの生産性かもしれません。その場合、個人として高い成果が出せている従業員を各部署何人かピックアップし、コンピテンシーディクショナリの項目を参考に「この行動特性を持つ従業員はこの部署で活躍しやすい」という共通項を見つけましょう。それこそが評価すべきコンピテンシー項目です。目的が「(2)リーダーの強化・育成がしたい」であれば、自社にとって優秀なリーダー層をピックアップし、「リーダーシップ」や「影響力」の項目を中心に共通項を見つけましょう。目的が「(3)組織全体の目標を達成したい」であれば、いつも高い成果を出している上位チームのメンバーをピックアップして「対人理解」や「チームワークと協力」の項目を中心に分析を行いましょう。仮に現時点で高い成果を出せている従業員がいない場合は、他社のエース従業員を観察したり、「こんな行動特性を持っていると成果が出せるだろう」という理想像で評価項目を決めていきましょう。全職種に通じるコンピテンシー評価の基本項目5選ここまでのステップで、目的と、その目的を達成するためにはどのようなコンピテンシー領域および項目を評価していくかを決めてきました。しかし、コンピテンシーディクショナリー内の項目に当てはまりきらない行動特性も出てきたかと思います。無理に当てはめる必要はなく、各コンピテンシー領域ごと、自社にとって適切な評価項目を付け足していきましょう。ここではコンピテンシーディクショナリーにはありませんが、全職種に共通して求められやすいコンピテンシーを5つピックアップしてお伝えします。評価項目設定のサンプルとしてコンピテンシー評価の土台づくりに、ぜひお役立てください。自己認知力・自己理解力自己認知力とは自分自身を客観的に見つめる力のことです。評価軸は「自分の能力や特性を把握し、自分の言動が周囲に与える影響について理解できる人かどうか」という点です。他者との関わりの中の自分を見つめることができるかどうかは、ビジネスにおいて非常に大切な土台となります。取引先はもちろん、上司や同僚に対しての接し方や言動は、評価対象の行動になるでしょう。また、自分が力を発揮できる環境やその逆を理解できているか、足りない部分を補おうと行動しているか、なども評価対象となり得ます。▪️評価項目例文行動指標:自分の強みや弱み、行動パターンや影響力を客観的に理解し、またそれをもとに成長や改善に向けて行動しているか。評価基準:レベル3:自分の特性を正確に理解しており、業務や人間関係の場面で意識して行動できている。他者からのフィードバックを定期的に求め、自己改善の機会を自ら作り出し大切にしている。レベル2:自分の強みや改善点をある程度認識しており、フィードバックを受けることで自身の行動やスキルを少しずつ改善しようとしている。ただし、自己認知が不十分な場面も時折見られる。レベル1:自己認知が非常に不十分で、強みや弱みを全く意識せずに行動している。フィードバックを受け入れることができず、自己改善に対する意識も低い。コミュニケーション能力コミュニケーション能力とは自分の思いを伝え、相手の思いを汲み取る能力です。社内外で接する人に関心を持ち関係性を築こうとする姿勢は、ビジネスの場において欠くことはできません。「相手の立場を尊重し、適切な言葉遣いでコミュニケーションを取れるかどうか」が評価の軸となるでしょう。評価者と評価対象者の関係性が評点に影響し易い項目であることには注意が必要です。複数名での評価や、評価する行動や思考を明確にしておくことが大切になるでしょう。▪️評価項目例文行動指標:顧客やチーム内でのやり取りにおいて、わかりやすく情報を伝達し、相手の理解度を確認しているか。また、傾聴スキルを持ち、相手の意図を正確に把握しているか。評価基準:レベル3:自分の考えを明確に伝えられ、相手が理解しやすいように配慮している。相手の話をしっかり聞き、適切なフィードバックも行える。全体的にコミュニケーションの質が良好で、協力的な姿勢が見られる。レベル2:基本的なコミュニケーションはできており、意図や考えを伝えることもできるが、相手が理解しやすいように工夫する点やフィードバックが不足する場面が時々ある。レベル1:情報が正確に伝わらず、誤解や連絡ミスが頻発している。業務遂行力業務遂行能力とは、仕事を終わらせるといった単純なことではありません。一つの仕事の目的を理解し、プロセスを組み立て、計画的に実行する能力のことです。仕事の方法を工夫、改善することで生産性の向上を目指すことも、業務遂行能力に含まれます。与えられた仕事であるならば、進捗の報告を怠らないこと、課題や変更点を共有することなども大切な要素です。具体的な行動がたくさん設定できる項目なので、部署に適した具体的な業務をピックアップして作成すると良いでしょう。▪️評価項目例文行動指標:目標を達成するための明確な計画を立て、具体的なタスクに落とし込めているか。業務を効率的に進めるための進捗管理や工夫、改善意識はあるか。評価基準:レベル3:業務の計画・実行が非常に効率的で、目標達成に向けた工夫を自発的に行っている。高い生産性を維持しつつ、業務改善の提案をするなど、チームや組織全体に好影響を与えている。レベル2:基本的に業務を計画通りに遂行でき、日常業務を安定してこなしているが、大きな改善や新しい工夫は少ない。業務遂行において問題はないが、さらに工夫が求められる。レベル1:業務の計画や管理が不十分で、効率性や生産性が低い。業務が進行しないことが多く、周囲のサポートがなければ業務の遂行が難しい。意思決定力意思決定力とは、決断すること自体よりもむしろ、決断に至るまでの過程を評価すべき項目です。これまでの経験を振り返り最適と思われる選択を取れるかどうか、他者の意見に耳を傾ける素直さがあるか、メリットとデメリットを最大限比較して検討できるかどうか、などが評価対象の行動や思考となります。評価対象者が役職者であるならば、部署や会社全体を意識できているか、現在だけでなく未来を見越しての意思決定ができているかどうかなども、評価すべきポイントになるでしょう。▪️評価項目例文行動指標:意思決定に必要な情報を的確に収集・分析し、リスクや影響度も考慮して最も適切な判断を下せるか。また、周囲の意見にも耳を傾け、判断内容やその理由をわかりやすく周囲に説明し協力を仰げる。評価基準:レベル3:必要な情報を迅速に収集・分析し、的確でリスクを考慮した判断を下している。意思決定後の結果も的確に振り返り、改善点を次の判断に活かしている。チームや関係者と協力しながら透明性のある意思決定を行っており、信頼されている。レベル2:基本的な情報収集と状況分析ができており、適切な意思決定ができるが、リスク評価や代替案の検討が不足することがある。判断結果を振り返ることが少なく、改善点を発見できない場合がある。レベル1:意思決定のための情報収集や分析が行われず、リスクを考慮せずに判断してしまう。結果の振り返りや改善がなく、周囲に混乱を招くことが多い。リスクマネジメントリスクマネジメントは、起こり得るリスクを想定し備える力です。ビジネスの場では特に、何気ない行動が大きな問題を引き起こすことがあります。行動や発言の前に最大限思考をめぐらせて予防策を講じることができるかどうかが、評価の基準になるでしょう。業務思考能力や意思決定力に通じる部分がありますが、上司への事前相談やリスク対策を講じているかどうか、問題発生時の報告の精度などが評価すべき行動となります。▪️評価項目例文行動指標:リスクの特定・分析・対応のプロセスを適切に行えるか。またリスクの発生を未然に防ぐための対策や、発生した場合の影響を最小限に抑えるための対応力があるか。評価基準:レベル3:潜在リスクを予測し、リスクが発生する前に回避策を講じている。リスクの影響分析が的確で、緊急時には速やかに対応し、チームの被害を最小限に抑えた。リスク発生後も原因を振り返り、再発防止策を提案しており、周囲から信頼されている。レベル2:基本的なリスク特定や分析はできているが、対応がやや遅れることがある。また、リスク発生後の振り返りや改善点の共有が少ないため、今後の改善が期待される。レベル1:リスクの特定や分析が不十分で、対応が後手に回ることが多い。リスク発生時に冷静な対策ができず、業務に影響が出ることが多い。職種ごとの評価項目と評価基準の例文ここからは職種ごとに、コンピテンシー評価に盛り込むべき領域を紹介します。3つの職種に絞ってお伝えします。営業系職種の評価項目例自社の商品やサービスを世に広めるための営業職にとって、実績こそが最大の評価対象となるのは言うまでもありません。しかし再現性がなければエース従業員が離職してしまったあと、チームの営業成績は落ちてしまう可能性があります。販売成績の良い従業員に共通する「行動特性」をトレースしていきましょう。営業系職種の代表的な評価項目は「コミュニケーション能力」や「プレゼンテーション能力」ですが、もちろんそれだけではありません営業対象との関係性を作るためのアイスブレイクの時間や、会食などの雑談の中で「ニーズを掘り起こし課題を設定する力」も必要でしょう。また、それらの力を育てるためにはベースとなる知識が不可欠であり、自社製品や営業先製品、市場について理解を深めることも大切です。また、販売成績のいい従業員たちは、いつも商品提案時のプレゼンテーションの精度を高めるために、事前に何度もプレゼンテーションの練習をしていたり、商談相手の企業や業界についての最新情報を収集したり、丁寧な事前準備を欠かしていないのかもしれません。自社で成果を出している従業員の行動や考え方を分析しモデル化すれば、営業力の底上げに繋がります。そしてこれこそが、行動を重視するコンピテンシー評価の最大の長所と言えます。評価項目設定サンプル▪️例文1コンピテンシー評価項目:プレゼンテーション能力行動指標:顧客に対して提案内容をわかりやすく説明し、説得力のあるプレゼンテーションを行える。ビジュアルやデータを用い、提案内容を具体的に伝える工夫をしている。評価基準:レベル3:プレゼンの構成が論理的でわかりやすく、視覚的な工夫も施されている。自信を持った話し方と聴衆に対する配慮があり、質問にも的確に対応できている。プレゼンの目的をしっかり達成し、顧客の理解と共感を得ている。レベル2:基本的なプレゼンの構成や説明はできている。聴衆の反応に対する柔軟な対応がやや不足し、プレゼンの目的は達成されているが改善の余地がある。レベル1:プレゼン内容がまとまっておらず、わかりにくい。視覚的な工夫や話し方に改善が必要で、質問対応がうまくできていない。プレゼンの目的を十分に達成できていない。▪️例文2コンピテンシー評価項目:リレーションシップ構築力行動指標:顧客や社内外の関係者に対して誠実な対応を行い、信頼関係を築けているか。定期的に連絡を取り合って必要なサポートを行えているか。評価基準:レベル3:顧客や関係者に対して、継続的に価値ある提案を行い、長期的な信頼関係を築いている。定期的なフォローと配慮ある対応により、相手からも信頼されており、協力体制が強化されている。レベル2:基本的な信頼関係は構築できており、フォローも適切に行っている。ただし、自身が売りたい製品の商談のみにとどまり、関係性の発展や価値提供の意識がやや不足し、相手の期待を超える提案は少ない。レベル1:関係者との信頼関係が築けておらず、相手への配慮やフォローが欠如しているため、協力を得るのが難しい状態。対応が一方的で、関係性が構築できていない。事務・管理系職種の評価項目例人事・労務・総務・生産管理などの事務・管理系職種の場合、デスクで大量の数字や手続きと向き合い正確に処理を行ったり、従業員からの問い合わせに対応を行ったり、業務の範囲が多岐に渡ります。マルチタスクとなることも多く、安定的で細やかな業務遂行ができるかどうかを評価することになるでしょう。業務の正確性や効率性、自己管理能力、チームとの協力、問題解決能力など自社で「優秀」とされる事務・管理系職種の従業員はどんな行動特性があるか、共通点を探りましょう。評価項目設定サンプル▪️例文1コンピテンシー評価項目:業務の正確性と注意力行動指標:自分の業務内容を確認・点検する習慣があり、ミスの発生を防ぐためのチェック体制を整えているか。同じミスを繰り返さないように、業務プロセスを見直し、必要な改善を行う意識があるか。評価基準:レベル3:業務の正確性が非常に高く、ミスがほとんど見られない。細部まで注意を払い、自らチェック体制を整えているため、品質が安定しています。加えて、ミスの発生を防ぐための改善意識も強く、業務の精度向上に貢献している。レベル2:基本的な業務の正確性は保たれており、必要な確認作業も行っているが、細かい部分での注意が不足する場合がある。ミスは少ないものの、再チェックや精度向上の必要がある。レベル1:業務の正確性が著しく低く、頻繁にミスが発生している。確認作業や注意力が著しく不足しており、業務品質に影響を及ぼしている。ミス防止に向けた改善意識も欠如している。▪️例文2コンピテンシー評価項目:マルチタスク能力行動指標:複数の業務において、業務の重要性や緊急性に応じて優先順位を判断でき、進捗に遅れが出そうな場合は、事前に調整やサポートを依頼するなど、状況に応じて対応できる。評価基準:レベル3:複数の業務を同時進行させ、優先順位を適切に判断して効率よくタスクを管理している。計画的に進捗を管理し、急な依頼にも柔軟に対応している。業務が多いときでも冷静で、安定したパフォーマンスを発揮している。レベル2:複数の業務を適切に進められている。繁忙期にタスクの遅れが出ることが時々ある。進捗管理や周囲へのサポート依頼を適切にできるようになる必要がある。レベル1:複数の業務を同時に管理するのが難しく、優先順位を判断する力も不足している。繁忙期に業務の進捗が大きく遅れ、パフォーマンスが安定しない。時間管理や進捗管理のスキルが不足している。IT技術者系職種の評価項目例スキルや経験が重要視されがちなエンジニア職ですが、一人で開発や保守を行うわけではありませんので、「チームワーク」や「コミュニケーション能力」も大切なコンピテンシー項目です。もし現在、コミュニケーションが活発ではない技術者チームがあり、他のコミュニケーションが活発なチームが成果をあげているのなら、コンピテンシー評価の項目に「コミュニケーション能力」を追加しましょう。顧客視点のサービスや製品の開発のために積極的に他部署と連携しているか、トラブル事例を同僚と共有してチームのリスク対策力の底上げに貢献しているかなど、他者との関わりを促すような具体的な指標を設定することでコミュニケーションを活性化できる可能性があります。このように評価内容をデザインすることで従業員の「行動」を促し、会社の理想の実現を目指すことができるのは、コンピテンシー評価のメリットの一つです。評価項目設定サンプル▪️例文1コンピテンシー評価項目:自己学習力と技術のキャッチアップ力行動指標:技術の進化に柔軟に対応し、新しい知識やスキルを積極的に習得する姿勢があり、それを業務に活用できるか。また、学習した内容を他者と共有し、チームやプロジェクト全体の技術レベル向上にも貢献しているか。評価基準:レベル3:最新の技術やトレンドに対して常に興味を持ち、積極的に学習している。学んだ技術や知識を業務に活用し、業務効率や品質向上に貢献している。また、学んだ内容をチーム内で共有し、チーム全体の技術力向上にも寄与している。レベル2:業務で発生した必要に応じて新しい技術を学習し、業務に役立てようとする姿勢がある。学習した内容を実務に活用できているが、継続的な学習意欲やチームへの知識共有の頻度がやや不足している。レベル1:技術のキャッチアップや新しい知識の習得に消極的で、業務に必要なスキルの習得が遅れている。▪️例文2コンピテンシー評価項目:チームワーク行動指標:技術者がチームの一員として協力し、プロジェクトや業務の目標達成に貢献できるか、また他メンバーとの情報共有や協力姿勢があるか。評価基準:レベル3:チームメンバーとの関係が良好で、協力的な姿勢を持ち、積極的に情報共有やサポートを行っている。自分の業務だけでなく、チーム全体の目標達成に貢献しており、他メンバーの信頼を得ている。レベル2:基本的な協力姿勢があり、必要な情報共有やコミュニケーションは行っているが、やや受け身。レベル1:他メンバーとの協力姿勢が不十分で、情報共有や進捗報告が適切に行われていない。チーム内でのサポートが不足し、連携が難しくなる場面が多い。ここまでご紹介したコンピテンシーディクショナリーにはないコンピテンシー項目も参考に、自社の状況に合わせてオリジナルのコンピテンシー評価シートを作成してみてください。評価シートは定期的に見直し、実態が伴っているのかチェックは忘れてはいけません。評価すること自体が目的にならないように、自社のビジョンや理念に沿ったチェックシートになっているかどうかを吟味しながら作成することをおすすめします。採用活動の場でもコンピテンシー評価シートは活用できるここまで、既存の従業員の人事評価のためにコンピテンシー評価を行う解説をしてきましたが、実はコンピテンシー評価シートは「採用活動」においても有効に活用できます。実際に主要な企業ではソニーで1995年から、日本テレコムネットワーク情報サービスで2000年から導入されているそうです。参考:井村直恵,「日本におけるコンピテンシー ― モデリングと運用 ―」, 京都マネジメント・レビュー, 第7号, 93-106頁, 2005.自社の優秀な従業員の「行動」や「思考」が候補者に当てはまるならば、自社との相性が良い可能性は高いと言えるでしょう。そのためには候補者の「行動」と「思考」を採用の場でいかに掘り起こせるかが鍵になります。実績や経歴にとらわれず、その奥にある候補者の思いやエピソードに焦点を当てることで、効果的に自社に適した人材かどうかを確認しやすくなるでしょう。コンピテンシー評価シートを作成しておけば、少しアレンジして面接の評価シートとして活用できます。採用担当者の工数削減にもなりますので、ぜひ評価シートの作成に挑戦してみてください。関連記事:コンピテンシー面接とは?従来の面接との違いや取り組み方、質問例まで徹底解説ただ、日々一緒に働いている従業員の人事評価と異なり、候補者との接点は面接時のみとなる場合が多いでしょう。限られた面接時間の中で候補者の本質や行動特性を見抜ききることは簡単なことではありません。そのため、中途採用であれば選考の中でリファレンスチェックも併用すると良いでしょう。リファレンスチェックは候補者と一緒に働いたことのある第三者(上司や同僚)に、候補者の働きぶりや行動特性、価値観などを質問する採用手法です。リファレンスチェックを行った結果のレポートと面接の結果を総合することで、自社で活躍しやすい行動特性を持った人材であるかをより見極めやすくなるでしょう。関連記事:リファレンスチェックとは?基本的な流れや質問内容について解説この記事がコンピテンシー評価シート作成の助けになり、あなたの会社の活性化に繋がることを祈っています。コンピテンシー評価を活用した採用ならback checkこの記事ではコンピテンシー評価シートに盛り込むべきサンプルとして、さまざまなコンピテンシー領域と項目、その具体的な行動指標の例文を解説しました。そして採用の場でのコンピテンシー評価活用についても触れましたが、コンピテンシー評価とリファレンスチェックを併用することで、自社のハイパフォーマーと共通する行動特性を持った人材であるかをより見極めやすくなります。株式会社ROXXが提供するオンライン完結型のリファレンスチェックサービス「back check(バックチェック)」であれば、全ての作業がオンラインで完結し、依頼からレポート取得までは平均4.6日という短期間で、効率的に候補者についてのヒアリングが可能です。自社で早く活躍し、高い成果を出してくれる即戦力を求めている場合は、ぜひback checkの導入をご検討ください。