2022年1月25日、「~データで学ぶ~コロナ影響による転職活動の変化」と題してセミナーを開催。Withコロナ時代の転職活動における、ポジティブな変化、副次的な効果による好機は何があるのか。株式会社人材研究所 曽和氏に、豊富な経験とアカデミックな知見をもとにご講演いただきました。新型コロナウイルスが「転職活動」に与えた変化について、景況感の悪化からネガティブなイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。近年、日本では雇用が安定しており、転職市場では売り手市場でしたが、新型コロナウイルスによって状況は一転し、求人数は減少しました。しかし調査結果を分析していくと、ポジティブな変化、副次的な効果による好機も新たに生まれています。今こそデータを元に、どのように変化したのか、変化していく中で人事/経営者として何をしていくべきか考察していくべきではないでしょうか。講演者プロフィール曽和 利光(そわとしみつ)氏株式会社人材研究所 代表取締役社長、元リクルート人事採用部ゼネラルマネージャー1971年、愛知県豊田市出身。灘高等学校を経て1990年に京都大学教育学部に入学、1995年に同学部教育心理学科を卒業。株式会社リクルートで人事採用部門を担当、最終的にはゼネラルマネージャーとして活動したのち、株式会社オープンハウス、ライフネット生命保険株式会社など多種の業界で人事を担当。「組織」や「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法が特徴とされる。2011年に株式会社 人材研究所を設立、代表取締役社長に就任。企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を越える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開する。オンライン面接独特のコミュニケーション特性がある新型コロナウイルスの影響により、転職活動をオンライン面接で行っている求職者が約半数という結果になり、オンライン面接が一般化している様子がback check調査レポートからわかりました。参考:コロナ禍における転職活動の実態を調査しかしながら、オンライン面接が一般化する中で、企業の人事は採用の難しさを強いられています。具体的には「感情が伝わりにくい」ということです。非言語情報(表情、ボディランゲージ、姿勢など)が減ることで、顕在的な情報が伝わっても、感情的な情報は伝わりにくいと言うことが分かっています。その他にも、発話速度と魅力を感じる度合いは比例関係にあるため「話す速度は速くても良い」、伝達量は高めるために「情報量は多めでもよい」、お互いの理解を擦り合わせ、伝達感を上げるために「理解を確認する作業が重要」ということが挙げられています。最終的に、転職活動で入社する会社を決める際には、感情が極めて重要な要素になります。感情が中々伝わりづらいということが、オンラインコミュニケーションの特徴です。以上を踏まえ、具体的に「転職活動で困ったこと、苦戦したことは何か」ということをデータではどのように変化しているのでしょうか。上位3つに絞ると、1位の「面接で上手く話せないこと」が15.94%、2位の「スキル以外の部分が伝えきれないこと」が14.86%、3位の「転職活動で改善すべき点が分からないこと」が14.58%という結果になりました。この結果を受け、自分自身について伝えきれていないと思ったまま入社してしまうと、どういった部分を評価して採用されたのだろうか、というような様々な邪念が出て、結果的に早期退職に繋がってしまうことも多いため、採用ミスマッチを防ぐためには企業側も対策を練る必要がああると考察しました。コロナの影響により採用ミスマッチが増大新型コロナウイルスの影響により、面接がオンライン化した影響で、採用ミスマッチが生まれています。では、具体的にどういった不安があるのでしょうか。以下のキャリタス就活2022の学生モニター調査より、オンライン中心の就活はミスマッチに繋がると思うかという調査結果から、学生が抱える不安度合いが読み取れます。参考:<確報版>22卒学生の6月1日時点の就職活動調査 ~キャリタス就活2022 学生モニター調査(2021年6月)オンライン採用がミスマッチに繋がっていると思うと答えた人の割合が約半数もいる実態が判明しました。新型コロナウイルスのように大きな社会的問題から企業の求人数減少し、一方で求職者の転職活動量は増加していることが、求職者の不安を増大させている背景としてあげられます。実際に以下のデータからは、2014年4月以降、転職希望者数が右肩上がりで増えているのに対し、2020年の新型コロナウイルス蔓延時期に求人数が減少していることがわかります。転職希望者数が増えているということから、求職者としては、「沢山面接を受けないと内定を貰えないのではないか」という焦りも発生していると、見受けられます。では、そのような状況になると候補者の転職活動はどのように変化するでしょうか。通常10社受ける予定が20社受ける予定に変わり、就職活動量が増加します。そして就職活動量が増加すると、従来より内定を貰う数も増加すると考えられますので、企業の内定辞退率も上がるという、ぬか喜び市場になってしまいます。この根拠の裏付けとしては、以下の就職みらい研究所 就職プロセス調査(2022年卒)よりデータが示しています。参考:就職プロセス調査(2022年卒)「2021年5月15日時点 内定状況」対面での面接選考社数はほぼ変わらなかった中で、22卒は21卒に比べて選考社数が増加、内定辞退率は21卒の27.5%から22卒の41.5%に増えています。この結果を受け、企業側の対策として「面接時間を短くしなければいけない」「書類選考で多くの方を落とさないといけない」「録画面接を行う」という面接対策を行ってしまうので、ミスマッチを引き起こす選考の荒さに繋がってしまいます。また選考が荒くなってしまうと、「オンライン面接によって社風が伝わりづらい」「志望度が低い候補者の増加」「内定辞退率が上がる」「早期退職に繋がってしまう」などのミスマッチが顕在化してしまうのです。これらが、新型コロナウイルスの影響によってオンライン面接がもたらした、採用ミスマッチなのです。Q&A形式のディスカッションタイム参加者から寄せられた問いに対して、曽和氏と山田氏でディスカッション形式で答える場では、採用のリアルな現場をありのままにご回答いただきました。人事にとってオンライン採用はポジティブなのでしょうか?曽和氏:「オンライン採用を辞めたら、人が応募しなくなりますよね。世間では既に一般化しており、首都圏の企業は全国区で募集しているため、スピード感持ってオンライン採用が加速しています。オンライン採用をしないという選択肢はないと思っています。」とオンライン採用の重要性について明かしました。応募者の温度感が分かりづらく困っています曽和氏:「温度差はそもそも志望度が低いことを仮定して行うしかないです。オンラインだと全ての選考プロセスを通じて意向度は上がりにくくなっています。特徴点でいうと言語化です。例えば職場の雰囲気を伝えるための方法などフォロートークを磨くことが全てです。入社動機、仕事の魅力、組織の魅力、不安に対するカウンタートークを書いてもらって共有してもらい、言葉をブラッシュアップして志望度を高めていくしかないです。」と、これまで2万人を越える就職希望者の面接を行った経験から、曽和氏が示しました。山田氏:「オンライン面接が主流になったことによって上位役職者から出ます。一次面接の段階では見極めはやらず、魅力を伝えることから始めています。選考プロセスに対して、会社の魅力を伝えることが上手い人からアサインして面接するようにしています。」と、ROXX社での独自の採用手法を明かしました。曽和氏:「語弊が生まれるかもしれないですが、上位役職者って口説くのは上手だが、見極めるのは下手だったりしますよね。」山田氏:「私も8年間やってきて痛感してます。」曽和氏:「面接では起こった事象に対し、反証の可能性を探ることが大事ですが、経営者の方は採用面接において、判断を即決する方が多い印象です。その点では、上位役職者を面接の初期段階で出すことは有効だと思います。」何次面接からオフライン面接に切り替えていくのが良いですか曽和氏:「全部オンライン面接を行っている企業は1~2割程度しかいなく、最終面接や一個前からオフラインに切り替える企業が多いです。動機付けの面からも、ジャッジの面からもリアルじゃないと分からない側面もあるので、完全にオンラインにするのは辞めた方が良いです。感情面がわからないので、非言語情報が減っているから精度が下がるみたいな問題点もある一方、構造化面接をやるとか、プレゼン形式にするとかで、キャッチボールによる面接にしなければオンラインでもある程度情報は取れます。」山田氏:「オフラインスタートで選考であると求職者数が減ってしまいますよね。」曽和氏:「優秀な人ほど引く手数多な訳で、いきなり自分の会社に志望度が高いなんてことはあり得ないので、オフラインスタートは辞めた方が良いですよね。」採用の失敗というのはいつ頃気づきますか? 曽和氏:「オンボーディングの失敗は3ヶ月以内にわかります。つまり、リアリティショックが起きています。1年経っても失敗という贅沢な人の使い方ができる企業はないです。失敗のように見えても、成功にさせるっていう観点も必要で、3年目とかの段階で期待値通りの成長ができているか、ミッションの話とか上司の話とかモニタリングする観点で気づきますよね。」山田氏:「我々もミスマッチを防ぐためのサービスを運営しているので、この話はよく人事さんとします。」曽和氏:「いつぐらいって言ってましたか?」山田氏:「採用という観点の人事と組織人事では考え方が違いますよね。入社後1年、採用という観点で見れる限界であり、モニタリングするタイミングとしては、3ヶ月と1年ですよねという結論にいき着いています。採用の失敗ってなんですかという議論をするのですが、期待値とのギャップや下回ってしまっている場合がミスマッチの定義になると思います。確かめ方は、3ヶ月後と1年後にアンケートを取るんですよね。あなたたちが選考した時の評価と今のパフォーマンスは思い通りか、違うのかはアンケートを取って定点観測すると、良い採用になっているのかは定量的に見えてきますよね。」曽和氏:「半年でフォロー研修するのは遅いですよね。」山田氏:「遅いですね。3ヶ月である程度、方向性が決まってきてしまうので。」なぜ今のマーケット変化でリファラル採用が注目されているのか曽和氏:「コロナがもたらした影響って、ミスマッチの可能性の増大なんですよね。一つの要因というのは、合格率が高い、コストが安いなどのメリットはあるが、前職で過ごした期間やその人のことを深く知っている人からのオファーであるので、ジャッジの精度が高いので期待値と入社後のギャップが少ないです。また、リファラル採用とリファレンスチェックって似ていますよね。既に済んでいる人の中から、母集団形成をして採用していく、色んなとこから後からリファレンスかけていくという感じで、前か後ですよね。」山田氏:「なんでリファラル採用が注目されてきたかの話を聞いて、だからこそ我々のサービスが注目されて来たんだなと腑に落ちました。オンラインでリファレンスチェックが取れるというのは人事さんも注目し出してきており、数名働いた方からの情報が貰えるというのはその人の本質が見えます。今まで過ごした期間には勝てないです。面接は良いところを言って最高点で評価するものじゃないですか。数年間働くと悪い時もあるので、良い悪いも踏まえて、この人はこうですよと評価するので、その時間には勝てないですね。」曽和氏:「違いがあるとすると、リファラル採用の方が良い場合もあるとは思いますが、社員とか内定者のネットワークから取るので、若干排他的なんですよね。色んなところから入ってきた人の評価ができると、同じ信憑性の高い情報が取れるのと、且つオープンでもある。上手く使い分けていくと良いのかなと感じました。」山田氏:「オンライン採用が良いか悪いかではなく、これに対応していくことが大事だと思いました。」曽和氏:「辞めようとしている企業も増えてきている。採用の面だけから言えば、思いとどまって欲しいなと思います。オンライン採用は辞めない方が良いですよね。」山田氏:「いかにこれを前提として、ミスマッチを減らしてプロセスややり方を工夫していくことに人事の腕が問われます。」曽和氏:「今の状況をベースとして、別の方法で動機付けや面接の精度を上げていかないと駄目なんですよね。」〜最後に〜人事や組織マネジメントに関する知見は社外に出てくることが多くありません。自社のやり方が正しいのか、次にどんな課題が出てくるのか分からず不安になっている人事担当者の方、経営者の方は多いのではないでしょうか。ROXXセミナーは、人事に関するあらゆる課題を紐解き、企業の皆様と学び合いながら、知見を共有し未来に繋ぐ場です。具体的には、登壇イベントやセミナー動画を主体に、先進企業の成功事例やゲストの方をお招きし、向き合った課題、その解決策、先進企業の事例など、皆様のお役に立てるコンテンツをご提供していきます。ご興味のある方は、ぜひご参加ください。お申し込みはこちらから(文:高野 悠、バナーデザイン:竹下 大樹)