まずは「なりたくない姿」を書き出すそこから少しずつ「なりたい姿」を明確に──社会の不確実性が高まる一方、働き方の多様化は進んでいます。そのような状況下で個人はどういった考えのもと、キャリアを形成していくべきでしょうか? あふろん:重要なのは「自分はどうなりたいか」というイメージを明確に持つことです。テクノロジーの発展によって情報化社会となり、さまざまな情報が見える化されました。10〜20年前と比較すると、自分自身が必要とする情報を得られやすくなったと思います。だからこそ、漠然と「こうなっていたい」というイメージを持つのではなく、より具体的に「こうなりたい」というイメージを持つべきです。私はよくキャリア相談に乗ることがあるのですが、漠然と「こうなっていたい」というイメージを持ったまま転職をしている人はキャリア形成に失敗している気がします。それこそ、私自身も新卒のときに「カッコいい社会人になりたい」という漠然としたイメージだけで企業選びに取り組んだのですが、結果的には思い描いていたキャリアを歩むことができませんでした。「カッコいい社会人」は漠然としすぎていますし、定義づけもできていないので、上手くいかなくて当然だったと思います。自分自身の失敗経験も踏まえた上で、思い描くキャリアを形成していくためには「自分はどうなりたいか」を一言で明確に話せるようになるべきです。それをきちんと話せる状態にしておくと、キャリアアップを目的として転職も成功しやすくなります。──「自分はどうなりたいか」というキャリアの軸を持っておく。あふろん:そうですね。「自分はどうなりたいか」というキャリアの軸を持っておくと、仮に転職活動が上手くいかなかったとしても、なぜダメだったかを分析することができます。ダメだった理由をきちんと分析できれば、次の転職活動につなげることができるでしょう。「良さそうな求人内容だったから」「IT業界は面白そうだと思ったから」といった漠然とした理由で転職先を決めた場合、失敗となるケースが少なくありません。なおかつ、失敗したときにダメだった理由を分析することもできません。ここ数年で、日本でも転職に対して肯定的な意見も増えてきましたが、それでも転職回数が多い方がキャリア形成に有利に働く状況にはなっていない。それも踏まえると、転職で失敗できる回数も2回くらいだと思います。その2回で失敗の理由も分析できるよう、「自分はどうなりたいか」を具体的に話せるようにしておくことが望ましいでしょう。──「自分はどうなりたいか」を定めるには、どうすればいいでしょうか。あふろん:私がキャリア相談を受ける際によく伝えているのは、「5〜10年後にどんな自分になりたくないか」を考えるということです。「なりたい姿」をイメージしようとすると選択肢が多すぎて難しいですが、「なりたくない姿」は割とイメージしやすいと思います。まずは「なりたくない姿」をイメージし、そこから少しずつ選択肢を絞っていき、最終的に「自分はどうなりたいか」を定めていくと良いでしょう。転職インフルエンサーやHR業界で著名な方々は、よく「やりたいことを見つけるべき」「自分の強みを見つけるべき」という話をするのですが、そもそも「やりたいこと」や「強み」を見つけられない人が多い。「やりたいこと」ではなく、「やりたくないこと」を考えてリスクを切り捨てていき、自分が良いと思う選択肢を見つけていくのが良いと思います。一番やってはいけないのは「他人と比べること」です。人生やキャリアに正解はないので、他人と比べたところで最適解は出ません。仮に人生やキャリアの正解を定義づけするのであれば、自分が満足できたかどうかです。だからこそ、他人と比べてキャリアを考えるのはやめて、「自分はどうなりたいか」を考えて、それを追い求めていくべきです。「株式会社・自分」の視点を持つキャリアアップの定義は人それぞれ──あふろんさんは年間500人以上に転職アドバイスをしています。求職者の話を聞く中で、今の時代のキャリア形成において、多くの人はどんな勘違いをしていると感じますか?あふろん:「大手企業に入社したら安定」「知名度の高い企業に入社したら安心」という考えを持っている人がまだ多くいる印象です。「会社に守ってもらう」という考えを持つことは、今の時代のキャリア形成において大きな勘違いです。会社にキャリアをつくってもらうのではなく、あくまでキャリアは自分がつくる。「株式会社・自分」という考えを持って、キャリアを形成していくのが良いと思います。「株式会社・自分」の売上は毎月の給与です。売上を上げていくためには何をすべきなのか。それを考えて行動していくべきでしょう。あとは、「キャリアアップ」という言葉の定義も“人それぞれ”であることは理解しておくべきです。当事者意識を持つということを常に念頭に置いて行動している人は、自分のキャリアを実現できている傾向にあります。──「キャリアアップ」という言葉の意味も人によって異なる、と。あふろん:「キャリアアップ」と聞くと、多くの人は「年収を上げる」というイメージを持つかもしれません。決して間違いではないですが、中にはワークライフバランスを重視した環境で働くことをキャリアアップと考える人もいます。キャリアアップの定義は人それぞれです。転職して年収を上げることがキャリアアップの人もいれば、今の生活を維持して転職することをキャリアアップと考える人もいる。大事なのは、どういうキャリアを歩めたら自分は満足なのか、です。「自分はどうなりたいか」のイメージを具体的に持ち、そこから逆算して働く場所・環境を選んでキャリアを形成していくのが良いでしょう。思い描くキャリアを歩むために環境を変える必要があると思ったら転職すべきでしょうし、そうでなければ自分がコンスタントに結果を出せる職種に就いて、そこで結果を出し続けていくのも選択肢としては良いかなと思います。──ちなみに転職活動はどう進めていくのが理想的でしょうか。あふろん:今は情報化社会で日々たくさんの情報が流れています。事前にきちんと業界や企業、職種の情報を収集し、確認しておくことが大切です。その上で、その環境に自分が身を置くことで、採用企業の事業と組織にとってどのようなメリットがあるのかを選考を通して伝えていきます。ここ数年「人手不足」と言われていますが、それでも多くの人たちが「入社したい」と思うような企業はより慎重に採用する人材を選ぶようになっています。志望動機や自己PRに不足がなく整っているかよりも、入社後にパフォーマンスを発揮できそうかを企業側はより重視するようになっている。だからこそ、「株式会社・自分」という意識を持って、その企業に入社することのメリットをきちんと伝えられるかどうかが大切です。リファレンスチェックは求職者の武器になる採用のミスマッチを減らすのにも効果的なツール──転職活動におけるリファレンスチェックについて、あふろんさんはどのような考えをお持ちですか。あふろん:リファレンスチェックは求職者の“武器”を増やしてくれるツールだと思います。例えば、リファレンスチェックがあることで面接では伝えきれなかった、自分の価値観や考え方などを伝えることができる。その点において、リファレンスチェックはすごく良いと思います。求職者は転職活動において、自分の情報をあまりオープンにせず、「これを言ったら良くないんじゃないか」とマイナスな思考になりがちです。求職者が気づけていない“良さ”をきちんと企業側に伝えるためにも、リファレンスチェックはもっと浸透していくべきだと思います。また、リファレンスチェックによって採用のミスマッチも防ぐことができます。Googleの人事トップによる著書『WORK RULES!』に「通常の面接で判断できる情報の信憑性は14%しかない」と書かれているように、面接で得られる情報には限りがあります。だからこそ、元上司や同僚などの第三者から「働く姿」や「価値観」などの情報を得られるリファレンスチェックの重要性が高まっているのです。面接だけでは見えていなかった部分が見える化され、それをもとに採用の意思決定を行うことができれば、入社後のミスマッチも減ります。転職回数の多さや在籍期間の短さにネガティブなイメージを抱きがちな日本では、入社後のミスマッチは求職者のキャリアに傷がついてしまいますし、企業も採用には一定のコストをかけているので、お互いが不幸になってしまいます。リファレンスチェックは求職者がその企業に本当に入るべきかどうかを正しく判断してくれるツールでもありますし、求職者の良さを伝える武器になるツールだと思います。まだ世の中の一部の人は「自分が問題ないかどうかをチェックされているツール」という認識を持っているかもしれませんが、リファレンスチェックはあくまで企業と求職者の「相性」を確認するためのもの。転職で「失敗した」と思う人を増やさないためにも、もっとリファレンスチェックが世の中に正しく広まってほしいなと思います。──リファレンスチェックが求職者の「武器になる」というのは面白いです。あふろん:自分の良い部分は、意外と自分では気づけないものです。それを第三者を通じて企業に伝えてもらえるというのは、求職者にとっては武器が増えることになると思います。リファレンスチェックを実施した上で内定が出たのであれば、「活躍できる可能性が高い」と認められたようなものだと思うので、求職者の自信にもなるはずです。また、リファレンスチェックを導入している企業は、人材に対する教育・マネジメントに力を注いでいる傾向にあると思っています。リファレンスチェックを導入しているかどうかで、人に真剣に向き合っているかどうかも分かるので、転職先を選ぶ際は「リファレンスチェックを導入しているかどうか」で見てみるのも面白いんじゃないかと思います。──ちなみに、あふろんさんは過去にリファレンスチェックを経験したことがあるとのことでしたが、実際に体験してみていかがでしたか。あふろん:私がリファレンスチェックを受けた際は、前職の上司や同僚が推薦者として回答に協力してくれたおかげでスムーズに進んだので良かったです。ただ、組織規模が小さい企業の場合、そもそも誰にリファレンスチェックを依頼すればいいか迷ってしまうこともあるんじゃないのかなとも感じました。今よりも転職やリファレンスチェックが広まって、さらに一般的になると良いなと思います。──最後に求職者へのアドバイスがあれば教えてください。あふろん:大事なのは「自分はどうなりたいか」のイメージを明確に持つことです。そのイメージから逆算し、今の企業で自分が理想とする将来像の実現可能性が低いと感じたのであれば、より可能性の高い企業に入社した方がいいでしょう。今は転職に対して否定的な意見もあれば、肯定的な意見もあります。「自分がどうなりたいか」から逆算して、理想を達成できる可能性が高い選択肢が「転職」なのであれば、転職して自分が満足できるキャリアを歩んでいくべきだと思います。転職成功に関する情報はSNSでも発信していますので、よろしければ本記事とあわせてご確認ください。最後までご覧いただき、ありがとうございました!コンプライアンスチェック・リファレンスチェックサービスの「back check」は、Web上に候補者の情報を登録するだけで、面接では見抜くことが難しい情報を取得することが可能です。コンプライアンスチェック・リファレンスチェックの実施経験がないご担当者様や、利用方法・運用に不安をお持ちのご担当者様でも、簡単な操作ですぐに利用することができます。ぜひこの機会に「back check」の導入をご検討ください。