企業がSNSを活用すべき理由知名度が上がれば、採用も有利になっていく──「ソーシャルリクルーティング」という言葉が提唱され始めてから10年ほどが経ちました。この10年でどのような変化があったのでしょうか?松本:「企業がSNSを使うのは当たり前」になったと感じます。ソーシャルリクルーティングという言葉自体は昔からありましたが、10年ほど前は各企業も「SNSアカウントを作成して、何か情報を発信してみるだけ」という感じでした。しかし、今は良い人材を採用するために、SNSは“使わなければならない”ツールになっているとも言えます。私が経営しているアースメディアでは、ソーシャルリクルーティングを推進しています。なぜ企業は採用においてSNSを活用すべきなのか。それは、SNSを使って企業の知名度を上げることが、結果的に優秀な人材からのアテンションを獲得することにつながるからです。日本国内では、ソーシャルリクルーティングとは「要するにTwitter採用のことでしょ」と言われることがあります。しかしながら、ソーシャルリクルーティングをTwitterのフォロワーを増やし、DM(ダイレクトメッセージ)を送るものだと思っているのであれば、それは考え方が少し狭すぎるかもしれません。もっと広く考えるべきだと私は思います。SNSを単なる採用媒体と捉えるのではなく、企業のブランド価値を高めるための場所と捉える。SNSで情報発信を重ねて、企業のファンを増やしていけば、SNS経由だけでなくあらゆる採用媒体で応募者を増やしていくことにつながります。例えば「SNSで見たことがある会社」という認知を獲得することができれば、候補者も「この会社知ってるし、応募してみようかな」と思ってくれるかもしれません。SNSでのブランディングがさまざまなチャネルからのエントリーを増やすことにつながるのです。そうした点も踏まえると、企業はSNS発信を続けて知名度を高めていかなければ、良い人材を採用できなくなりつつあるとも言えるでしょう。──昔との違いで言えば、企業が公式アカウントを作成するだけでなく、社員のSNSでの発信が「リクルーター」のような役割を担っている気がします。松本:SNSで公式アカウントや採用アカウントを運用する企業は増えましたが、やっぱり公式アカウントだけでは採用面においてもなかなか効果を出しづらい。フォローする気が起きにくいんですよね。結局は企業ではなく、人に対してファンがつきます。ですから企業アカウントだけでなく、社長や役員、マネージャー、メンバーなど誰もが“自分の名前”でSNSアカウントを持ち、積極的に情報を発信していくことが重要になります。メンバーそれぞれが企業アカウントの投稿を拡散して盛り上げていく。逆もまた然りです。全社一丸となって取り組むのが、理想的なソーシャルリクルーティングだと考えています。企業で働く個人が「人事や上司から『やってくれないか』と言われたので仕方なくやっている」という“やらされ感”がある中でSNSを使うのではなく、「情報を発信していきたい」という自発的な思いでSNSを使っていくことも大切です。企業のカルチャーとしてSNSを使うことが当たり前になっているかどうかは、採用力の差につながってくるでしょう。──SNSは活用すべきだと思いますが、炎上のリスクなどもありますよね。松本:炎上リスクを懸念する声もありますが、特に炎上しやすいのはTwitterのみと言えるのではないでしょうか。Twitter以外のSNSにはそこまで炎上リスクはありません。Twitterの場合、匿名性が高い傾向があるので炎上が起こりやすい状況になっていますが、炎上が起きるのにも理由があります。例えば人事関連で言えば、「個人を貶めるような発言」は避けるべきでしょう。人事が上から目線で候補者に関して何か発言すると炎上しがちです。私の周りでも過去に「こういう人とは働きたくない」というような発言をした人事が炎上していました。たとえ内容自体に理はあっても、切り取られ方や受け取られ方によっては不幸にも炎上してしまうのです。そのため、もしTwitterを活用する場合は、発言内容には細心の注意を払うべきです。プライベートのアカウント以上に、他人に対して敬意を払った表現にする、ネガティブなことは書かないなど、誰に見られても問題のない内容になっているかの確認が大切です。いきなりのDMアタックはNG企業がSNS活用にあたって意識すべきこと──採用にSNSを活用する際、意識すべきことは何でしょうか。松本:よくやりがちな間違いは、SNSを単なる候補者データベースのように使ってしまうことです。「良さそう」と思った候補者に対して、ひたすらDMを送る。こうしたスカウト型転職サイトのような使い方は避けた方が良いでしょう。スカウト型転職サイトに登録している人たちの多くは企業からのスカウトメッセージを待っていますが、SNSに登録している人たちは、必ずしもスカウトメッセージを待っているわけではありません。その状態でいきなりDMが届いても困ってしまうでしょう。知らない企業からいきなりスカウトメッセージが送られてくることは、結構よくある話ですが、「何の企業か分からないし、なんでメッセージを送ってきたんだろう」と思われるので、結果的に企業の評判を下げることになってしまう。ですから、私はいきなりDMを送ることはおすすめしていません。まずは情報発信を継続して行い、会社・個人のブランディングをしていくべきです。発信を続け、候補者と繋がって交流し、信頼関係を構築した上で「弊社にご興味お持ちいただけそうですか?」というように声をかける。こうしたステップをきちんと踏んでいくことがソーシャルリクルーティングでは大切です。──まずは情報を発信し続けていくことが大事である、と。松本:そうですね。最初にすべきことは自己開示です。SNS上で「人材を募集しています!」という投稿だけしていても面白くないですし、フォロワーや繋がりも増えないでしょう。まずは自分の頭の中で考えていることをSNS上にアウトプットしていく。それを続けていくことで、SNSがあなたの名刺代わりになりますし、投稿内容にファンがついていけば、あなた自身がブランドになっていく。企業のブランディングも大事ですが、個人のブランディングは一生続いていくわけですから、自分自身のブランド価値を高めていくことも採用においては重要ですし、それが採用競争力にもつながっていくと思います。Twitterではすでに一定の影響力を持った人事系のアカウントがいくつもありますが、LinkedInは日本ではまだユーザー数がそれほど多くないこともあり、今であればアカウントのブランド価値を高めやすい。そうした背景もあり、LinkedInの活用もおすすめしています。短期的に人材を採用したいのであればスカウト型転職サイトや転職エージェントの活用も必要でしょうが、長期的な視点を持って関係性を築いた上で良い人材を採用したいのであればSNSを活用すべきです。この使い分けをしていくことが、採用を成功させるための鍵となります。SNSとリファレンスチェック企業が候補者との相性を正しく判断するための視点──ソーシャルリクルーティングにおける「リファレンスチェック」の役割を松本さんはどのように考えていますか。松本:SNS上では見えない部分をきちんと見える化し、候補者が自社の価値観とマッチしているかどうかを正しく判断するために、リファレンスチェックは必要なツールだと考えています。SNSアカウントの繋がりや投稿内容から、雰囲気や印象の部分を推し量ることはできますよね。例えば「この人と繋がっているんだったら心配なさそうだな」「こういう投稿をしてるのは少し不安だな」といった感じです。そこから、候補者と企業の相性を確かめるためにback checkのようなリファレンスチェックツールはとても有効だと思います。入社後にミスマッチを起こさないためにも、第三者からの評価はきちんと見ておくべきでしょう。また、世の中にはSNSアカウントを持っていない、もしくは登録時の状態のままで止まっている人も少なからずいます。それはそれで「この人は大丈夫なのかな?」と思ってしまいますが、そういう人のリファレンスを確認する際にもback checkは有効だと思います。今の時代、ひとつもSNSアカウントを持たないよりは、SNSを目的に沿って使い、自分のキャリアやキャラクターを明らかにした方が、求職者としても転職や副業などにも繋がりやすくて得だと思います。──企業はリファレンスチェックをどのように使っていくべきだと思いますか。松本:前提として、企業はSNSで定期的に情報を発信し、将来一緒に仕事をする可能性のある方々ともリレーションを構築し、自分たちなりのリファレンスチェック網をつくることが大事です。しかし、SNSを使っていない人もいますし、採用をするにあたっては実際の働きぶりなど第三者からの客観的な情報も判断材料として有効だと思いますので、back checkを使ってリファレンスを取るのが良いと思います。企業はSNSでのコミュニケーションとリファレンスチェックとを効果的に組み合わせることで、候補者のことをより深く知った上で採用判断ができるようになります。選考過程で提出される履歴書や職務経歴書の内容や面接だけでは、候補者のことを正しく評価することはできない。とはいえ、何十回も面接ができるかと言えば、工数やコストの兼ね合いからもできない。情報を補完するためにback checkを使えば、さまざまな角度から候補者のことを知ることができ、正しく相性を判断できると考えています。一般的にリファレンスチェックは選考の最終段階で実施すると思いますが、可能であれば選考の途中段階に実施するのもおすすめします。途中段階で候補者の価値観や考え方などを知ることができれば、その後の面接により深みが出るはずです。面接の内容をより深いものにするためのツールとしてback checkを使えば、採用活動をより良いものにしていけると思います。──最後にSNSとの向き合い方について教えてください。さまざまなSNSがある中、企業・個人はどうやって各SNSを使っていくべきでしょうか。松本:まずはSNSを活用する目的を定めるようにしましょう。採用なのか、ブランディングなのか。目的を定めた後は、自社と自分自身にとって“得意なSNS”は何かを考えます。各SNSにはテキスト・動画・音声などの特徴があります。それらの表現方法の中で最適なものは何かを考え、最も力を発揮できるプラットフォームで発信をしていくと良いでしょう。あとは投資対効果も意識しておくと良いかもしれません。発信をする上で最もコストがかかるのは動画で、通常は最もコストがかからないのがテキストです。それらも踏まえた上で、企業・個人として何に注力すべきかを定めていくのが良いと思います。SNSでの発信はすぐに効果が出るわけではありません。効果が出るまでそれなりの時間がかかるからこそ、長く続けられそうなものは何かを考え、そこに対してリソースを投下していくことが重要だと思います。アースメディアでは、企業ブランディングやソーシャルリクルーティングを目的としたSNS運用の支援、人事組織コンサルティングなどを行っています。よろしければ、企業公式サイトもあわせてご確認ください。■松本氏のLinkedIn公式アカウントはこちら最後までご覧いただき、ありがとうございました!コンプライアンスチェック・リファレンスチェックサービスの「back check」は、Web上に候補者の情報を登録するだけで、面接では見抜くことが難しい情報を取得することが可能です。コンプライアンスチェック・リファレンスチェックの実施経験がないご担当者様や、利用方法・運用に不安をお持ちのご担当者様でも、簡単な操作ですぐに利用することができます。ぜひこの機会に「back check」の導入をご検討ください。