2021年12月14日、「今の組織をもう一度見直そう、成果が出る人材育成・組織づくりとは」と題してセミナーを開催。プロ経営者として各社の経営に関わるポジションを歴任された、株式会社タカラトミー 元代表取締役社長、アース製薬株式会社社外取締役のハロルド・ジョージ・メイ氏にご講演いただきました。社員のポテンシャルが存分に発揮できる体制づくりが、業績アップにおいて重要な要素の一つです。今の社内組織は、スポーツのフォーメーションのように、最適な人材が最適な場所に配置され、優れたパフォーマンスを生み出す最強の組織になっているのでしょうか。縦割り組織により、部署間のコミュニケーションや協力体制が阻害されてはいないでしょうか。育成、組織づくりの文脈に沿って、組織内での適材配置、テレワークにおけるメリット・デメリット、社内評価における独自制度、組織の問題点・改善点などについて解説いただきました。講演者プロフィールハロルド・ジョージ・メイ氏元日本コカ・コーラ副社長/元タカラトミー代表取締役社長、元新日本プロレスリングCEO1963年オランダ生まれのオランダ人。父親の仕事の関係で幼少期を日本で過ごし、日本語、英語、オランダ語など6ヶ国語を話す。ニューヨーク大学修士課程修了。ハイネケンジャパン、日本リーバ(現ユニリーバ・ジャパン)、サンスター、日本コカ・コーラ副社長を経て、2015年にタカラトミー代表取締役社長となり、大幅黒字回復を遂げる。2018年に新日本プロレスリング株式会社 代表取締役社長兼CEOに就任。海外進出に尽力し、過去最高売上・最高利益を出す。(2020年10月退任)これまでの経営手腕が話題となり、マスメディアに多数出演。 NHK「おはよう日本」「ザ・ヒューマン」「サラメシ」、テレビ東京「ガイアの夜明け」、CNN特集、TBS「Nスタ」「がっちりマンデー」、活字媒体では「日本経済新聞」「東京新聞」連載、「日経トレンディ」「東洋経済」「PRESIDENT」「経済界」「中央公論」「週刊新潮」など。第45回経済界大賞(2019)ではグローバル賞に輝くなど、経済界からの注目度も高い。コミュニケーション不足による組織の問題とは新型コロナウイルス感染症の影響により、働き方も大きく変化しました。これまで一般的だったオフィスへの出社がなくなり、現在ではテレワークが当たり前に。ただし、働き方の変化による障害があることも確かです。メイ氏は、自身が考える理想の組織について3つの要点を示しました。1つ目は、社長から始まり新入社員に至るまで、全員が会社の状況を把握し「共通認識」がある組織。2つ目は、縦割りが発生せず「各部署が協力し合う関係」にある組織。3つ目は、競合の増加やデジタル化への対応ができる「情報伝達が早い」組織です。これら3つには、テレワークの影響で阻害されがちな「コミュニケーション」が重要な鍵を握るという共通点があります。一方で、「移動時間の削減」、「集中できる仕事環境」等でメリットを感じ、テレワークを続けたいという人が82%(※)いることも事実として存在しています。合わせて、テレワークにより生じるコミュニケーション不足が起因になり発生してしまう問題が、「慣性の法則に限界」、「同調圧力・相互監視のない新環境」、「雑談が減る・質問しづらい」の3点だと伝えました。そこで、テレワーク環境下でも理想の組織を作るために、タカラトミー社で実践していたコミュニケーション不足を解消する2つの事例を紹介。1つ目は、「社長から新入社員まで、14レイヤー存在していた階層を6レイヤーに変更したこと」と述べました。多くの階層が存在していたことにより、「社長が話した内容が一番下の階層に伝わる頃には全く異なるものになっていた」というような認識の齟齬が減り、より共通認識を取りやすくなりました。2つ目は、「リーダー自らムードメーカーになること」と述べました。相手に何かを伝える場合、どれだけ頑張っても伝えたい内容の50%程度しか伝わらない、受け取った相手が他の相手に伝える場合はさらに50%しか伝わらないと述べ、できる限りオーバーに、パッションが伝わるようにコミュニケーションをとっていました。加えて、伝える内容はオープンに、良いことも悪いことも数字を用いて、定期的にコミュニケーションを取ることで、コミュニケーションの不足や齟齬を補っていたと伝えました。※日本労働組合総連合会による調査強い組織をつくるために行なっていた3つのことメイ氏がタカラトミー社の代表取締役に就任した当時の経営状態は、かなり厳しい状態にありました。二期連続の赤字に加え、就任二期目は93年の歴史の中で最大損失、株価はブックバリューより20%も低く、大量リストラ(希望退職)が発生していました。会社の立て直しにあたり一番初めに行ったことは、組織のパッションを奮い立たせるようなものでした。1926年の第一創業期から2015年までの第三創業期の歴史について触れ、長い期間、時代の変化に対応してきた凄い企業である、というプライドを社員に植え付けました。V字回復を成し遂げるために、組織的な整備も3つ実行しました。まず1つ目は、「360度評価」です。上司が部下を評価するだけでなく、部下も上司を評価します。また、部下も上司を評価し、自分と同じレイヤーの人も評価をする方法に変更しました。客観的な評価が増えることにより、公平かつ公正な評価が実現しました。次に2つ目は、「希望職を含むキャリア意欲調査」です。多くの企業で行われている「仕事の満足度」調査に始まり、360度評価から見える、社員一人一人の「必要経験・研修」をカスタマイズ、「やりたい仕事(TOP3)」と「絶対にやりたくない仕事(TOP3)」を全社員に調査していました。これらを半年に1度調査することで、組織内での適材配置が可能になると述べました。そして3つ目は、「ジョブ型・成果主義」です。これらを実現するために、個人に与える数字的目標を、三つに分解しました。共通認識を持つために、目標の30%は会社全体の業績とします。60%は仕事で与えられる個人目標の達成率とします。残りの10%は、仕事のスキルを上げるための目標を個人で設定し、達成率を評価に入れるというものでした。英語力やパソコンスキル等、社員が自由に設定し取り組むものです。エンゲージメント向上に繋がる「People Day」とは外資系企業でよく行われている「People Day」とは、幹部が自分の部下を他の幹部に説明する場であると述べています。メイ氏は他の幹部に説明する内容は、以下3点だと述べました。一人一人の強み・弱み研修・異動・OJTなど、今必要な改善昇格・現状維持・異動などの3~5年後のキャリアメイ氏はこれらを他の幹部に説明することにより、大きな2つのメリットがあると述べています。1つ目は、一人一人の強み・弱みを説明することによって、第三者から全然違った意見が舞い込んでくるということです。2つ目は、社員一人一人について議論することで、議論されている当事者は「自分のことを考えてくれる組織である」と感じ、「会社に守られている」という認識が根付くようになる、と説明しました。そして、組織を活性化させるために忘れてはいけないことは、楽しむことである、と伝えました。仕事は人生の3分の1の時間を使うため、どうせなら楽しくやりたい。楽しく仕事をするために何ができるのかということを考え、ハロウィンの日には社長のメイ氏が自ら仮装をして出社していました。まさに「仕事を楽しむ」気持ちを表すための行動の一つです。任意制で始め、初年度は数人しか集まらなかったハロウィンの仮装も、毎年続けていった結果、翌年には数百人、3年目にはほとんどの社員が仮装をするようになりました。また、「仕事を楽しむ」取り組みはイベントだけに留まらず、投資家説明会にも顕著にその様子が現れていました。「おもちゃを売っているからこそ楽しくビジネスがしたい」と、投資家へのプレゼンはおもちゃで埋め尽くされた会議室で実施していました。プレゼン時間の半分はおもちゃの説明になったものの、この働きが功を奏し、印象が残りやすくなったと述べていました。最後にメイ氏は、人材育成のために皆さんにも実践して欲しいことと題し、次の2点を伝えました。1つ目は、「日本人は褒め下手なところがあるので、褒め上手になること」です。自身が経験し感じた心情から、褒めてあげることが大事であると伝えました。メイ氏は実際、タカラトミー社での出社時、毎日自分の席まで行くルートを変えており、話したことがない社員に声を掛けて具体的なエピソードをもとに褒める、ということを実施していました。2つ目は、「お礼が言えるようになること」です。新日本プロレスリング社では選手一人一人の誕生日に、その人に合ったプレゼントを渡し、バースデーカードも書いていました。選手のことを深く知り、感謝の気持ちを持っているからこそ、実現できたものであります。実際の参加者の声実際に実践できそうなお話がいっぱいあり、大変参考になりました。書籍を購入してみようと思います。貴重な機会をいただき、どうもありがとうございました。グローバル企業・日本企業の経営者としてのご経験談を基にした講話は、大変参考となりました。〜最後に〜back checkでは、組織や採用に関わるセミナーを定期的に実施しています。ぜひみなさんのご参加、お待ちしております。お申し込みはこちらから