リモートワークが引き起こした「負の側面」──なぜ、従業員による不祥事が近年大きく取り沙汰されているのでしょうか。石田:まず前提として、不祥事の件数が増えているわけではないと思います。コンプライアンス意識の高まりから、多くの企業では昔よりもコンプライアンス遵守の取り組みが進んでいるように感じます。件数が増えているというよりは、SNSなどが普及したことによって不祥事が“可視化されやすくなっている”という方が認識としては正しいかもしれません。それでも不祥事を起こしてしまう人がいるのは、コロナ禍で普及したリモートワークが大きく関係しているのではないかと考えています。オフィスで働くことが当たり前とされていた時は、近くに同僚や上司などがいて、常に“見られている”意識がある状態で働いていました。しかし、リモートワークが普及し自宅が働く場所となったことで、他の人から見られるという意識が薄くなってしまったのではないでしょうか。また、上司も“どこで何をしているか”を常に確認することは難しくなり、厳密に確認するにはマネジメントのコストがかかりすぎてしまいます。誰の目も気にせず、自由に動きやすくなった結果、不祥事を起こしてしまう人がいるのだと思います。SNSでの不適切な発言に関しても、リモートワークでSNSに費やす時間が増えたことが影響しているのではないでしょうか。──そのようなリスクを企業はどのように抑えていくべきでしょうか。石田:対策の一つとして、社用パソコンや社用スマートフォンの定期的なモニタリングが考えられます。業務の用途以外で使われていないかどうかをチェックすることも選択肢として検討する価値があります。「なんだか監視されているような感覚がある」と抵抗を示す人もいると思いますが、社用パソコンや社用スマートフォンはあくまで業務を遂行するためのものであることを理解してもらうことが必要でしょう。あとは社内教育を徹底していくことが重要となります。時間はかかるかもしれませんが、”どういったことをしたら法律に触れてしまうのか”、”就業規則に違反してしまうのか”、具体的な事例を交えながら、丁寧に教育を重ねていくのが有効だと考えています。また、フルリモートではなくオフィス出社も取り入れて、社員同士が定期的に顔を合わせる機会をつくるのも大切です。顔を合わせておくことで、同僚の心身のコンディションが普段と異なる場合、早めに気づくことができるはずです。プライバシーの観点から、個人用のパソコンやスマートフォンの中身を知ることは難しいので、時間をかけて教育していくことで、企業における不祥事の発生リスクを抑えることができると思います。意外と見落としがち、企業がコンプライアンスチェックすべき人の特徴──企業がコンプライアンスチェックすべき人の特徴などはありますか。石田:経歴を見た時や面接でちょっとした違和感を覚えた時など、なんとなく怪しいなと感じられる部分があった際は、きちんとチェックしておいた方が後々問題にならないと思います。日本は海外と異なり、一度採用した従業員を企業が一方的に解雇するハードルは非常に高いです。例えば、アメリカでは従業員が不祥事を起こした際は解雇にするという選択肢が考えられますが、日本ではそうはいきません。そのため、入社の前段階でのコンプライアンスチェックが重要になります。また、犯罪歴がある人物や反社会勢力、反市場勢力(株式市場で不正な取引を行い、違法な手段で利益を得る勢力のこと)に該当するような人物を採用しないことは当然大事ですが、意外と知られていないのが、そういった人々と何かしらの関係性があった立場にある場合も採用する際は気を付けるべきだということです。例えば、過去にインサイダー取引や業務上横領などを犯した人物と一緒に働いたことがあるという場合も、上場審査の際に問題となることがあります。もちろん、そのご本人は何も悪いことはしていないのですが、一緒に働いていたことがあるだけでコンプライアンスの観点でNGと評価されることもあるんです。過去に犯罪に近いようなこと、金融機関のブラックリストに載るような人物とちょっとした関係性があっただけでも、上場審査の際に問題視されてしまうことがあるので、スタートアップの採用ではそういった点にも気を付けて、採用活動に取り組むのが良いでしょう。──コンプライアンスチェックにおける、back checkの良さはどこにあると思いますか。石田:犯罪歴チェックや反社チェックなどは、どの企業でもすでに実施していると思います。意外と把握しづらいのが、会計不正や業務上横領などです。経歴上は何ら問題なく、真面目そうな印象の財務・経理担当者が、実は裏で問題を起こしていたりすることもありえます。このようなケースでは、back checkなどのツールが有効になると思います。毎回さまざまなツールを使い分けて、人力でコンプライアンスチェックをするのには限界があると思います。その点、back checkは反社会的勢力との関与、グローバル制裁リスト調査、破産歴、取得資格情報、SNS行動歴、経歴確認などの項目をサービス上で指定するだけで一括で調査依頼ができるので、採用企業のコンプライアンスチェックのコストも抑えることができると思います。選考フローのなかでスムーズにチェックができるようになるので、採用プロセスにも組み込みやすいのではないでしょうか。採用済みの人のコンプライアンスチェックも定期的に実施すべき──採用人数が多い大企業ほど、コンプライアンスチェックは必要な気がします。石田:そうですね。スタートアップやベンチャーは“村社会”なので、村にいる人同士で連絡を取り合って「この人って採用して問題ないかな」と聞けば、一定のリファレンスチェックはできると思います。大企業の場合は、そのようなチェックは難しく、採用人数も多いので、コンプライアンスチェックの実施がより重要になると考えています。新卒採用では内定を通知する前に、SNSでの発言などに問題ないかをチェックできればある程度問題ないという考え方もあると思います。一方で、中途採用の場合は、選考フェーズのどのタイミングで誰を対象にどこまでの範囲で実施するべきかは企業ごとに異なるように思います。候補者全員を対象とするのか、重要なポジションのみに絞るのか、企業によって方針は異なることを前提としつつ、個人的にはまず重要なポジションのコンプライアンスチェックから進めるのが良いと考えています。また、現従業員に対する定期的なコンプライアンスチェックも検討することも、企業のコンプライアンス強化に有用だと考えます。──最後に何かメッセージがあればお願いします。石田:ビジネスは「人」と「人」が関わるものである以上、不祥事が発生するリスクは一定の確率で存在するものだと認識しておくべきです。その認識を持った上できちんと社内教育を実施したり、組織にとっての健康診断のような位置付けで継続的にSNSでの発言などを中心にコンプライアンスチェックを実施していくのが良いと思います。そうした積み重ねによって、不祥事が発生しにくい組織の土台が築かれていくのではないでしょうか。一方で、トラブルが大きくなり、紛争化してしまった場合などには、早期に弁護士などの専門家に相談した方が良いでしょう。弊所(AZX総合法律事務所)でも、企業のトラブルを含めた企業法務に広く対応しています。最後までお読みいただき、ありがとうございました!コンプライアンスチェック・リファレンスチェックサービスの「back check」は、Web上に候補者の情報を登録するだけで、面接では見抜くことが難しい情報を取得することが可能です。コンプライアンスチェック・リファレンスチェックの実施経験がないご担当者様や、利用方法・運用に不安をお持ちのご担当者様でも、簡単な操作ですぐに利用することができます。ぜひこの機会に「back check」の導入をご検討ください。