すべての候補者に「歓びの体験」を提供「会社のファンになってもらう」ために必要な考え──候補者から“選ばれる”会社になるために、何が必要だと思いますか。岡野:採用プロセス全体において、候補者体験(Candidate Experience)を向上させ、会社の“ファン”になってもらう覚悟を持つことが重要だと思います。これは一朝一夕にできるものではありません。会社のファンになってもらうということは、非常に時間がかかることです。長い目線を持って取り組むべきであるということは、まず認識しておくべきでしょう。ADKホールディングスは、2020年に『すべての人に「歓びの体験」を。』というパーパス(企業の存在意義)を策定しました。これを人事・採用部門に置き換え、採用担当者として考えてみると、“すべての人”は「選考プロセスで出会った人たち」となります。具体的には、ご縁があって内定を承諾いただき、当社に入社した人だけに留まらず、「当社の選考プロセスでマッチングが図れなかった人」、もしくは「内定のオファー後に当社以外の会社を選択された人」なども含まれます。何かしらの形で一度でも当社との接点を持った人たちにはファンになってもらう。『すべての人に「歓びの体験」を。』というパーパスを実践するためには何ができるのか、今も日々模索しているところです。──ADKホールディングスでは、具体的にどのような取り組みを行っているのでしょうか。岡野:例えば、新卒採用においては採用ファネルの「検討」のフェーズで、就職活動における悩みや相談に応えたり、社会人に必要な思考法などを教えたりする「研修」をオンライン説明会の形式で開催しています。もちろん、通常の会社説明会や先輩社員の座談会なども対象学生のペルソナ別に実施します。ただ、私たちのパーパスをもとに、「すべての学生」が歓びの体験を得るために何ができるかを考えた結果、就職活動のためだけではなく、ビジネスパーソンとして仕事を進めるにあたっての必要な思考法やフレームワーク、アイデアの発案法を用いて、自己PRや志望動機、面接を「自分の言葉」で伝えることができるようになった方がいいのではないかと考えました。そのため、「プログラム」という名目で独自の会社説明会を開催しています。実際、プログラムを受講した学生が当社にエントリーし、提出されたエントリーシートの中身が自分の言葉で説明できているのを見ると、こちらも大きな歓びを感じます。このようなプログラムができるようになったのも、コロナ禍でオンラインでの会社説明会が浸透したことが大きいです。場所を問わず、何度でも、そこまで労力をかけず、会社説明会を開催することができるようになった結果、こうした新しい取り組みも実践できるようになりました。一方、中途採用においては、現場のマネージャークラスに権限移譲を行い、マネージャーがダイレクトスカウトのメールを送信できるようにしました。現場のマネージャークラスが「必要な人材」をサーチし、スカウトメールを送信して面談まで実施しています。これまでは中途採用の担当者が候補者にアプローチして選考を進めていましたが、入社後に一緒に働く現場メンバーが主体となって「採用したい人材」をサーチすることで、候補者と面談で会う際の期待値が上がり、選考スピードや面談でのCXが向上すると考えています。実際に、ご縁があって当社への入社日を迎えた時にも、自らがアクイジションしたタレントを迎え入れる現場のマネージャーの笑顔が以前よりも少し増したような気がしています。新卒採用と中途採用で取り組みの内容は異なりますが、両者に共通しているのが”「採用風土形成」が候補者に会社のファンになってもらうために最も大事である”ということです。リファラル採用やアルムナイ採用のように、より現場の社員が自らの会社を好きになり、社外の人に紹介したいと思ってもらえるかどうかが、ファン形成において重要になります。そういった意味では、採用担当者の業務領域が組織開発まで拡大していると感じています。これからは“採用3.0”の時代へ求められる「タレントマッチング」──この10年ほどで企業を取り巻く環境は大きく変化しました。それによって、企業の採用戦略はどのように変わってきていると感じますか?岡野:候補者を「選ぶ」のではなく、候補者から「選ばれる」ために、誰に対して何をしていくのか。採用戦略の思考プロセスが変わったなと感じています。例えば、採用担当者の仕事を候補者、応募者に対して会社説明会などを開催して、自社の選考プロセスに乗せる「選ぶ(Selection)」だけの時代を“採用1.0”とします。ただ、それでは優秀な人材を採用できなくなり、採用戦略に基づいて設定したターゲティング人材を精緻に設定し、採用ブランディングから選考手法も個別設計する「獲得する(Acquisition)」、いわゆる「タレントアクイジション」が求められるようになりました。それが“採用2.0”の時代で、いま多くの企業が取り組んでいる段階にあると思います。今後、“採用3.0”の時代においては、企業と候補者が相思相愛で結ばれる「タレントマッチング」が求められるようになると私は予想しています。生まれたときからスマートフォンが暮らしの中にあり、当たり前のようにSNSを使いこなす“デジタルネイティブ世代”が新卒採用の候補者となり、口コミサイトの情報が入社する企業を決める際の重要な要素を占めるようになりました。採用手法としても選考プロセスの開示が進み、選考通過者数、次回選考の狙い・内容も開示し、その情報開示自体をブランディングにつなげる企業も見られるようになりました。人的資本の情報開示が今後進んでいけば、入社後の人材への投資額も可視化されるため、候補者はより企業選びの情報に接することができるようになるでしょう。そうした変化にあわせて、私たち採用担当者は、数字で表しづらい企業風土・社風・温度感をすべての選考プロセスで伝えるべきです。企業と候補者がお互いのことを理解した「マッチング」の状態を目指す努力がより一層必要になっていくでしょう。なぜ、リファレンスチェックが必要なのか?企業が候補者とのマッチングを図るために──採用のあり方が変化していく中、岡野さんはリファレンスチェックの可能性、実用性をどのように見ていますか。岡野:企業と候補者が相思相愛で結ばれる「タレントマッチング」の実現を進めるにあたって、リファレンスチェックはとても重要な役割を担っていくと思います。ここ数年、企業の口コミサイトがいくつも登場し、候補者はそれらを活用することで企業と直接コミュニケーションをとらずとも、さまざまな情報を得ることができるようになりました。その一方、企業側が候補者の情報を得るためには、エントリーシートや、職務経歴書・履歴書の他には、面接などで直接コミュニケーションをとるしかありません。もしくはSNSでの情報発信などを見るだけでしょう。企業と候補者のマッチングを目指すには、企業がもっと候補者の情報を得られる手段があった方が良いと思います。面接で得られる情報だけで自社にマッチするかどうかを判断し、仮に入社後に「もっと活躍できる企業が他にあった」となれば、候補者の歓びにはつながりません。第三者から候補者の情報を得られるという点において、リファレンスチェックは非常に効果的なツールだと思います。“人生100年時代”と言われるようになり、「就社ではなく就職へ」と言われて久しくなりました。人材の流動性が高まり、転職が当たり前になりつつある時代ですが、「入社した会社がダメだったら、また転職すればよい」と考えている候補者は意外とまだ少ないのではないでしょうか。少なくとも複数年働く企業を選ぶ際に、自分が調べて感じたことに加えて企業側もしっかり「自分のこと」を理解してくれて、その上で内定オファーをもらえるのであれば、企業風土・文化なども含めてマッチしたと証明されたのだ、と私だったら思います。内定オファーという、企業から候補者への“ラブレター”における選ばせてもらった「理由」のパートの作者として、リファレンスチェックはその存在意義と必要性がますます高まっていくと思います。──具体的に、ADKホールディングスではどのようにリファレンスチェックを活用していますか。岡野:ADKホールディングスでは、back checkを活用して前職での具体的な「働きぶり」から、候補者の価値観や何を大事にしているのかといったコンピテンシー(個人の能力・行動特性)を見るようにしています。第三者からの評価を含めて、当社とのベストマッチングかどうかを真剣に考えます。例えば、マーケティングの事業領域が変化している中で、既存の手法にとらわれず新しいことへの「挑戦心」があるかどうか。また、中途入社やプロパー社員かといった点とは関係なく、多様なバックグラウンドのプロフェッショナルが集まる環境での「協働スタンス」があるかどうかで自社とのマッチングを判断しています。「報酬」だけでなく「幸福」を求めるように企業が今後用意すべきは「成長を実感できる環境」──最後に、今後のADKホールディングスの採用戦略について教えてください。岡野:報酬や組織規模だけではなく、「プロフェッショナルとして成長できる」企業としてのポジショニングを確立していきたいです。もちろん、転職市場を見ながらプロフェッショナルに見合う報酬体系の見直しや、等級制度を用意し続けることは今後もすべての企業においてとても重要なことだと思います。ただし、人は「報酬」を目的とされ続けることだけを望んでいないと思うのです。今後報酬だけでなく、人は企業に所属して「幸福」になれるかどうかが企業選びの大部分を占めていくようになるのではないでしょうか。私自身が若手だった頃、マーケティングの現場で先輩がバッターボックスにたくさん立たせてくれて、空振りしながらもホームランも打たせてもらいました。採用した候補者がADKホールディングスの組織風土において、自分の若い頃のような経験を重ねて成長していく。これからの時代、成長を実感できる環境であれば人は「幸福」に感じるのだと思っています。そのため、ADKホールディングスも転職市場で候補者が幸福を感じられる報酬設計・教育研修プログラム・キャリア開発制度を拡充させていきます。そういったハード面での情報をスピーディーに発信していくと同時に、組織風土や熱量などのソフト面はなるべくリアルタイムで直接感じられるような採用体験をデザインし、プロフェッショナルとして成長できる企業としてのポジショニングを確立していきたいです。最後までご覧いただき、ありがとうございました!コンプライアンスチェック・リファレンスチェックサービスの「back check」は、Web上に候補者の情報を登録するだけで、面接では見抜くことが難しい情報を取得することが可能です。コンプライアンスチェック・リファレンスチェックの実施経験がないご担当者様や、利用方法・運用に不安をお持ちのご担当者様でも、簡単な操作ですぐに利用することができます。ぜひこの機会に「back check」の導入をご検討ください。